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2-2

父とグリス兄さんが戻ってきてからというもの、私の生活は少し変わった。


それまでの生活では、食事と散歩以外ほとんど自室で過ごしていたのに、最近は夕食後も部屋に戻らず、家族と過ごす時間が増えたのだ。


その原因は、グリス兄さんだった。どうやら彼は「家族での時間」をとても大切にしているらしい。

毎晩、夕食後に日本でいう“リビング”のような広間で、家族全員が集まるのが習慣になっているのだ。


そこでは兄の妻や子どもたち、そして父と母、オレム、私が一堂に会する。オレムは最近家を空けることが多く、今日はいない。

父と母は、孫たちを可愛がっており、そんな光景を見ていると、自然と笑顔になる。

(ああ、こういう時間、いいなぁ……)

異世界での暮らしにもようやく慣れてきた私は、こうして“普通の幸せ”を感じられることに少し安心していた。


しかし、その温かな時間の中で、ひとつ気がかりな出来事があった。

ある晩、父が少し顔をしかめていたのだ。


「どうなさったのですか?」

母が心配そうに尋ねると、父は軽く足をさすりながら答えた。


「いや、左足の親指がな。ここ数日、痛みが取れんのだ。」


私は反射的に視線を向けた。

(左足の親指……?)

父が靴を脱ぐと、親指の関節のあたりが赤く腫れている。少し熱を持っているように見える。確かにすごく痛そうだ。



詳しく見てみたいけど、オレムから「医療関係には勝手に関わるな」と言われている。

今日に限って彼はいない。

私はウズウズしながらも、黙って成り行きを見守った。


「領土でも痛みが出ていましたが、変わらず症状が出ているんですか?」


「ああ」


「原因はご存じなのですか?」


「ぶつけたわけでもないし、特に心当たりもないんだ。」

父は苦笑して言う。


「とりあえず魔法で冷やせば痛みは和らぐから、それで凌いでいる。薬師からもらった痛み止めも効くから心配はいらん。」


魔法と薬でなんとかしているけれど……そのままで本当に大丈夫なの?

父は表面上は平然としているけど、痛みが悪化すれば歩くことも難しくなるかもしれない。

(どうしよう……でも、オレムが戻るまで待つしかない……)



その夜、私はベッドの中で父の足のことばかり考えていた。

頭の中では、自然と“看護師としての思考”が働き始めていた。

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