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第10話:◆ロルス・ローランドの挑戦

 A級冒険者のロルス・ローランドは『女神の楽園』と呼ばれる森の攻略に挑戦しようとしていた。


 ロルスは一人で森の前に立ち、奥を強い眼差して見ている。

 彼は薄茶色のミディアムヘアをかきあげ、前髪が目にかからないようにする。

 手にはミスリルの直剣を持っており、胸や肩には軽金属で作った防具が付けてある。


 この森の奥には神樹と呼ばれる聖なる木があって、その葉を食べることで大いなる力を得ることができると知られている。

 そして神樹のさらに奥には女神の祠があり、そこで願いごとをすればなんでも成就するのだという伝説もある。


 これまでに多くの冒険者が挑戦したけれど、奥まで到達したことのある者の存在は文献にしか残っていない。今や伝説の地だ。


 ロルスは幼少の頃からその話を聞いていて、いつか森の完全攻略を達成したいと考えていた。

 当然それだけ難度の高い場所であるからロルスも一回で攻略できるとは思っていない。

 今回は下調べをしにきたようなもので、いずれ全力で挑戦する時のための情報を得ておきたかったのだ。


 ロルスは今年A級になったばかりだ。

 二十二歳にしてA級というのはかなり出世が早いけれど、女神の楽園に足を踏み入れるには実力も経験も足りていない。


 しかも、ロルスは今回ソロだ。

 普段行動を共にしてくれる仲間たちを誘ったけれど誰もついてきてはくれなかった。

 多分その判断が正常なのだとロルスも分かっている。

 だけどどうしても見ておきたくなったのだ。


 これからの人生を賭けてこの地を攻略するとロルスは心に決めていた。

 その最初の機会を待ちきれなくなってしまったのだ。


 来年は十九年に一度の「災厄の年」だ。

 黒い体に金色の目を持つ奴らが大量に発生して、楽園に足を踏み入れることができなくなる。


 ロルスは胸元から首にかけているレリーフを取り出し、強く握りしめた。

 そこには女神の顔が彫られている。


「聖なる女神よ。私の魂に導きを与え、勇気と調和をもたらしてください」


 心の底からロルスは願っていた。

 辺縁部に少し足を踏み入れるだけでも運が悪いと命を落としてしまうかもしれない。


 女神の楽園に生息する魔物は強い。

 足元にいるような小さな生物にすら警戒を抱かないといけないほど危険に詰まっている。

 ただの虫だと侮って放置してしまったばっかりに命を落としてしまった冒険者の話をあげればキリがない。


 そんな中でロルスが辺縁部で一番会いたくないと思っているのがスターライトモールというモグラの魔物だ。

 この魔物は神出鬼没で、突然土から出て攻撃してくる。

 体は小さくてその辺りにいるモグラと変わらないのだけれど、動きがとても早い。

 特徴的なのは星のように開いた鼻で、そこから強力な光属性の魔法を放ってくる。


 個体数は多くないらしいが辺縁部のどこでも出現する可能性があるので決して油断できない。

 ロルスは改めて女神に祈った。


「スターライトモールだけはご勘弁ください」


 自信家のロルスもスターライトモールに遭遇してしまったら無傷で逃げ切れるとは思わなかった。

 しかもこのモグラは体から衝撃吸収能の高い毛が生えていて、ほとんどの攻撃を無効化してしまうらしいので、地面にボコボコとした跡を見つけたら即刻撤退するつもりだ。


「せめて一時間くらいは様子を見たいものだけど、どれぐらい行けるだろうか⋯⋯」


 ロルスは改めて剣を握りしめ、大きく息を吸った。

 そしていつ敵の襲撃を受けても良いように身体を魔力で強化し、『女神の楽園』に足を踏み入れた。





 それからロルスは十歩ほど進んだだろうか。

 地面や草木を注視し、虫一匹見逃さないような気概で慎重に進んでいる。


 薬の素材となる非常に高価な植物が生えている可能性もあるので、そういう意味でも周囲をしっかり確認することは重要だった。


 そしていざ十一歩目を踏み出そうとした時、遠くにぼこっと土が盛り上がっているのが見えた。

 凄まじい速さでこちらに向かってくる。


 ロルスの判断は早かった。

 彼は脳を介していないのではないかという速度で踵を返し、全力で森の外に身体を投げ出した。


「はぁ⋯⋯、はぁ⋯⋯。なんて森だ⋯⋯」


 ロルスの英断は彼の命を今日も救った。


『ロルス・ローランドの第一回目挑戦踏破記録:十歩』


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