生きててよかったと言えるまで
これは、ヒーローの話じゃない。
俺は特別強くもないし、優しくもない。
むしろ逃げた側だ。
重い言葉から。
責任から。
「好き」の意味から。
彼女は言った。
「私だけ見て」
その言葉は甘くて、怖くて、
鎖みたいだった。
俺は突き放した。
「重い」と言って。
それが正しいと思った。
間違ってないと思いたかった。
でも、彼女は本当に消えかけた。
あの夜、病院の白い廊下で俺は知った。
依存は愛じゃない。
でも、突き放すだけも正解じゃない。
支えるって何だろう。
好きって何だろう。
二人でいるって、どういうことだろう。
この物語は、
壊れかけた二人が
「一緒に沈む」でも
「どちらかが背負う」でもなく
並んで立てる距離を探す話だ。
きっと何度も失敗する。
波は来る。
不安も、衝動も、消えない。
それでも。
あの日、彼女が屋上から戻ったみたいに。
俺たちは何度でも、
生きるほうを選び直す。
これは、
重すぎた彼女と、弱すぎた俺が、
卒業までに“ちゃんと好きになる”までの物語だ。
どうか最後まで、
二人の不器用な再構築に付き合ってほしい。
四月。
新しいクラスの空気は、まだ他人の匂いがする。
俺――藤沢 颯は、窓際の一番後ろの席でぼんやり校庭を眺めていた。
満開の桜が風に散っている。春なんて、毎年同じだ。
「ねぇ、そこ、私の席」
不意に声がした。
振り向くと、そこにいたのは小柄な女子だった。黒髪のロングヘアが妙に艶っぽくて、目が大きい。けれど、笑っていない。まるで、何かをずっと疑っているみたいな目。
「あ、悪い」
俺は机を少し引いた。
彼女は無言で座る。
名前はすぐに分かった。出席番号順に呼ばれたからだ。
神崎 美月。
呼ばれたときの返事は小さかった。
けれど、教室が一瞬だけ静まったのを覚えている。
理由はわからない。けど、なぜか空気が変わった。
休み時間、彼女はずっとスマホを握っていた。
通知が鳴るたび、顔が強張る。
返信して、少し安心した顔になる。
数分後、また不安そうに画面を見る。
それを、俺は横目で見てしまう。
「彼氏いるんだろうな」
なんとなく、そう思った。
放課後。
俺は忘れ物に気づいて教室へ戻った。
誰もいないはずだった。
――はずだった。
「……なんで既読つかないの?」
震える声。
教室の隅で、神崎がスマホを握りしめていた。
「お願いだから返してよ……お願い……」
目に涙を溜めながら、何度も同じメッセージを打ち直している。
俺は、動けなかった。
見てはいけないものを見た気がした。
その瞬間、彼女がこちらを振り向いた。
目が合う。
数秒の沈黙。
「……見た?」
か細い声。
「いや、別に」
咄嗟に嘘をついた。
彼女は立ち上がり、ゆっくり俺の方へ歩いてくる。
距離が近い。
近すぎる。
「ねぇ」
彼女の瞳は潤んでいるのに、どこか冷たい。
「今の、誰にも言わないよね?」
「言わねぇよ」
「ほんと?」
「ほんと」
しばらく見つめられる。
そして、ふっと笑った。
「そっか。よかった」
その笑顔は、さっきまで泣いていた人のものじゃなかった。
帰り道、俺は妙に落ち着かなかった。
彼氏に既読無視されて泣いていた女子。
普通なら「面倒そう」で終わる話だ。
なのに。
頭から離れない。
次の日。
彼女は俺の机に肘をついて言った。
「ねぇ、藤沢くん」
昨日まで一言も話していないのに、名前を覚えられている。
「昨日のこと、ありがと」
「別に」
「ね、今日一緒に帰らない?」
心臓が跳ねた。
「彼氏は?」
思わず聞いてしまう。
彼女は一瞬、表情を固めてから、にこっと笑った。
「もういいの。あんな人」
その目は笑っていなかった。
――その日から。
俺の片想いは始まった。
たぶん。
間違った方向へ。
「ねぇ、今日も一緒に帰れる?」
放課後。
それはもう日課みたいになっていた。
神崎 美月は、俺の机に指先を引っかけるようにして聞いてくる。
その距離が、日に日に近い。
「部活ないの?」
「やめた」
「早くない?」
「だって、藤沢くんと帰れないじゃん」
軽い調子。
でも、目は本気だった。
俺は断れなかった。
――それが、始まりだった。
帰り道。夕焼けに染まる歩道橋。
「ねぇ、私さ」
突然、彼女が立ち止まる。
「昨日の夜、寝れなかった」
「なんで」
「既読つかないと不安になるの」
「……彼氏の?」
彼女は小さく首を振った。
「藤沢くんの」
心臓が一瞬止まる。
「え?」
「だって、昨日“おやすみ”送ったのに、既読ついたの2分後だった」
「風呂入ってただけだよ」
「……ほんとに?」
覗き込むように見上げてくる。
距離が近い。
「ほんと」
「嘘だったらどうしようって、ずっと考えてた」
笑ってる。
でも目の奥が揺れている。
「私、重い?」
不意打ちだった。
「別に」
「ほんと?」
「……別に嫌じゃない」
本音だった。
誰かにここまで求められるのは、悪い気分じゃない。
彼女はゆっくり俺の袖を掴んだ。
「よかった」
指が震えている。
その日から、メッセージの数が増えた。
おはよう
授業つまんない
今何してる?
