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4-2 

三人で、紅茶とケーキをおいしくいただく。

こちらの世界では、紅茶がとにかくおいしいのだ。

コーヒー派の私。最初の頃は「コーヒーが飲みたい……」と恋しく思っていたけれど、今ではすっかり紅茶派に乗り換えてしまったくらいだ。


香りがまず違う。湯気の奥にふわっと花のような甘い香りが広がって、飲む前から幸せな気分になれる。

そして一口含めば、渋みはなくも優しい甘味が先に来る。

疲れた心を包み込むような、そんな味だった。


そして、この紅茶に引けを取らないのが、目の前のケーキ。

しっとりとしたスポンジに、ふんわりとした生クリーム。

上のる果実が宝石のように輝いている。


「このケーキ、気に入っていただけたかしら?」

シュナさんが嬉しそうに問いかけてきた。


「はい、とってもおいしいです」

自然と頬がゆるむ。

(このクリーム、口に入れた瞬間に溶ける……。フルーツの酸味とのバランスも完璧!)

日本で食べていたケーキとは少し違う。甘さが控えめで、素材の香りが際立っている。

小麦も砂糖も、きっとこの世界のものなんだろうけど——

なぜだろう、懐かしい味がした。



「よかったわ! これ、王都の人気店のでね。ここのパティシエの腕がとにかくいいのよ!

 極秘情報なんだけど、ここの果実は熟成を魔法を使うのよ」


「魔法で?」


「ええ。詳しくは知らないんだけど、魔法で熟成させ、果物の糖度を上げてるってウワサ」

フィナさんが補足するように微笑んだ。


(食べ物の仕込みにも魔法を使うんだ……!)

この世界では、魔法が生活の隅々まで浸透しているらしい。

私は“治癒魔法”で頭がいっぱいだったけど、

こういう日常的な使い方もあるんだと思うと、なんだか不思議な気持ちになる。




女子会も楽しく進んでいく中、

お城にはオレムと一緒に来たはずなのに、一向に姿が見えない。

昨日のように、殿下たちもいない。


(でも今日は、なぜ女子だけなんだろう……?)


「ほかの方々はどうされたんですか?」


問いかけると、シュナさんが紅茶を飲みながら答えた。


「今日、殿下たちは魔物狩りよ」


「……魔物狩り?」


思わず聞き返してしまう。


魔物。

まるでゲームやファンタジー小説の中の存在みたいな響きだ。

(いや、でもこの世界、魔法がある時点で十分ファンタジーなんだけど……!)

でも、実際に“魔物”が存在するってどういうこと?

本当に人間の敵として現れるの?

それとも、野生動物みたいなもの?


「この季節は、森に魔物が出ます。繁殖期に入るためか、山の奥から出てくる個体が多くて……。

 村を襲うような危険な魔物も混じっています。

 そのため、殿下や騎士たちは毎年この時期に討伐に向かわれるのです。」

フィナさんが、丁寧に説明をしてくれた。



討伐、それって戦いになるよね——なら、けが人も出るよね。


(皆、……無事に戻ってこられたらいいんだけど。)



そんな私の心配をよそに、シュナさんは肩をすくめて笑った。

「まあ、あの人たちのことだから大丈夫よ。殿下もオレムも、戦場に出れば無敵ですもの」


「そうはおっしゃっていますが、シュナさんは魔物討伐が始まるまで、大変だったのではありませんか?」

フィナさんが少し呆れたように言う。


「え? シュナさんも関わってたんですか?」


「ええ、準備にね」

シュナさんは照れたように笑って、紅茶のカップを軽く回した。

「私にとっては趣味みたいなものだから、大変ってほどでもないわ」


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