ヘンゼルとグレーテル【陰猫(改)ver.】
むかしむかし、ヘンゼルとグレーテルという兄妹がいました。
ヘンゼルはお父さんの仕事を手伝い、グレーテルはお母さんの家事を手伝いながらお互いに支え合いながら幸せな日々を送っていましたが、大規模な飢饉により口減らしをしなくてはなりませんでした。
お母さんは二人を連れ、森の中へと進みます。
我が子を捨てなくてはならない断腸の思いでお母さんは人気のない森の中を二人と一緒に歩いていきます。
そんな三人の前の寂れた教会がありました。お母さんはそこで神様に祈りました。
「神様。どうか、この子達が飢え死にせず、幸せに暮らせるように見守り下さい。願わくば、また四人で家族で幸せな日々が送れるようになる事を心より祈ります」
賢いヘンゼルはその言葉にお母さんも本当はこんな事をしたくないんだという思いを察し、まだそこまでの考えに至れない幼いグレーテルと共に去っていくお母さんを見送ります。
そんな三人のやり取りを遠巻きから見ていた年老いたシスターがヘンゼルとグレーテルを教会で保護しました。
質素な食事と神様へのお祈りの仕方などを教えながら、年老いたシスターは二人に農業や家事の仕方など様々な事を教えます。
時が経ち、年老いたシスターが亡くなった頃にはヘンゼルとグレーテルは立派な神父とシスターとして人々を支え、懺悔を聞き、自分たちのような子どもが出ぬように年老いたシスターに教わった事を人々に教えるのでした。
神父として立派に成長したヘンゼルは人々にこう言います。
「運命がどんなに理不尽であったとしても、いずれは凪が訪れ、平穏な日々が訪れるでしょう。
たとえ、飢饉によって肉親と離れなくてはならなくなったとしても、彼等を恨む理由にはなりません。時代が時代だったのですから私達は飢饉の最中にどう生きていくかを考えなさい。
救いとは誰かに手を差し伸べられる事だけではありません。自らの足で立ち、成長する事にこそ、本質があるのです。
飢饉による口減らしで苦悩する人々の救いとなるように私達はこれからも、お互いを支え合い、自らの足で運命を切り開かなくてはなりません」
自らの両親の事を思いながらヘンゼルは飢饉で苦しむ人々の声を聞き、両親のように子と別れる決断をせねばならなかった人々の罪を神父として聞き続けました。
グレーテルはシスターとして口減らしで捨てられる子ども達を引き取り、ヘンゼルの背中を見ながら精神的に成長するのでした。
この二人の物語には甘いお菓子の家も悪い魔法使いも必要ありません。
必要なのは現実を向く姿勢と如何にいまが苦しくてもいずれは平穏な日々が送られる事、そんな将来の為にも歩みを止めぬ事でした。
この神父になったヘンゼルとシスターになったグレーテルのお話は後の人々に心の支えとなって、いつまでも心に宿る物語として残るのでした。
【おしまい】