誰と話してるの?
私のこと考えてる?
なんで返信遅いの?
最初は可愛いと思った。
でも、だんだんと。
昼休み、男子と話していると。
ブン、とスマホが震える。
『今、楽しそうだね』
振り向くと、教室の端で彼女がこっちを見ている。
笑っていない。
放課後。
「さっき誰と話してたの?」
「クラスのやつ」
「女の子じゃないよね?」
「違う」
「ほんと?」
まただ。
その“ほんと?”。
試されているみたいな目。
金曜の夜。
俺は友達とゲームをしていた。
スマホはサイレント。
気づいたのは、0時を回ってからだった。
通知 47件。
全部、神崎。
『ねぇ』
『なんで既読つかないの』
『嫌いになった?』
『ごめん』
『私なんかいらないよね』
『死んだらどうする?』
『ねぇ』
背筋が凍った。
慌てて電話をかける。
三コールで出た。
「……もしもし」
泣き声。
「ごめん、気づかなかっただけで」
「うそ」
「嘘じゃない」
「今誰といたの?」
「友達」
沈黙。
「私より?」
「比べるもんじゃないだろ」
その瞬間、通話の向こうで何かが落ちる音がした。
「美月?」
「……ねぇ」
声が、ひどく静かになる。
「私さ、藤沢くんいなくなったら、たぶん無理」
「……」
「だからさ」
小さく、笑う気配。
「私のこと、絶対捨てないでね?」
ぞくっとした。
甘いはずの言葉が、鎖みたいに重い。
「……捨てねぇよ」
そう言った瞬間。
「ほんと?ほんとに?約束だよ?嘘ついたら死ぬからね?」
一気にまくし立てる。
呼吸が荒い。
俺は、なぜか安心させなきゃと思った。
「約束」
その一言で、彼女は落ち着いた。
「よかった……好き」
通話が切れた後。
画面に残る“通話時間 1:38:52”。
俺は、気づき始めていた。
これは恋じゃない。
でも。
もう、抜けられない。
翌朝。
登校すると、彼女は俺の席で待っていた。
目の下にうっすらクマ。
でも、笑顔。
「おはよ」
俺の手を掴む。
ぎゅっと。
「昨日ね、藤沢くんの声聞いたら落ち着いた」
その握る力は、痛いくらい強い。
「ねぇ」
耳元で囁く。
「私、藤沢くんだけでいいから」
そして小さく続けた。
「藤沢くんも、私だけにしてね?」
逃げ道のない微笑みだった。
それは、ほんの些細なことだった。
昼休み。
俺はたまたま、クラスの女子――佐伯にノートを借りただけだった。
「藤沢、ここの数式違うよ」
「マジ?助かる」
それだけ。
本当に、それだけだった。
けど。
視線を感じた。
刺さるような、冷たい視線。
教室の後ろ。
神崎 美月が立っている。
笑っていない。
瞬きもしていない。
ただ、じっと見ている。
目が合った瞬間。
彼女はにこっと笑った。
――嫌な予感がした。
放課後。
「今日、一緒に帰れる?」
声はいつも通り。
でも、指先が震えている。
「帰れるけど」
「さっきの子、誰?」
直球だった。
「クラスのやつ。ノート借りただけ」
「へぇ」
笑っている。
でも、目の奥が真っ暗だ。
「楽しそうだったね」
「普通だろ」
「私と話すときより、楽しそうだった」
「そんなことねぇよ」
一歩、近づいてくる。
「私より可愛い?」
「は?」
「私より、必要?」
質問じゃない。尋問だ。
「違うって」
彼女の呼吸が荒くなる。
「……嘘」
「嘘じゃねぇ」
「だって笑ってたもん」
指先が俺の胸を掴む。
強い。
「私の前ではそんな顔しないのに」
その言葉に、少しだけ罪悪感が走る。
「美月、落ち着けって」
その瞬間。
彼女の表情が凍った。
「落ち着けってなに?」
低い声。
「私がおかしいみたいじゃん」
「そんなこと言ってない」
「言ってる」
目が潤む。
でも涙は落ちない。
「やっぱりあの子がいいんだ」
「違う!」
教室の外に人影が見え始める。
彼女は急に静かになった。
そして、微笑んだ。
「……わかった」
その笑顔が、一番怖かった。
夜。
メッセージが来ない。
いつもなら、何十件も来るのに。
既読もつかない。
嫌な予感が、胸を締め付ける。
電話をかける。
出ない。
もう一度。
