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蒼い海のサケ

こんにちは。本日は数多ある小説の中から私の作品をご覧いただき誠にありがとうございます。「曲から小説を作る大作戦」第一弾となるこちらの作品。でこぼこコンビ系のお話とかちっちゃい頃から好きなんすよね〜。というわけで是非完結まで追って頂ければなと思っています。投稿頻度は決して高いとは言えませんが、話の方は一話一話真面目に作って参りますので、温かい目で見守っていただけたら幸いです。

「『蒼い海のサケ』っていう短歌を読んだんだけどさ。」


「……。」


「サケが蒼いのは、産卵前のオスにだけ体色が青いからで、メスにはちゃんと白っぽい色が残っているんだって。……秋子、知ってた?」


「……その嘘か本当か一瞬わからなくなる雑学、やめてくれない?」


ページを繰る手を止めることなく、私は「小説」という名の空想の世界と彼との会話を行ったり来たりしていた。


彼はその奇抜な髪を掻き上げながら机に座り、ジト目になりながら軽く悪態をつく。


「嘘か本当か一瞬わからなくなる雑学てなんだよ」


私はそんな彼がこちらを見ないのをいいことに、ぼーっと彼を観察する。


相変わらず綺麗だなあと思う。白くて透き通るような肌に落ちる睫毛の影。その影は長く、彼の睫毛が長いことを教えていた。


だが…それ故に残念だ。


「そんなどうでもいい話は置いておいて…あなた、また頭髪検査に引っかかったんですって?おまけにその至る所に生やされたピアスも……いい加減直したらどうなの?」


「だってさあ、これは俺なりのおしゃれって奴だし。ピアスは……まあこれはもう俺のアイデンティティー?」


「はあ……何度言っても聞き分けのないんだから……。」


私の溜息が混じった言葉など右から左へ聞き流し、彼は私に質問してきた。


「そういうお前こそどうなんだ?また彼氏に振られたんだろ?」


「……なんで知ってるのよ。」


「お前の友達が俺に泣きついてきたんだよ。『またあの子(秋子)が振られた〜!』ってね。」


「……ああ、そういうこと。」


私はその友達の顔を思い浮かべた。うるさい人だが悪い人ではない。他人のことにそこまで感情移入できるのは実にめでたいことだ。


「…別に、どうってことないわ。勝手にあっちが好いてきて勝手に飽きられただけ。こっちはいい迷惑よ。相手の為にわざわざ自分の時間を割かなくちゃならないもの。無駄にした気分だわ。返して欲しいくらい。」


「……難儀な性格してんだな」


「あなた程では無いわよ。」


「はは、違いねえや。」


彼はそう言って笑った。


私はそんな彼を再び観察する。


……やっぱり綺麗だなと思う。その髪も、睫毛も、肌も、そして……この笑顔も。


私は彼の笑顔が大好きだ。でもそれは私だけのものでは無いのだ。


彼はよく笑うから、みんな彼を好きになるし、彼もみんなのことを好きになる。だから私は彼の特別にはなり得ない。この難儀な性格も、彼とのこの奇妙な関係をこれ以上進展させない歯止め役を担っているのだろう。


……彼は私を好きにならない。絶対に。


「それで?その振られた男でなんかいい事あったのかよ?付き合ってたら、いい思い出の一つや二つくらいー」


「ないわよ、むしろいい迷惑だったんだから」


「…そうは言ってもさ、人間ていうのはもっとこう……ロマンチックな事を求める生き物なんだよ」


「……はい?」


ロマンチック?彼がそんな乙女チックなものを求めていたとは初耳だ。まあでも確かに彼は顔だけはいいし、何かとそういう演出を求められることもあるかもしれないなと思う。そう考えると彼の性格上、ロマンチックな演出に付き合うのも気が滅入るだろう。


