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3-1

数日が、静かに過ぎていった。


その間、オレムは朝早くから出かけ、昼夜を問わず忙しそうにしていた。

今まで、ほとんど付きっきりで面倒を見てもらっていた分、忙しそうにしていると、申し訳ない気持ちになる。




一方の私はというと、毎日を“貴族としての礼儀作法”の習得に費やしていた。

ナプキンの扱い方、椅子の座り方、歩くときの姿勢、扉の開け閉め、会釈の角度、そして笑うときの口元——

そのすべてが、優雅で、品位をもって、美しくあらねばならない。


日本にいた頃の感覚では到底考えられないんだよね。

「礼儀」という言葉の重さが、ここでは“生き方”そのものなのだ、疲れる。。。



ルーシャをはじめとしたメイドたちは丁寧ではあるが、妥協を一切許さない。

「お嬢様、それでは下膨れに見えます」

「微笑む際は、歯を見せずに」

「足先は揃え、少し斜めに。そう、その角度を保って」



毎日が、緊張の連続だった。

何度も同じ動きを繰り返し、少しの油断でやり直し。

背筋を伸ばし続けるうちに、肩や背中はこり固まり、終わるころには全身が鉛のように重かった。


けれど、不思議と嫌ではなかった。

「昨日できなかったことが、今日は少しうまくできた」

——そんな感覚が、どこか懐かしかった。



かつて、看護実習で学んだ日々を思い出す。

シーツ交換や清拭などなど、、、、

何が正解なのか分からないが、ひたすら正解を求めて繰り返し練習していたなぁ。

練習したその努力が、いつか人の命を守る技になると信じていた。


今は違う世界で、“貴族の娘”としての形を磨いている。

けれど、根っこにある「学ぶ喜び」は、あの頃と何も変わっていない気がした。





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