出ない。
三回目で繋がった。
「……もしもし」
声が、かすれている。
「美月?大丈夫か?」
沈黙。
そして。
「ねぇ」
やけに穏やかな声。
「私、いらないよね」
「は?」
「だって今日わかったもん」
「何が」
「藤沢くん、あの子といる方が幸せそうだった」
「違うって言ってるだろ」
小さく、笑う。
「じゃあさ」
ガサ、という音。
「これ、やめたら信じてくれる?」
「何の音だ?」
沈黙。
そして、ぽつり。
「血って、思ったより赤いんだね」
心臓が止まった。
「は?」
「ちょっとだけだから」
「ちょっとって何だよ」
「だってさ」
息が震えている。
「私が傷つけば、藤沢くん私だけ見るでしょ?」
頭が真っ白になる。
「今どこだ」
「部屋」
「すぐ行く」
「来てくれるの?」
声が、急に子供みたいになる。
「行くから、何もすんな」
「ほんと?」
「ほんとだ!」
電話が切れた時同時に住所が送られてきた。
玄関を飛び出す。
心臓がうるさい。
夜の風が冷たい。
彼女の家の前に着くまでの数分が、異様に長い。
チャイムを連打する。
彼女が出てきた。
左手首に、赤い線。
深くはない。
でも、はっきりとした傷。
「……馬鹿かよ」
震える声が出た。
彼女は泣きながら笑った。
「来てくれた」
そして俺の胸に飛び込んでくる。
血の匂いがする。
「やっぱり、私がいなくなったら嫌でしょ?」
抱きつく腕が強い。
「だからね」
耳元で囁く。
「私だけ見て」
呼吸が乱れる。
「他の子と笑わないで」
「……」
「私以外、いらないって言って」
言えなかった。
言えば、全部終わる気がした。
でも。
言わなければ、彼女が壊れる。
「……美月」
俺が迷った、その一瞬。
彼女の目が、ゆっくりと歪む。
「……やっぱり、あの子なんだ」
その呟きは、氷みたいに冷たかった。
彼女の依存は、もう引き返せないところまで来ている。
そして俺も。
彼女を抱きしめたまま、気づいてしまった。
――突き放せない。
「私以外、いらないって言って」
美月の腕は、震えていた。
血の滲んだ手首が、俺の制服を掴んでいる。
でも。
俺は、その手をゆっくり外した。
「それは言えない」
空気が止まる。
彼女の瞳から、光が抜けた。
「……なんで?」
「それは違うだろ。重すぎる」
自分でも、声が冷たいのが分かった。
「俺はお前の全部を背負えない」
彼女の呼吸が乱れる。
「背負ってなんて言ってない」
「言ってるのと同じだ」
「違う!」
声が裏返る。
「私、藤沢くんがいないと無理なの!」
「それがもう重いんだよ」
言ってしまった。
取り消せない。
彼女の顔から、表情が消える。
完全な無表情。
そして、ぽつり。
「……あ、そっか」
小さく笑う。
「私、やっぱりいらないんだ」
「そういう意味じゃ」
「同じだよ」
一歩、下がる。
俺との距離ができる。
「藤沢くんにとって、私は“重い女”なんだよね」
何も言えない。
彼女は涙を拭かない。
ただ、じっと俺を見る。
「わかった」
その声は、妙に静かだった。
「もう迷惑かけない」
嫌な予感がした。
「美月」
「大丈夫」
にこっと笑う。
その笑顔が、一番危ないと、俺はもう知っている。
「ちゃんと、軽くなるから」
翌日。
彼女は学校に来なかった。
メッセージもない。
既読もつかない。
胸がざわつく。
昼休み、クラスの空気がざわめいた。
「神崎、屋上にいたらしい」
「なんかヤバいって先生が」
血の気が引く。
俺は立ち上がって走った。
屋上は立ち入り禁止のはずだ。
扉の前に先生がいる。
「藤沢!」
止められる。
でも隙を見て押し開けた。
冷たい風。
フェンスの向こう側。
美月が、立っている。
危険な位置。
でも、飛び降りる体勢ではない。
ただ、空を見ている。
「美月!」
彼女が振り向く。
風で髪が揺れる。
「……来ちゃったんだ」
穏やかな顔。
それが逆に怖い。
「降りろ」
「どうして?」
「危ないだろ」
「危なくないよ」
ふわりと笑う。
「だって、私いなくなっても困らないんでしょ?」
胸が締め付けられる。
