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前史

 ──西暦2095年。

 この年、世界中に衝撃が走る発見がされた。

 アメリカ合衆国・NASAが火星探索に向かわせていた無人探査機が明らかに地球のものではない、墜落したと思われる宇宙船が発見されたのである。

 この船は2060年頃より本格化した宇宙探査、火星探索で発見されていなかったことから過去数年の間に墜落したと考えられ、この発見に技術者や科学者、そして一般市民もSFのような展開に湧き上がった。

 この巻き起こったエイリアンブームは様々な分野に影響を及ぼし、SF映画人気の再燃を招き、報道機関はこぞってエイリアンの新情報を発信した。また技術分野ではエイリアンシップの解析、サルベージでオーバーテクノロジーとでもいうべき技術を少なくない数回収、地球の技術レベルは格段に跳ね上がった。

 そんなことが起こる一方で各国政府首脳陣や国連の安全保障理事会などはあることを懸念していた。もし、このエイリアンが友好的な訪問者でなく敵対的な侵略者だった場合、数々のオーバーテクノロジーを保有している相手、それも技術レベルから見て大規模な宇宙戦闘艦を持ちうると判断できるような相手に地球の全国家が一致団結したとしても撃退しえるか、ということである。

 無論、出された結論は99%撃退はおろか、抵抗すらも不可能。そこで各国は一つの決断をした。それは各国で協力し、宇宙戦闘艦群を始めとする、最低でも衛星軌道圏外でエイリアンを撃退しうる装備を持つことであった。それに伴い、各国で対エイリアン戦力の大拡張が始まるとともに、長らく平和憲法を貫いた日本国もこの動きに乗り、憲法を一部改正。日本国自衛隊は日本国国防軍となり従来の陸海空に加え、国防宇宙軍が創設されるなど、各大国に足並みをそろえる姿勢をとった。


 しかし、この大きすぎる世界の変化は歪みを生み出し、その歪は10年の月日の後に爆発した。

 2106年、北朝鮮・韓国間で休戦が破られ第二次朝鮮戦争勃発。第一次朝鮮戦争の際と同じように、北朝鮮側は露・中の支援を受け、韓国側は米・英を始めとするNATO諸国の支援を受け戦争が泥沼化。最終的に戦争経済に耐えきれなくなった北朝鮮が経済的に崩壊するまで5年の年月が経っていた。この戦争ののち、旧北朝鮮領を韓国が併呑。朝鮮民国に名を改め、悲願の半島統一を果たした。

 2115年、朝鮮半島における代理戦争での敗北、宇宙開発競争での敗北、経済不振などによって内乱の予兆が燻っていたロシア連邦国が権威回復のため、表向きには旧領奪還を掲げ、近年ロシアから距離を取る動きを行っていたベラルーシに宣戦を布告。誰もがロシアの勝利を疑わなかったが、米英仏独日などの主要国の支援のもと5年に渡る激戦を繰り広げ、ベラルーシはロシアの猛攻から遂に身を守りきった。

 そして2120年、ベラルーシとの泥沼の戦争で疲弊しきったロシアに異変が起こる。大統領の戦争強行策に反発した市民、軍人、政府要人が結託しクーデターを起こしたのだ。七夕の日に行なわれた7.7革命によりクレムリンは完全に包囲され、突入した革命軍のスペツナズが大統領を射殺したことで政府側が降伏。同時に革命軍臨時政府がベラルーシとの講和を行い、5年続いた地獄の元同胞殺しは終わった。

 同年8月、国内の立て直しを進めていた革命軍臨時政府は民主的選挙の元、新政府を樹立。なんの偶然か、約200年前の英雄と同じ名を持つ革命軍の中心人物、そして新大統領となったトゥハチェスキー大統領よりトゥハチェスキー政府と呼ばれるようになる新ロシア連邦共和国は国際社会に晴れて復帰した。

