プロローグ 『誰が為に』
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――いつかはさ、私のこと好きでいてよ
それが彼女から贈られた、紛れもない最期の言葉。
ありきたりな僅かな言葉が、今にも咽び泣きそうな弱弱しい声が、何かを強く訴えるその瞳が、俺には直視できない程に眩しく思えた。
最期を迎え、尚、輝きを忘れない彼女の美貌は――と考えていた矢先に、現実に侵された体が、生命の艶を擦り落とし、死によって汚れていく。かすかな吐息が微弱さの加速を終え、完全に途絶える。かと思えば、今度は白髪が光を失っていた。
先刻までの煌びやかさが虚構だったのかと、そう疑いたくなるくらいに死という真実は残酷で、一切の容赦が感じられない。彼女は今、死んだ。命を落とした。
それが運命だったのなら受け入れるし、誰かに殺されたのだというのなら、膨大な憎悪を抱えて、これからを歩んでいく覚悟だって決める。最悪、俺が何かの間違いで殺してしまったというのなら、死に逃げるという安易なこともせず、四肢や五感を失うのだとしても、それでも罪というものを全力で償ってやった。命以外の全てを捨てる事が俺にはできる。
――■■を亡くした俺ならば
しかし、彼女の死因がどれかに当てはまる、ということは起きなかった。
「君が彼女を殺したんだ」
最期の言葉に続いてその耳障りな言葉が、己の意識外で木霊する。
ならば、言葉通り俺が殺したのか――というのは曖昧で稚拙だ。なにせ、今話している人物が、彼女へ牙を剥いた拳銃の引き金を引いた事実もまた、紛れもない真なのだから。
しかし、このままでは辻褄が合わない。眼前の人物は彼女を撃ちながら、それでも俺が犯人だと断定する。贖罪から逃れている訳でも無く、ただひたすらにそれが現実なのだと、
「み、な?」
あらゆる事実の裏合わせに、全身が遅れて到着する。ようやく彼女の最期の言葉に、新たな言葉を紡ぐことができた。ようやく、できた。
「俺を、庇って、何、死んでんだよ」
彼女は俺を守るが為に、命を落とした。
――■■を亡くした俺なんかのために
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