「そんなこと言ってない」
「言ったよ」
静かに。
「重いって」
その一言が、刃みたいに刺さる。
「私さ、軽くなろうと思ったの」
フェンスを掴む指が白い。
「いなくなれば、重くないでしょ?」
足が震える。
「やめろ」
「安心して」
少しだけ首を傾ける。
「本当に飛ぶ気は、まだないから」
“まだ”。
その言葉が冷たい。
「でもね」
目が、まっすぐ俺を射抜く。
「藤沢くんがいらないって言ったら、そのときはわかんない」
先生たちがゆっくり近づく。
俺は一歩前に出る。
「いらないなんて言ってねぇ」
「じゃあ何?」
言葉に詰まる。
好きだ。
でも怖い。
重い。
逃げたい。
それでも。
「……俺は」
喉が渇く。
「お前に死んでほしくない」
彼女の瞳が揺れる。
「それだけ?」
「それだけじゃねぇ」
正直に言うしかない。
「でも、全部は無理だ」
風が強く吹く。
数秒の沈黙。
やがて彼女は、ゆっくりフェンスの内側に戻った。
先生が駆け寄る。
俺は、その場に崩れ落ちた。
彼女は俺を見て、ぽつりと呟く。
「……じゃあ、どうすればいいの?」
その問いは、誰にも答えられなかった。
依存は、拒めば壊れる。
受け入れれば、沈む。
俺はどちらも選べずにいる。
屋上の件は、思っていたより大きくなった。
翌日、朝のホームルームで担任が重い声で言った。
「神崎はしばらく登校停止になる」
教室がざわつく。
理由は詳しく説明されなかった。
でも噂は広がる。
「飛び降りようとしたらしい」
「男絡みだって」
「藤沢ってやつ関係あるんじゃね?」
視線が痛い。
俺は何も言わない。
言えるわけがない。
美月からの連絡は、三日後に来た。
『停学だって』
それだけ。
俺は少し迷ってから返信する。
『聞いた。大丈夫か』
既読がつく。
数分。
『大丈夫だよ』
すぐに続く。
『軽くなったでしょ?』
胸がざわつく。
『そんなことない』
既読。
返信は来ない。
それが逆に怖い。
学校に彼女がいないだけで、教室は驚くほど普通だった。
笑い声も、日常も、何も変わらない。
変わったのは俺だけだ。
隣の席が空いている。
机の上に何もない。
あんなに重かった存在が、急に“無”になる。
それが、妙に苦しい。
昼休み。
佐伯が話しかけてくる。
「藤沢、大丈夫?」
「何が」
「いろいろ」
曖昧な言い方。
でも分かっている。
「別に」
短く答える。
その瞬間、スマホが震える。
『今、誰と話してるの?』
血の気が引く。
教室を見回す。
当然、美月はいない。
『いないのに分かるわけないだろ』
送ってから後悔する。
すぐ既読。
『だよね』
『私いないもんね』
『安心した?』
指が止まる。
なんて返せばいい。
『安心とかじゃない』
数秒。
『私、いなくなったらどうなるか試しただけ』
背筋が冷える。
『試すな』
既読。
『だって怖いんだもん』
初めて、弱い言葉。
『藤沢くん、私がいない生活に慣れちゃいそうで』
言葉が出ない。
確かに、少しだけ。
教室は静かで、重さがない。
息がしやすい。
その事実が、罪悪感になる。
一週間後。
彼女はさらに不安定になっていた。
メッセージは少ない。
その代わり、深夜に長文が届く。
『ねぇ、私ちゃんと消える練習してるよ』
『誰にも迷惑かけない方法考えてる』
『今はまだやらないけど』
『藤沢くんが本当にいらなくなったら、そのときはちゃんとする』
心臓が縮む。
『やめろ』
『やらないって言ってるじゃん』
『まだ』
またその言葉。
まだ。
二週間目。
担任から呼び出された。
「神崎の件で、何か知ってるか?」
心臓が跳ねる。
「……少し」
「お前も距離を考えろ」
静かな忠告。
「彼女は今、不安定だ。刺激するな」
刺激。
俺の存在そのものが、刺激なんじゃないか。
三週間目。
突然、彼女から電話が来る。
「ねぇ」
声が妙に明るい。
「停学、もうすぐ終わるよ」
「……そうか」
「怖い?」
「何が」
「私が戻るの」
言葉に詰まる。
沈黙。
彼女が小さく笑う。
「大丈夫」
その声が、逆に怖い。