「ふーん。で、そのロマンチックなことって何?まさか花火打ち上がって観覧車がライトアップされる中でーなんて言わないでしょうね」


「そうそう!そういうの!」


そう言って彼は机に両手をつき、その反動で立ち上がった。彼の額が私の額にぶつかるかと思ったその時……私は思わず両手で額を抑えた。


今気づいたが私はずっと読んでいた本を落としていたようだ。まだ読んでいないページなのにと心の中で悪態をつくと同時に、私は彼に冷たい視線を向ける。


「…あなたって人は…もっと距離感に気を配りなさいよ。そんなのだから『女たらし』なんて影で囁かれるのよ?あなたを振った女子達が皆口を揃えて言ってるわ。」


「え、そうなの?」


彼はとぼけた様子で私を見る。自覚のない行動の連続に私はため息をつき、読みかけの本を拾い上げた。案の定、読んでいたページがわからなくなり、紙を弾く手に無意識に力がこもる。


「まあ、そんなことはどうでもいいとして。なあ秋子……良かったら今度の日曜日にでーとしない?」


私は一瞬彼の言葉を疑った。突然のことすぎて理解が追いつかない。それに私の気持ちも整理しきれていないというのにいきなりデートのお誘いだなんて、正直困るのだが。


でも……少しくらい期待してもいいのだろうか?


「ふーん、なんで私なのかしら?」


「ほら!お前っていつも暇そうじゃん!」


「……は?」


私の中に苛立ちという名の殺意が芽生える。


『暇そう』?何を言っているんだ?確かに私は友達の数が決して多いとは言えないし、休日も家で本を読むか一人で塾の自習室に篭るくらいしかしないから、彼が言ったことも間違いではないのかもしれない。……いや、でももうちょっと言い方があるだろうと思う!


私は彼への怒りをぐっと堪えつつ彼の誘いに答えた。


「で、そのでーととやらはいつなのかしら?」


「あら?意外と乗り気?てっきり『忙しいから』とか適当な理由つけて断られると思ってたからダメ元だったんだけど…意外。」


「で!?いつなの!?」


彼は私の剣幕に圧倒され、若干引き気味になりながらも答えた。


「えっと……今週の日曜日……」


「また随分と急ね」


彼のその反応から察するに前々から誘う予定だった訳ではなく、その場の思いつきだろう。相変わらず突拍子のない人だと呆れを通り越して感心する。


だがなぜ私を誘ったのだろう?私は自分で言うのもなんだがそこまで器量良しという訳ではないし、かと言って彼にしょっちゅう告白してくる女子達のレベルに相当する身なりでもない。


「そう?まあ、いいじゃん。どうせお前暇だろ?」


「……ごもっとも」


確かに私の休日は自習室か自宅で本を読むだけだし、未だに友達と呼べるのも一人しかいない。


「で、返事は?行くのか行かないのか?」


「まあ……暇だし。行ってあげてもいいけど?」


「なんで上から目線なんだよ‼︎」


彼はそう言って笑った後

「じゃあ日曜の11時に駅前集合な!」

と言って颯爽と教室を去っていった。


私はそんな彼の背中を見送りながら再び本を開いた。


だがいざ読もうとすると内容が全く頭に入ってこない。代わりに私の頭の中は『でぇと』という言葉でいっぱいになっていた。


「……デートかあ」


そう呟いた途端顔が熱くなる。単語に過剰に反応せず、冷静に立ち回った自分をわしゃわしゃと撫でてやりたいくらいだ。


「デート、かあ」


1人教室でぶつぶつと復唱する。側から見れば完全に気色の悪い変人だ。勘違いされては困る。私は気を取り直して再び本を開いた。だがやはり内容は全く頭に入ってこない。代わりに『デート』という言葉でいっぱいになっていた。


「……デート、ね」


……結局この日は一日中上の空で過ごしてしまったのだった。

いかがでしたでしょうか。歌詞の続きをAIのべりすと書かせた時に何故蒼いサケの短歌とか意味わからないものが出来上がったのか不思議ですが、その後あまり違和感なく自分の描く物語像と上手く繋げられたのではないかと思います。では次は第二話ですね。デートの話をこぎつけた2人のなす行動…いつの日かまでお待ちくださいませ。

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