3-6
それにしても、ここにいる“私の目的”って何なんだろう。
この感じだと、どうも彼らは私のことを——前から知っているよね?
疑問が頭をもたげたその瞬間、オレムが何気ない口調で爆弾を投げた。
「こいつらは知ってるよ」
「えっ?」
思わず声が裏返る。オレムは気にも留めず続けた。
「ユリアスと初めて会ったわけじゃないんだ。君と会うのは初めてだけどね。ちなみに、ユリアスが今置かれている状況についても説明してある。」
……えぇぇぇぇぇ!?
心の中で、叫びが木霊した。
(ていうか、“説明してある”って何を!? どこまで話したの!?)
脳内が一瞬で混線する。現実感がどんどん遠のいていく。
オレム、そういう大事なことは先に言ってよ!
だったら、心の準備もできたし、ここに入るときにあんなに緊張して変な汗かかなかったのに!
もちろん、そんな文句を口に出せるはずもなく。
私は必死に笑顔を保ちながら、気持ちを落ち着かせるためにお茶をひと口飲む。
(ていうか私、完全に“情報弱者”じゃない?
みんなグルで私だけ何も知らないって、軽くホラーなんだけど!)
そんな風に頭の中でぐるぐるしていると、不意にシュナと目が合った。
彼女は柔らかく微笑み、まるで「大丈夫だよ」と言いたげに、穏やかな視線を向けてくる。
けれど——この部屋の主。
アストラッド殿下の瞳はまるで別物だった。
紫の双眸が、真っ直ぐに私を見つめている。
(……見られてる)
彼を意識すると、鼓動の音が自分の中でやけに大きく響く。
少し怖い——だから余計に目を合わすことができない。
自己紹介後、誰も口を開かない。
ただ、空気だけが張り詰めている。
それはまるで——次に告げられる“何か”を待つような、静かな前触れのようだった。




