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看護学校でならったアセスメントで整理してみようか……。
まず、痛み。父は「魔法で冷やせば和らぐ」と言っていたけど、痛みの根本は消えていないみたいだよね。
放っておけば、歩行や立位動作——つまりADL(日常生活動作)に支障が出るかもしれないし。
痛みの治療には、薬と生活習慣の見直しが必要だよね。
薬師がいるということは、対症療法的な鎮痛薬はあるのかな?
これに関しては今動けないんだよね。
出来れば、尿酸値を下げるような“根本治療薬”ができたらいいんだけど、この世界に存在しない可能性が高い。
(これは……オレムに相談しないといけない案件だよね。)
ただ、薬以外でもできることはあるんだよね。
例えば——食事と運動。
肉や魚中心の食事から、野菜や穀物中心の菜食に切り替えれば、尿酸の生成量を減らすことができる。
それに、痛風患者は、併存疾患として生活習慣病(高血圧や糖尿病)に罹患している場合が少なくない。特に、肥満症患者には高頻度で無症候性の高尿酸血症が随伴している。父は肥満体型ではないので、そこは問題ないだろう。
だから、食事改善は重要なことだと思うんだよね。
できるところから変えていくしかない!
看護の基本は、“患者の今ある生活の中でできる最善” を探すことだからだ。
一般的に、痛風患者への看護目標は2つ。
1.疼痛が緩和され、安楽に過ごせること。
2.疾患について理解し、再発予防を行う
それを踏まえると、今私ができるのは——予防の提案。
難しいことではあるけど、やらずにはいられない。
とはいえ、貴族社会でいきなり「食事を控えましょう」と言うのは、けっこうハードルが高そうだ。
(オレム、早く帰ってこないかな……相談したいこと、いっぱいあるのに。)
彼が帰ってからでもいいんだけど、これ以上悪化するのは見てられない。
だから、彼がいない今、私が動ける範囲は限られているけど、明日の夕食、少しだけ献立に口を出してみようかな。
——きっとそれが、この世界で“看護師としての第一歩”になる気がするんだよね。
※医学書院 病理学、病態生理学等より




