3-7
私は、張り詰めた空気に耐えきれず、ついオレムに問いかけた。
「……話したって、どこまで話したんですか?」
これは、私にとってかなり重要な質問だった。
私の“魔法”のことなのか、
それとも——“転生してきた”という事実なのか。
数日前に、オレムから「この世界で生きていくために、自身の持つ知識の取り扱いには注意した方がいいな」と言われていたばかりだ。
だから、軽々しく秘密を明かすことが危険なのかわかっているつもりだ。
慎重に、慎重に生きようとしていたのに——
「全部話したよ」
まるで「今日もいい天気だね」とでも言うかのような軽い口調。
(……うそでしょ!?そんな簡単でいいの?)
心の中で絶叫したが、オレムはそんな私に気にせず、お構いなしに続けた。
「君の魔法の特性のことも。記憶がないこと、そして元いた世界のこと、すべて話してある。だから、安心していい。」
(いや、“安心”の使い方おかしくない!?)
ここまで堂々と秘密をバラされるとは思ってもみなかった。
けれど、それだけここにいるのは“信頼できる相手”だと彼が判断したということなのだろう。
(……そういうことなら、この人たちは敵じゃない。信じても大丈夫、なんだよね)
にしても、オレムと彼らってどんな関係なんだろう?
この部屋に入った時からずっと緊張していたけど、ようやく少しだけ胸の奥の緊張が緩んだ。
だがその直後、オレムの一言で再び空気が引き締まった。
「で、今回の目的だけど——前に俺にしてくれたことをここでやってほしいんだ。」
(前にしたこと……って?)
思い当たるのは、ただ一つ。
あの夜、初めて“治癒魔法”を発動させたことだ。
「シュナ」
呼ばれた彼女は、静かに左腕の袖をまくり上げた。
そこには、一部の皮膚が、周囲より赤くなっており、水疱が見られる。
(少し痛々しい………皮膚炎かな?)
「実は、昨日実験をしていて、やけどしてしまったんだよねぇ」
実験って、どんなことしてたんだろう。。
やけど……ね。
日本での治療なら、患部を冷やして、薬を塗ったりするのが一般的なんだけどね。
この世界では、どんな治療しているんだろう?と疑問になっていたら、
「治せるか?」
っと、オレムの声が響き、静まり返った室内に落ちた。
やけどに関しては理解しているから、治せるとは思うけど……いざと思うとやっぱり緊張するね。
周囲を見渡すと、全員の視線がこちらに向けられていた。
アストラッド殿下も、ダリアンも、シュナも——
誰一人、瞬きを忘れたように私を見ている。
(うわ、完全に注目の的じゃん……!)
私は小さく深呼吸をして、
「……わかりました。」
自分の声がわずかに震えているのが分かった。




