アリス編――第3部――
「クソッ!」
「すぐに追いかけましょう」
「どうやって追いかけろというのだ!」
「私に、考えがあります」
ムーンフェイスを追いかけるどころか、童話世界と呼ばれる異世界に行く方法すら無く、苛立ちを隠せないパンドラに、アリスは決意を秘めた表情で言った。
「私と契約して下さい。パンドラさんが私の力を使えば童話世界を移動する事が出来ます」
「その童話世界とか童話主人公とやらは何だ?」
苛立ちを募らせながら、パンドラはアリスに詰め寄る。
「えと……童話世界っていうのは、元々本の中のお話だったモノを、神様が具現化して作り上げた魔法世界の事です。童話主人公はその中心的存在になります」
「ほう、その童話主人公は人間でない私とも契約出来るものなのか?」
「えっ?」
「私もゲッコーによって作られた、意思を持つ人型の魔法……人型生体魔法だ」
「そ、そうだったんですか……」
「出来ないならこの話は終わりだ。別の方法を探す」
「ああう、あっ、ええっと……パンドラさんの魔力をっ! その……少しだけ、お譲り頂ければとっ!」
「魔力だと? ……これでいいのか?」
そう言ってパンドラが右手から魔力そのものを抽出すると、それは満月と蝶の描かれた光る線の紋章となって浮かび上がった。
すると次の瞬間、アリスは、自らブロンドヘアの少女の横顔とトランプのスートが描かれたステンドグラス風の紋章へと姿を変える。
「! その姿は何だ?」
『これは【紋章形態】と呼ばれるもので、これが童話主人公と契約出来る状態なんです。その魔力を紋章に合わせて下さい』
パンドラが言われた通り、自分の魔力紋章を紋章形態のアリスに重ね合わせると、それはゴスロリ服に元々あった胸飾りの中に吸い込まれ、その直後、胸飾りは先のパンドラの紋章と同じ、満月と蝶があしらわれたブローチへと変化した。
「これは……」
『ブローチですね。多分童話主人公を受け入れやすいように変化したんだと思います』
「ともかくこれでムーンフェイスの所へいけるわけだ」
『はい。でも……』
「どうした?」
『さっき、ムーンフェイスは私以外の童話主人公が傀儡になったとも言ってました。傀儡って多分、操られてるって事だと思うんです』
「だろうな。それで?」
『操られてるって事はパンドラさんを妨害するために攻撃してくる筈です。このままじゃムーンフェイスを追う事が出来ません』
「ではどうすればいい?」
『こういうのはどうでしょう? 操られた童話主人公を一度戦えなくしてから、その人達も封印しちゃうんです!』
「成程、ムーンフェイスを追いながら戦力を増強するという訳か。悪くない案だ」
『戦えなくしてから封印すればきっとムーンフェイスの影響下からも解放される筈です。私は童話主人公の一人ですから、相手の童話主人公を懲らしめる事は出来ませんが、パンドラさんならきっと出来ます!』
「では早速君の力をお借りしたいんだが?」
「あっ、はい!」
パンドラのブローチから紋章形態のアリスが出現し、その直後に人間の姿へと変化する。
更にアリスはそこから、金色の淵飾りで装飾され、紅色に彩られた菱形の方位針の魔宝具へとその姿を変えた。
『これが世界間を移動する事が出来る、私の魔宝具形態の一つ【トラベラーズダイヤル】です。最初は私が発動させますね』
「あぁ」
『クルーズジャンプ!』
再びトラベラーズダイヤルの針が回転を始めながらパンドラへと迫り、そして何事もなく通過していく。
《アリス編――第4部へ続く――》