「今度はちゃんとするから」
「何を」
「迷惑かけない方法、分かったから」
背中が冷たくなる。
「どういう意味だ」
少しの沈黙。
そして、ささやくように。
「依存しない方法」
「……」
「期待しなければいいんだよね?」
その声は、諦めに近かった。
「好きとか、言わなければいい」
「美月」
「藤沢くんが怖い顔しない距離、覚えたから」
停学は、彼女を落ち着かせたわけじゃない。
“諦め方”を覚えさせただけかもしれない。
そして俺は気づく。
彼女が静かなときほど、危ない。
停学が明けた日。
神崎 美月は、何事もなかったように教室へ入ってきた。
ざわつく空気。
でも彼女は気にしない。
髪は整っている。
メイクも薄く、笑顔も自然。
まるで“普通”の女子高生。
俺の隣に座る。
「おはよ、藤沢くん」
穏やかな声。
以前の震えはない。
「……おはよ」
「心配かけてごめんね」
あっさりしている。
軽い。
軽すぎる。
その日から、彼女は変わった。
メッセージは激減。
「おはよう」と「おやすみ」だけ。
昼休みも、俺のところには来ない。
女子グループの中で静かに笑っている。
まるで、最初から依存なんてなかったみたいに。
俺の胸の奥がざわつく。
楽になるはずなのに。
苦しい。
放課後。
俺は思わず声をかけた。
「最近、静かだな」
彼女は首を傾げる。
「だめ?」
「いや」
「依存しないって決めたの」
さらっと言う。
「藤沢くんが重いって言ったから」
刺さる。
「……そういう意味じゃ」
「分かってるよ」
笑う。
でも、目が笑っていない。
「期待しないの。何も」
その言葉が、妙に冷たい。
数日後。
噂が広がった。
「神崎、最近なんかヤバくない?」
「屋上のあと、変だよな」
俺も感じていた。
彼女は“普通”を演じている。
完璧に。
でも時々、ふっと表情が消える。
誰もいない方向を見ている。
何かを考え込むように。
夜。
久しぶりに彼女から長文が届いた。
『ねぇ』
『私ね、ちゃんと軽くなれたよ』
嫌な予感。
『藤沢くんに期待しないし、縛らないし、死ぬとか言わない』
『だから安心してね』
安心できるはずなのに。
胸が締めつけられる。
『でもね』
指が止まる。
『私がいなくなっても、きっと藤沢くん平気なんだろうなって思ったら』
心臓が嫌な音を立てる。
『なんか、全部どうでもよくなった』
『怖くないんだ』
『前より』
背筋が冷える。
電話をかける。
出ない。
もう一度。
出ない。
三度目で繋がる。
「……もしもし」
静かすぎる声。
「今どこだ」
「家」
「何してる」
少しの沈黙。
「考えてる」
「何を」
「軽いまま消える方法」
血の気が引く。
「ふざけんな」
「ふざけてないよ」
本当に穏やかだ。
それが一番危ない。
「死ぬとか言わないって言っただろ」
「言ってないよ」
小さく笑う。
「消えるって言っただけ」
「同じだろ!」
沈黙。
そして。
「ねぇ、藤沢くん」
声がひどく遠い。
「私が本当にいなくなったら、ちょっとは後悔する?」
答えられない。
即答できない自分に、吐き気がする。
その沈黙が、答えになってしまう。
「……そっか」
彼女は納得したように言う。
「やっぱりね」
通話が切れる。
俺は走った。
夜の道を。
心臓が壊れそうなくらい鳴る。
彼女の家の前。
明かりはついている。
チャイムを押す。
反応がない。
何度も押す。
ようやくドアが開いた。
彼女は立っていた。
無傷。
でも。
部屋の中は散らかっている。
机の上に、書きかけのノート。
『私がいなくなったら』
その文字が見えた瞬間、頭が真っ白になる。
「……何してた」
「整理」
穏やかに言う。
「物とか、気持ちとか」
彼女は俺を見る。
その目は、涙も怒りもない。
空洞。
「ねぇ」
小さく微笑む。
「藤沢くんは、私がいなくても生きられるでしょ?」
何も言えない。
彼女は続ける。
「だから安心した」
一歩近づく。
「私、もう怖くないよ」
その言葉は、終わりの匂いがした。
俺は初めて、本気で思う。
突き放したのは正しかったのか?
