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「……それにしても、本当にいいものができましたわね。
これが流通したら、世の女性たちはどれほど助かることでしょう。」
クリームを塗り終えたフィナさんが、指先をそっと触れ合わせながら満足げに微笑む。
普段の凛とした雰囲気よりもずいぶん柔らかい。
「ねぇ、ユリちゃん。このクリームって……量産できると思う?」
容器を覗き込みながら、シュナさんが期待に満ちた声で問いかけてくる。
瞳がキラキラしていて、まるで宝物でも見つけた子どものようだった。
「えっと……作る作業自体は、それほど難しくないと思います。
ただ、蜜蝋の量が多めなので……そこが課題になるかもしれませんが、準備は難しそうですか?」
「大量となるとね、蜂の素材は貴重だから……」
残念そうに肩を落としつつも、その眼差しはどこか前向きだ。
「それに、もし本格的に流通させるなら……
ほかの植物油も試して、もっと最適な配合を探さないといけないと思いますよ」
「配合を変えて試す……つまり……試行錯誤ですね」
シュナさんのスイッチがカチッと入った感じがした。
彼女は机の上に並ぶ瓶を勢いよく見回し、
「よーし! じゃあ今日のうちに、できるだけいろんな配合を試してみましょう!」
「えっ!? 今日のうちに……ですか?」
声が裏返る私をよそに、彼女はすでに次の実験準備を始めている。
「もちろんよ! 植物油の種類を変えたら、伸び具合や仕上がりがどう変わるのか……考えただけでワクワクするわ!」
その勢いは、完全に研究モードに突入していた。
フィナさんが、はぁ……と肩を落とした。
「シュナさん、気持ちはわかりますけれど……
あまり詰め込みすぎると、本当に日が暮れてしまいますわよ?」
「いいの、今日はすっごく頭が冴えてるんだから!」
(ああ……もうこれ止められないやつだ……)
私たちは顔を見合わせて、くすりと笑った。
窓から差し込む午後の陽光は少し傾き始めている。
「じゃあ、試してみたい配合を紙に書き出していきませんか?」
「書き出す前に、まず手を動かすのよ!」
フィナさんが控えめにため息をつきながらも、ちゃんと器具を並べるお手伝いをしている。
なんだかんだ言って、一番手際がいい。
こうして――
私たちは小さな研究会のように、次々とアイデアを出し始めた。
・違う植物油を使うとどうなるのか?
・香りを加えるなら、どの香料が相性がいい?
・肌に効くといわれる薬草を入れたらどうなる?
・工程に魔法使えば、もっと品質の良いものができるのではないか?
話すたびに、次から次へと可能性が広がっていく。
(……なんだろう、この感じ)
向こうの世界でも、こうして仲間と何かを作ることはあった。
けれど、ここで感じるワクワクは、どこか違った。
それはきっと——
この世界にまだ存在しないものを、生み出そうとしているからかな。。
この研究室の空気は、期待と未来で満たされていたと思う。
「じゃあ、次の配合いきますよ!」
シュナさんの声に、自然と頬がほころぶ。
こうして、夜にまでの私たちの実験は続いていたのだった。