 しかしこの後も約4,50年近くに渡り紛争が世界中で相次ぎ、国連の力不足を各国は痛感し、新たな国際社会を取りまとめる枠組みを組織した。国際連邦、通称はこれまでと変わらず、国連。従来の連合、連盟ではなく、地球自体が連邦という一つの国家であるという意識を持つこと、外敵の侵略から地球を護るという意思の表れとしてこの名が付けられた。

 そして国際社会に大変革が訪れる中、遂に難航していたサルベージした機械の解析が終了し、世界は歓喜と驚愕の渦に包まれることになる。その機械は重力発生装置を兼ねたワープ機関であったのだ。

 すぐに各国で着々と計画が進む宇宙戦闘艦に搭載するべく新造と調整が始まったが、幾度も実験が失敗し、多数の無人機が犠牲となったが改良を進めた結果安定したワープ航行と宇宙空間での有重力活動が可能となった。その後、宇宙空間における戦闘距離に適応する長距離レーダーや地球のものより圧倒的に性能が良い核融合炉などもサルベージされ、地球技術を組み込みつつ実用化されていった。

 オーバーテクノロジーが次々実用化されていく中、2150年に遂に各国が開発競争を進めていたあるものが完成した。エイリアンとの宇宙空間での戦闘を前提とした宇宙戦闘艦である。

 日本国が宇宙進出・航行技術をJAXAや三菱など、艤装や防衛装備品を防衛省・防衛装備庁やJMU関連企業など、建造にJMUや三菱、川崎重工などの大型艦船建造技術を持つ企業が協力し、世界で初めての戦闘艦”(さきがけ)”が就航、建造された呉から飛び立ち、火星へワープ、火星の衛星軌道上に建造されたMISS(Mars International Space Station)にて補給の後、地球にワープして帰投。横須賀国防海軍軍港の海に着水した。

 その後、魁の技術を元にした各国の宇宙戦闘艦が就役、宇宙軍の拡張が進んだ。

 2187年、各国が共同で軍事用国際宇宙ステーションであるISS-2を建造し宇宙艦艇を宇宙で管理できるようになった。

 ただ、ドックサイズなどは限られるために基本は各国が各々地上や地下に建造された宇宙軍港で宇宙艦艇は管理、整備されることとなった。

 2189年、火星に設置された深宇宙レーダー施設が謎の電波をキャッチ。詳細は不明ではあるが2095年の宇宙船と同じ文明のものであるとされた。これによって再び宇宙人ブームが巻き起こる。

 それに対し公には発表されなかったが七大国を中心として多国共同でX計画と呼ばれる戦力拡充計画を発令。

 それからも戦力拡充は続き、10年後。

 2199年、地球の軍事力は100年前と比べ数倍に跳ね上がり、初代ISS、ISS-2ともに拡張され、艦艇用整備ドックだけでなく簡易生産施設や宇宙艦船建造ドック、防衛武装を有する一大軍事拠点となっていた。それに加え宇宙艦艇用のエネルギー兵装も実用化され、次々に搭載されていた。また新たに解析された技術の中に電磁装甲、いわゆるバリアと呼ばれるようなエネルギー装甲技術が発見され即座に戦闘艦に搭載された。

 しかし問題があるとすればこの急速な軍拡に反対する人間が多かったことであろうか。世界各地で反軍拡デモが発生し、その度に警察や軍が出動し、場合によっては死者を出す惨事へ発展することもあった。

 しかしその一方軍事面以外でもエイリアン技術は生活で利用され、安定した核融合技術を得て電力はかなり安定した供給が可能となるとともに再生可能エネルギーの効率化が行われ、もはや電力などのエネルギーは人類が心配することはなくなった。

 また単純な技術進歩も相成りリサイクル技術が見直され、使用した素材ほぼ100%の還元が可能となりエネルギー問題も、資源問題もあまり問題ではなくなっていた。

 このまま人類は発展し、この比較的平和な状態を維持できると、誰もが信じていた。

 しかしその期待は儚くも裏切られることとなる・・・


 2199年4月1日。


 日本では桜が咲き誇る頃、彼らは遂に人類の前に姿を表す。


 これは後に天ノ川戦争と呼ばれることになる大戦の記録、そしてその戦いの時代で生きた者達の記憶である。

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