それとも。
俺が彼女を、ここまで沈めたのか。
彼女は笑う。
「軽くなれたでしょ?」
その笑顔は、もう泣いてすらいなかった。
その夜、嫌な予感は消えなかった。
帰宅しても落ち着かない。
スマホを何度も見る。
既読はつかない。
送ったメッセージは未読のまま。
『ちゃんと話そう』
『逃げるな』
『俺が悪かった』
返事はない。
午前0時を過ぎたころ。
知らない番号から電話が来た。
「藤沢くん?」
女性の声。
聞き覚えがある。
――神崎の母親だ。
背筋が凍る。
「今、病院にいます」
頭が真っ白になる。
「え……?」
「倒れているのを見つけて」
それ以上、言葉が入ってこない。
病院の白い廊下。
消毒液の匂い。
自販機の光がやけに眩しい。
医師が低い声で言う。
「命に別状はありません」
その一言で、膝から力が抜けた。
「ただし」
続く言葉が重い。
「もう少し発見が遅れていたら危険でした」
手遅れの、一歩手前。
彼女は処置室の中にいる。
直接的な方法は分からない。
けれど、“本気だった”ことだけは分かる。
ふざけでも、試しでもない。
本気。
俺は壁にもたれて座り込む。
あのとき。
屋上で。
家の前で。
もっと違う言い方があったんじゃないか。
重いと言わなければ。
突き放さなければ。
俺が沈黙しなければ。
後悔が、胃をえぐる。
数時間後。
病室に通された。
ベッドの上の彼女は、ひどく小さく見えた。
酸素チューブ。
青白い顔。
でも、生きている。
その事実だけで、胸が締め付けられる。
彼女はゆっくり目を開けた。
俺を見る。
一瞬、驚いた顔。
そして。
泣いた。
声もなく。
ただ、涙だけが流れる。
俺は初めて、自分から手を握った。
「……ばか」
震える声で言う。
「ほんとに消えるやつがあるかよ」
彼女はかすれた声で言う。
「軽くなれたよ....」
酸素マスクをした彼女はとても苦しそうだった。
それを見て胸が苦しくなった。
「なれてねぇよ」
思わず強く握る。
「めちゃくちゃ重いわ」
涙が止まらない。
俺のほうが。
「俺が背負うって意味じゃない」
必死に言葉を探す。
「でも、勝手に消えるのは違うだろ」
彼女の指が、弱く握り返す。
「だって」
声が途切れる。
「藤沢くん、私いらないって顔してた」
胸が潰れそうになる。
俺は、ずっと逃げていた。
重さから。
責任から。
でも。
「いらないわけないだろ」
初めて、はっきり言う。
「好きだから困ってんだよ」
空気が止まる。
彼女の瞳が揺れる。
「好き、なの?」
「だから逃げたんだよ」
情けない告白。
「壊れそうで怖かった」
彼女は泣きながら笑う。
「もう壊れたよ」
「まだ生きてる」
即答する。
「壊れてねぇ」
沈黙。
病室の機械音だけが響く。
「ねぇ」
彼女が弱く言う。
「今度は、どうするの?」
依存に戻るのか。
突き放すのか。
同じことを繰り返すのか。
俺は深く息を吸う。
「二人で治す」
彼女が目を見開く。
「俺だけが背負うのも違うし、お前が全部抱えるのも違う」
「……」
「ちゃんと助け呼ぶ」
カウンセリングでも、親でも、先生でも。
恥でも何でもいい。
「俺らだけでやろうとしたから壊れた」
彼女の瞳から、また涙がこぼれる。
今度は、少し違う。
「それでも、好きでいてくれる?」
弱い問い。
「好きだから怒ってんだよ」
静かに言う。
彼女は、初めて“安心した顔”で眠った。
取り返しのつかないところまで行った。
でも。
まだ、生きている。
ここからは、甘くない。
簡単にも治らない。
依存は消えない。
俺も強くない。
けれど。
逃げないと決めた。
それが、救いの始まりになる。
退院は思ったより早かった。
けれど、「元通り」ではなかった。
神崎 美月は、しばらく通院とカウンセリングを受けることになった。
学校にも復帰はするけれど、様子を見ながら。
あの日、病室で決めた。
俺たちは――
「二人だけで抱えない」
それを、最初のルールにした。
復帰初日。
教室の空気は、やっぱり少し違う。
噂は消えない。
視線もある。
でも彼女は、以前の“無理に明るい顔”ではなかった。
静かで、少し緊張している。
それでも逃げない。
席に座ると、小さく俺に言った。
「おはよ」
前みたいに距離は近くない。
袖も掴まない。
ただ、目を見る。
俺も言う。
「おはよ」
それだけ。
それだけなのに、胸が熱い。
昼休み。
俺は佐伯と話していた。
わざとじゃない。
自然な流れ。
ふと視線を感じる。
美月が見ている。
でも、以前みたいな鋭さはない。
代わりに、迷っている顔。
俺は会話を終わらせ、彼女のところへ行った。
「さっきの、ただのノートの話な」
先に言う。
彼女は少し驚いた顔をする。
「……うん」
「不安なら言え」
沈黙。
そして小さく。
「ちょっとだけ、不安だった」
正直な声。
