3-12
「ユリアス、君には後日、正式に“魔力測定”を受けてもらいたい。
魔力量や魔法特性を正確に把握する必要があるな。」
「……はい。」
返事をしながらも、胸の奥でざわめく不安を押さえきれなかった。
(魔力測定……前にオレムとやった、あの魔法具を使うやつだよね?)
心の準備が追いつかずに黙っていると、シュナが静かに笑いながら私の肩に手を置いた。
「大丈夫、私も同席しますから」
その一言に、緊張でこわばっていた胸の奥が少しだけ緩む。
その瞬間、アストラッド殿下が椅子からゆっくりと立ち上がった。
その立ち上がっただけで、部屋の空気がぴんと張り詰める。
「本日のところは、これで終わりにしよう。」
静かな声が響く。殿下がこちらへと歩み寄るたび、彼の纏う空気が濃くなる。
紫の瞳がわずかに細められ、低く響く声が耳を打った。
思わず一歩引きそうになるのを、必死にこらえる。
——息を呑むほどの存在感。
「じゃ、明日からここに来てもらうよ。」
……へ?
そんな中、オレムの一言が、あまりにさらりと放たれたせいで、頭の理解が追いつかない。
(ちょっと待って、“ここに来る”って……つまり、殿下のもとに通うってこと!?)
うっすらと背中を汗が伝う。
これ、もしかして——まさかの“採用面接”だったってこと?
完全に予想外の展開に、思考が一瞬でフリーズした。
「大丈夫だよ。悪いようにはしないから。」
オレムが柔らかな声で言う。……いや、微笑まれても!
「私もいますので、仲良くやりましょうね。」
今度はシュナが花のように微笑んだ。
親しみやすいのは嬉しいけど……そういう問題じゃない。
来る意味も、何をするのかも聞いてないんですけど!?
そんな混乱の中、穏やかな声が割って入った。
「この方々は、自分たちが納得したら、周りの事情とか関係なく進めていくところがございますからね。
私たちも困る時があるのですよ。」
軽い冗談めかして言ったのは、フィナだった。
その言葉に、ダリアンも頷く。
「なので、分からないことや不安なことがあれば、遠慮なく言ってくださいませ。」
「……はい。」
常識のある人がいることで、少しだけ心が軽くなる。




