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第27話:うわぁ! 柔らかい

 森で目を覚ました僕はテンションが上がってしまい、人化状態なのにセミの真似をして樹液をすすっていた。

 謎の美少女ソラナは僕のその様子をじっと見ていたと言い、笑いで腹を抱えていた。


 そんなソラナは追っ手に追われてこの森に隠れていると言っている。

 それがどういうことなのか分からなかったけれど、挨拶には挨拶を返した方が良いと思ったので、僕も同じように自己紹介した。


「僕はケイダって言います。ちょうどそこに良い木があったので、樹液を舐めていました。記憶がないので変なことを言うかもしれませんがよろしくお願いします」


 とりあえず記憶喪失だという設定で誤魔化すことにした。

 突っ込みどころ満載だと思うけれどソラナは僕の方をじっと見てからあくまでも真面目な顔でこう言った。


「お互い事情持ちのようですね」


 逃亡少女と記憶喪失の男、確かに事情持ちと言うほかないだろう。

 でもそんなに簡単に受け入れちゃって良いのかな。


「ちなみに無一文でもあります。持ち物はこの服だけ⋯⋯」


 僕が付け加えるとソラナはまたふふっと笑ってにこやかな顔で僕を見る。


「もしかして私のお金、狙われてます?」


 ソラナは下から覗き込むように言った。

 まずい。かわいすぎる。


「いやいやいやいや。そんなつもりはありませんよ。ただ、街の方向を教えてもらえたらなとは思ってます」


 僕は思わず後退した。

 この子なんか距離が近くないかな?

 女の子に免疫がないので動悸がしてきた。


「街⋯⋯ですか?」


「はい。とりあえず文明的な生活がしたいと思ってましてね。何か仕事を探さなければならないですし、大きめの街に行くのが良いかなぁと」


 ソラナは僕の話をふむふむと頷きながら聞くと、すぐに気まずそうな顔になった。

 なんかまずいこと言ったかな?


「あの⋯⋯大きな街に入るときにはお金がかかるので、無一文だと門前払いされることになるかもしれません」


 うわぁー。そのパターンか。

 冒険者ギルドとかに入っていれば免除されたりもするけれど、そもそもお金がないと厳しそうだね。


「そっかぁ⋯⋯。小さい街とか村とかなら大丈夫ですよね?」


「そうですね。そういう場所ならお金は取りませんけれど、身分証の提示を求められたりしますし、小さい街ほど警戒心が強いです」


 まぁ、そりゃそうだよね。日本だって田舎に行けば噂が広がるし。

 そういうところで怪しまれながらも地道に活動してお金を稼げるようになるかなぁ。


「お金がなくても少しずつ信用を上げていけば生活できるようにはなると思いますが、ケイダさんさえ良かったら他にも取れる手段がありますよ」


「え、そんな方法があるんですか?」


 僕は身を乗り出した。ってか今気づいたけれど普通に言葉伝わるんだね。

 日本語を喋っているってわけじゃないと思うから神様のおかげなんじゃないかと思う。


「⋯⋯私がそのお金を出します。だけど、そのかわりにお願いがあるんです」


「お願いですか⋯⋯?」


「はい。その前に確認ですがケイダさんは何か戦う術を持っていますか? 感覚的に結構な魔力をお持ちのように見たので⋯⋯」


 え? 分かります?

 得意顔でそう言おうとしたけれど厚かましすぎると思って自重した。


「魔力量には少し自信があります。近接戦闘の自信はないけれど魔法は使えた気がします。ソラナさんは分かるんですか?」


 あ、記憶喪失設定なのにこんなこと言っていいんだっけ?

 まぁ色々話しちゃっているし、特定の事柄だけ忘れている系の記憶障害ってことにしよう。


「私は比較的敏感な方なので多少は分かりますが⋯⋯正直ケイダさんほどの魔力を持っている人間を見たことはありませんね」


「そうなんですか⋯⋯。というか僕の方も人がいないと思って魔力を解放し過ぎていました。もう少し圧縮しないと気づく人がいますよね⋯⋯」


 やっぱりわかる人にはわかるんだね。

 どれぐらい僕の魔力がすごいのか根掘り葉掘り聞きたいところだけれど、我慢しよう。


 それで、なんでそんなことを聞いてきたのだろうか。

 大体察しは付くけれどね。


「私はこれから二日ほど歩いてアービラという街に向かいます。ケイダさんにも一緒に来てもらいたいのですが、お願いできるでしょうか。無事に付くことができたら街に入るのに必要なお金は私が払います」


 ソラナはぐいっと一歩僕の方に近づいてそう言った。

 ハーブみたいな爽やかで良い匂いがします。


 追われているって言われたからそうだと思ったけれど、護衛みたいな仕事だよね。

 こんなかわいい子と行動できるなら願ったり叶ったりだけど僕で役に立つのかな?


「話せる範囲だけになりますがまずは私の事情をお聞きいただけないでしょうか。その上でもし協力していただけるのであればぜひお願いしたいと思っているんです。私が頼れるのはケイダさんだけです」


 ソラナは僕の手を両手で包み込んだ。

 うわぁ! 柔らかい。


 僕はこの話を受けようと心に決めた。


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