俺はうなずく。
「そっか」
否定しない。
怒らない。
それが前と違う。
彼女は続ける。
「でも、前みたいに爆発しないようにする」
「爆発しそうなら?」
「言う」
その約束は、不器用だけど前進だった。
放課後。
カウンセリングの日。
彼女は緊張していた。
「怖い?」
「ちょっと」
「俺、外で待ってる」
彼女は少し笑う。
「一緒に入らなくていいの?」
前なら言っていたかもしれない。
“そばにいて”って。
でも今日は違う。
「今日は、自分で行く」
その一言に、俺は胸が詰まる。
強くなろうとしている。
俺に依存しない形で。
帰り道。
夕焼けの歩道橋。
あの日と同じ場所。
彼女が言う。
「ねぇ」
「ん?」
「まだ、たまに消えたくなる」
正直だ。
「でも、前みたいに“今すぐ”じゃない」
「波みたいな感じ」
「……そっか」
俺は少し考えてから言う。
「俺も怖い」
彼女が目を丸くする。
「また繰り返すんじゃないかって」
初めて言った本音。
彼女は少し黙ってから言う。
「一緒に怖がろ」
その言葉は、依存じゃなかった。
共有だった。
夜。
メッセージは減ったまま。
でも内容が変わった。
『今日ちょっと不安だった』
『でも大丈夫だった』
『えらい?』
俺は返す。
『えらい』
『俺も少し嫉妬した』
既読。
『嫉妬するの?』
『する』
少し間があって。
『なんか安心した』
それは、前とは違う安心。
縛る安心じゃない。
繋がっている安心。
数週間後。
彼女はまだ不安定な日がある。
涙が急に出る日もある。
俺も疲れる日がある。
でも。
屋上には行かない。
夜中に消えようとしない。
代わりに言う。
「今日ちょっと危ない」
その一言が出るたびに、俺は思う。
あの日、手遅れにならなくてよかった。
完全には治らないかもしれない。
依存の名残は消えないかもしれない。
でも。
今の彼女は、俺にしがみついていない。
俺も、逃げていない。
それだけで、十分前進だ。
夕焼けの中、彼女が言う。
「ねぇ、藤沢くん」
「ん?」
「私、まだ好き」
まっすぐな目。
重さはない。
ただの気持ち。
俺は少し笑う。
「俺も」
彼女は、泣きそうに笑った。
今度の涙は、壊れる前の涙じゃない。
ちゃんと、生きている涙だった。
秋。
文化祭の準備で教室は騒がしかった。
美月は実行委員に立候補していた。
あの美月が、だ。
「人と関わる練習」と言っていた。
俺は少し誇らしくて、少し怖かった。
忙しくなると、心は揺れる。
案の定、三日目の夜。
『ちょっときつい』
珍しく短いメッセージ。
電話をかけると、呼吸が浅い。
「みんな普通に楽しそうなのに、私だけ浮いてる気がする」
再発の前兆。
以前なら――
“私いらないよね”
“消えたい”
そうなっていた。
俺は慎重に言葉を選ぶ。
「今日ちゃんと休んだ?」
「休んでない」
「じゃあまず寝ろ」
「冷たい」
「違う」
深呼吸する。
「今の不安は、本物じゃない可能性ある」
沈黙。
「波だろ?」
数秒。
彼女の呼吸が少し落ち着く。
「……波、かも」
「消えたい衝動は?」
「今はない」
今は。
それでいい。
「明日カウンセラーに言え」
「うん」
切る前に、彼女が言った。
「ねぇ」
「ん?」
「前みたいに“私だけ見て”って言いそうになった」
正直な告白。
「でも止めた」
それが、進歩だった。
――再発は、“衝動が消えること”じゃない。
“止められること”なんだと、俺はそのとき知った。
文化祭当日。
彼女は緊張していたが、最後までやりきった。
終わった後、屋上に二人で上がる。
あの日とは違う景色。
「ここ、怖くない?」
俺が聞く。
少し考えてから。
「ちょっとだけ」
正直だ。
でも、フェンスから離れた場所に座る。
自分で距離を取っている。
それが答えだった。
「前より、生きてる感じする」
そう言って笑った。
俺はようやく、胸の奥の緊張が少し解けた。
――でも。
本当の山は、冬に来る。
冬。
受験の話が増える。
進路。
将来。
現実。
俺は焦り始めていた。
彼女のことで気を張り続けた反動。
自分の不安が、急に押し寄せた。
成績が落ちる。
家でもイライラする。
ある夜、彼女にきつく言ってしまった。
「毎回俺が支えられるわけじゃない」
沈黙。
前なら、彼女が崩れていた。
でも。
「そっか」
静かに言う。
「じゃあ、今日は私が聞く?」
その言葉に、俺のほうが崩れた。
初めて、俺が泣いた。
「怖いんだよ」
受験も、将来も、また繰り返すんじゃないかも。
全部。
彼女は言う。
「今度は一人で抱えないって決めたでしょ」
あの日、病室で決めたこと。
それを守ったのは、彼女だった。
依存だった関係は、少しずつ“支え合い”に形を変えていた。
――再発は、俺のほうだったのかもしれない。
でも、乗り越えた。
二人で。
受験も終わり、卒業シーズン入る。
