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「では早速、使ってみましょう!」
シュナさんが、できたての保湿クリームの容器を両手で抱えるように持ち上げる。
淡い金色の容器の表面は、光を受けて柔らかく輝いている。
(ほんとうに……向こうの世界で使っていたものに近い仕上がりになってるといいけれど。)
胸の奥でそっと緊張が走る。
シュナさんは、ためらいなく指先にクリームを取ると、自分の左手の甲にそっとのばした。
「……わぁ。なんだか、ねっとりしてるのね。初めての感覚だわ」
クリームがゆっくりと肌になじんでいくのが見える。
「……不思議ね。肌が綺麗に見えるんだけど。ほら見て、塗ったほうと塗ってないほう!」
差し出された手を見ると、確かに違いがわかる。
塗った側の皮膚は、荒れていた肌はあまり目立たなく、綺麗に見える。
「……ほんとうですね。赤みも少し落ち着いているように見えますね。」
フィナさんが感嘆したように息をもらす。
彼女の瞳は、興味津々に見える。
「フィナさんも、よかったら使ってみてください」
そう促すと、彼女はほんの少しだけ頬を染めて、小さくうなずいた。
指先で控えめにクリームを取ると、手の甲にそっと伸ばす。
「……あら。思ったより軽い感じですね。」
そして、少しうれしそうに目を細めて続けた。
「すべりもよくて……塗っていると、手がほぐれていくような感覚があります」
(フィナさんがこんな表情をするの、初めて見たかもしれない……)
私も、自分の手に少し取って伸ばしてみる。
とろりとした感触がなじむ。
(……この感じ。ほんとうに、向こうで使っていた保湿クリームと同じだ)
懐かしさと安堵が混じる、いつもの“あの感触”。
成功した——そう確信できた瞬間だった。
「香りもいいですね……」
フィナさんが手を鼻先に寄せる。
「甘いのに、くどくなくて。落ち着く香りです」
「蜂蜜の香りがするんだけど、草の香りもして……なんだか癒やされる~!」
シュナさんがうっとりしながら、両手にたっぷり伸ばしている。
香りについては、植物油と蜜蝋の自然な匂いが漂っていて、思った以上に心地よかった。
「これでしたら、香料を足さなくてもよかったですね」
私が言うと、ふたりが同時にうなずく。
「むしろ、このように自然な香りのほうが、私は好きですね」
とフィナさん。
「……保湿って、こういう感じなのね。
肌が守られてるっていうか……うん、たしかに“閉じ込める”って言葉がぴったりだわ」
シュナさんが突然、
「それならね……魔法でも、似たことができるわね」
「魔法で……ですか?」
「ええ。水魔法の応用で、“薄い水膜”を肌にまとうイメージね。
ただ……ずっと維持するとなると魔力効率が少し悪いわね」
そういうものなのね。
「でも、今日ので考えが広がったわ。
このクリームのように物質で補う保湿があるなんて……本当に面白いわ!」
シュナさんの目が、研究者のそれに輝いていた。
(この人、本当に好きなんだな…)と感心する私だった。




