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2-1

オレムが家を空けるようになった頃、ユリアス——つまり私の父と、一番上の兄が領地から戻ってきた。

どうやら、王都での政務が一段落したらしい。


父は、40代後半でダンディーで威厳のある人だった。

私的に初めて父に会ったときは、やや厳しい表情を崩していなかった。

「騎士たる者、階段を踏み外すとは訓練不足だな。」


(……いや、それに関しては、まったく記憶にないのでわからないんだけどね)

なので、怒られることに対して少し落ち込んでいたら、最後には「まあ、生きて戻ってくれただけで十分だ」と小さく微笑んでくれた。


仕事柄、厳しさの中に愛情がある人なのだろう。

聞けば、国で「宰相」という役職に就いているという。日本でいうと……たぶん、官房長官クラス?めっちゃ偉い人じゃん!




一方、兄は父から領主を引き継いだ当主。

なので、父と同じ感じの人かと少し警戒していた。

(とはいえ、貴族社会の人たちだし、対応を間違えるとまずいよね……)

だが、その警戒は、兄と対面して一瞬で吹き飛んだ。


「ユリウス、大丈夫かい? 意識が戻らないと聞いた時は本当に心配したよ! 仕事が詰まってて、すぐには戻れなかったんだけど……こうして元気で会えてよかったよ!」


会うなり、兄——グリスは勢いよく私を抱きしめた。


(え、え!? 距離近っ!)

……この人、思っていたよりずっとフランクだ。

貴族ってもっと形式的に挨拶するもんだと思ってたから、完全に不意打ちだった。

身構えていたのがバカみたいに思えるほど、家族への愛情が溢れていた。



父が鋭いナイフなら、兄は温かい陽だまりみたいな人だ。ともかく、父と兄が帰ってきたことで、屋敷の空気が少し賑やかになったと私は感じた。


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