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SS①初デート

「美織……なんでお前がここにいるんだ……」


 待ち合わせの場所に来てみれば、さっき家で別れたはずの美織が、亜依と手を繋ぎながら頬を膨らませそっぽを向いていた。


 志岐家に挨拶に行った翌週の日曜日に俺達はデートをする約束をし、今日という日を迎えた。

 着て行く服、何処に行くか。そして何より美織をどうやってお留守番させるか……散々頭を悩ませた。

 美那さんに協力してもらい、美織を渋々納得させたと思っていた30分前の自分を殴り飛ばしたい衝動を我慢し、この状況を整理しようと思考を巡らす。



「難しい顔してどうしたの?」


 そう言って亜依は、心底不思議そうにしながら首をかしげる。


「いや……ちょっとこの状況に追いつけなくて」


 そう言った俺に対して、亜依は少しだけ嬉しそうにしながらも、俺を嗜める。


「私と2人で居ようと努力してくれたのは嬉しいけど、今後はそういう気遣い要らないからね」

「いや、流石にそれは……」

「きっとそうだろうと思って美織ちゃんを迎えに行ったの」

「何でそんな事を……。今日は美那さんに美織を任せたのに」


 それを聞いた彼女は困った様に、微笑んだ。


「ねぇ、優希。美織ちゃん泣いてたんだよ?置いて行かれたと思った時の彼女の気持ち……ちゃんと分かってる?」

「…………」

「子供にとっては、一度だってそういう事をされた経験って大人になっても記憶に残るかもしれないの」


 分かってるつもりだった。でも、それを理解した上でも今日という特別な日だけは、2人で居るべきだと思ったんだ。


「それに、美那さんをそろそろ解放してあげないと。あの人にこんな事を言うのは余計なお世話かもしれないけど……あんな美人が独りで居るの」


 耳が痛いとはこういう事だろう。亜依の為だと大義名分を掲げた所で、誰かの時間を奪っていい理由にはならない。


 俺は亜依の言葉に何も言うことが出来なかった。


「美織ちゃん、見て。美織ちゃんを置いてきぼりにした優希は私が怒っておいたから機嫌直して?」

「あいちゃん……」

「お詫びに優希が美織ちゃんの食べたいものご馳走してくれるって。何食べたい?」

「けーき!!」

「お、いいね。美味しいお店知ってるから、行こっか」

「あいっ!!」


 目の前で繰り広げられる展開に置いてきぼりになっていると、亜依が微笑みながら俺に尋ねてきた。


「そう言うことだから優希の奢りね。異論は一切受け付けないけど、言うことある?」

「何も……いや、そうじゃないな。美織、置いていってごめんな」


 俺の謝罪の言葉を聞いた亜依が、何故か満面の笑みを浮かべていた。


「美織ちゃん、優希の事そろそろ許してあげよっか」

「………にぃに、もうおいてかない?」


 今にも泣き出しそうな顔の美織。俺がこの子の親なのに、亜依の方がよっぽど大人に考えをしていた事にとても恥ずかしい気持ちになった。


「置いてかないよ、美織ごめんな。許してくれるか?」

「うん、もういい……」


 そう言って美織は、亜依の手を引きながらこちらに近づいてくる。


「にぃに、抱っこ」


亜依の手を離して、俺の足にしがみつく。


「ありゃりゃ、まだ優希には勝てないか」

「ならぶのは…だめ」


3人並ぶと他の人の迷惑って言いたいのかな?

1番小さいのに、ある意味美織が1番大人かもしれない。


「これは美織ちゃんに一本取られましたな」

「確かに」


2人で笑いながら、美織の希望通りに抱き抱えようとするのだが、突然背中を向けられる。


「あいちゃん、あいちゃん」

「どうしたの」


 近づいてきたのに、何故かまた遠ざかる2人。何を話しているかは全く聞こえてこない。


 とりあえず待っていると、戻ってきた亜依は顔を少しだけ赤くしていた。


 「にぃに、だっこ」


 今度はすんなりと抱き上げる事ができ、亜依と横並びで歩き出す。

 時折、肩と肩が当たるぐらいに2人の距離が近かった。


 「恥ずかしいからこっち見ないで!!」


 なるほど……。もしも抱っこせずに3人並んで歩くと美織が真ん中だったな。こんな風に亜依との距離が近くなる事もなかっただろう。


 さっき顔を赤くして戻ってきた亜依を思い出し、もしかしてこの事を美織が見越していたのかと疑念を抱く。


 美織、お前の将来が俺は今から心配になったぞ……。あえて真相を探る事はしないでおこうと思った。

読んでくださってありがとうございます。のんびりペースで更新させていただきます。

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