三月。
桜はまだ咲いていない。
体育館の卒業式。
名前を呼ばれる。
壇上から見る景色。
一年の頃とは別世界みたいだ。
式が終わり、校舎裏。
彼女が立っている。
あの春、最初に話した場所。
「終わったね」
「終わったな」
沈黙。
でも、重くない。
「私、まだ不安になるよ」
彼女は言う。
「でも、死のうとは思わなくなった」
それがどれだけ大きいことか。
俺は知っている。
「俺も、逃げなくなった」
彼女が笑う。
昔みたいな鎖の笑顔じゃない。
自由な笑顔。
「ねぇ」
「ん?」
「高校の私は、かなり重かったよね」
「うん」
即答。
彼女が吹き出す。
「ひどい」
「でも今は違う」
ちゃんと言う。
「今は、隣にいる感じ」
依存じゃない。
共倒れでもない。
並んで立っている。
彼女は小さくうなずく。
「生きててよかった?」
俺が聞く。
少し考えて。
「うん」
そして続ける。
「藤沢くんも?」
俺は空を見上げる。
あの夜を思い出す。
病院の廊下。
屋上の風。
未読のメッセージ。
全部。
「……うん」
心から言えた。
春の風が吹く。
彼女は俺の手を握る。
強くない。
痛くない。
ただ、温かい。
「これからも、波は来るよ」
彼女が言う。
「来たら?」
「一緒に数える」
それだけでいい。
俺たちは、壊れかけた。
取り返しがつかない一歩手前まで行った。
でも戻った。
完璧じゃないまま。
未熟なまま。
それでも、生きるほうを選んだ。
卒業証書を抱えながら。
彼女は笑う。
「ねぇ、次は大学編?」
俺は少し笑う。
「また重くなったら書くか」
彼女が肩を軽くぶつけてくる。
その重さは、もう怖くなかった。
――完。
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これはもし、あのまま病院に搬送される前に会いに行かなかった、
場合のお話(見たい方だけ)
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あの日、俺は間違えた。
彼女が言った。
「軽くなれたよ」
その笑顔を、俺は“落ち着いた”と勘違いした。
本当は違った。
あれは、決めた人間の顔だった。
冬の夜。
メッセージは来なかった。
既読もつかなかった。
でも俺は、こう思ってしまった。
――少し放っておこう。
それが最後の選択だった。
翌朝、学校は異様に静かだった。
担任の声が震えている。
「神崎が……昨夜、亡くなった」
音が消えた。
意味が、理解できない。
ざわめきが遠い。
誰かが泣いている。
俺は何も感じなかった。
理解が追いつかなかった。
詳細は知らない。
知ろうともできなかった。
ただ、“止められなかった”事実だけが残る。
彼女の席は空いた。
机も、椅子も、数日後には片付けられた。
最初からいなかったみたいに。
でも。
俺のスマホには、最後のメッセージが残っている。
『ありがとね』
それだけ。
送信時刻は、夜中の1時12分。
俺が、返信しなかった時間。
葬儀。
白い花。
彼女の母親が、深く頭を下げた。
「ありがとうね、仲良くしてくれて」
その言葉が刃になる。
俺は何もしていない。
守れなかった。
気づけなかった。
最後の夜。
あの違和感。
あの静けさ。
全部、見逃した。
春。
卒業式。
壇上に立つ。
体育館の景色。
一年前、隣にいたはずの席は空白。
俺は名前を呼ばれる。
拍手が鳴る。
でも、耳に入らない。
外に出ると、風が吹く。
あの日、屋上で彼女が立っていた風と同じ。
俺は思い出す。
彼女は何度も、何度も言っていた。
「いなくなったら、後悔する?」
答えられなかった。
今なら言える。
後悔しかない。
もし、あのとき。
もっと早く抱きしめていれば。
もっと真剣に向き合っていれば。
でも、“もし”は何も変えない。
彼女は戻らない。
数年後。
俺は大学生になった。
普通に笑い、普通に生活している。
でも夜になると、思い出す。
通知音が鳴るたび、一瞬心臓が跳ねる。
既読がつかない時間が怖い。
あの日の感覚が消えない。
彼女は、俺の人生から消えた。
でも。
影は残った。
依存は、重さは、壊れ方は。
全部、俺の中に刻まれた。
*
最後に、彼女が欲しかったものは何だったのか。
「私だけ見て」でも
「一緒に死んで」でもなく
きっと。
「怖いって言ってほしかった」だけだったのかもしれない。
俺が怖がっていると知れたら。
自分だけじゃないと知れたら。
未来は、少し違ったかもしれない。
でももう遅い。
桜が散る。
春は来る。
世界は続く。
彼女がいなくても。
それが一番、残酷だった。
――終。
見ていただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします!!




