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D12.アレサ王女による無垢にして残酷なる快楽支配

 コケコッコーと鶏鳴なく目覚めの時がやってきました。


 わたくしは夢の世界にて決意を新たにして、睡眠薬を盛られて眠っていた現の世界へと戻ってきたのですが、当然マケドニア王国勢に捕らわれた逆境の目覚めを覚悟しておりました。

 ああ、悪の改造手術くらい受けていたって不思議でない状況下でございます。


「ん、む、ここは……」


 目覚めた場所がまずは暗く冷たい牢屋でないことにホッといたします。

 わたくしの素肌に触れるふんわりとやわらかな感触は、上質なベッドとシーツに他ならず、視界に映るのは天蓋つきベッドの天井でした。


 カラダに痛みはなく、異常は……衣服がほとんど何もない、下着一つなことでしょうか。

 装備を奪うことは合理的です。わたくしとて、歌って眠らせた間に本体を刺激せずこっそりアイテムを奪うといった戦術をダンジョン攻略で実践したことがございます。


 上半身を起こそうとして、わたくしは布製の手枷で左腕をベッドに繋がれていることに気づきます。たかが布と申せども、丈夫な布はやわらかくても腕力だけで安々とは引き千切れません。

 視界の端には武装した侍女が控えていて、出入り口を塞いでいるようです。


 身体拘束アリ、警備アリ、装備品なし。

 そうした状況判断を下せるだけの思考力が保たれているだけでも御の字と言うべきでしょうか。

 幸い、わたくしには魅了の魔声がございます。

 この喉ひとつ万全なれば、うまく警備の侍女をだまくらかしてしまえば、まだ――。


「お目覚めかしら、小鳥さん」


 アレサ王女のささやき声はすぐそば、耳元より聴こえて参りました。

 わたくしの鳥獣めいたふさふさの横向き二等辺三角形な獣耳(自慢ですがカワイイですよ)に、ふーっと吐息がかかる感触に、ぞくっと背筋に電流が走るような感覚がいたします。

 左腕をベッドに繋がれたわたくしが顔だけでもと振り返れば、そこにアレサ王女のご尊顔が間近にあるではありませんか。


 アレサ王女はなにゆえか、同じベッドに横たわり、目のやり場に困るような色っぽい寝間着姿でいらっしゃるのです。まるで娼婦や恋人のような距離感で。


「ななな、何事ですかこれは!?」


「初々しいのね小鳥さんったら。かわいい女の子が大好きだって事前情報は本当みたい」


「事前情報!? 一体だれが!?」


「大競売でわたしに豊穣の角笛を売ってくれた人達よ。譲渡の折、あなたの来襲を予言していったわ。最初から警備が厳しいのも貴方の名前を神殿側が知ってたのもそのせい」


「ナルド様が……。それでその、もしやこの状況は……」


「期待してるんでしょ? 小鳥さん」


 王女の細やかで瑞々しい指先が、わたくしの鎖骨を丁寧に撫で回します。


「ひゃうっ!」


 するとまたもや電流の走ったように、不自然なまでに強くて甘い刺激が走るのです。

 いかに好色家のわたくしといえど、ただ絶世の美少女に鎖骨を指先でなぞられるだけで……。

 ……絶世の美少女、という点が性癖に刺さりすぎて説得力ない? でもホントに異常なんです。


「な、なな、何ですかコレは!? わたくしに何か仕込みましたね!」


「ご明察」


 アレサ王女殿下は嗜虐的な笑みを浮かべては、その指先でわたくしのカラダを弄ぶのです。


「あなたをわたしのペットにしてあげるわ、小鳥さん」


 すりすりと顎や喉を撫でさすられると強烈に甘くふわふわとした幸せな心地に襲われる一方、よりみだらに胸の谷間からおへそまで小川を引くように人差し指を這わされると、何とも耐えがたい。


「くひゃんっ! こ、こんなことをなさって何の目的があるのです!? わたくしの劣情を燃え上がらせたところでゾクゾクと興奮して悦ぶだけですが!?」


「……小鳥さん、そこは興奮を否定する台詞を吐いて必死に強がるべきではなくって?」

「何をおっしゃるお姫様! 裏の目的さえなくば、わたくし美しく高貴な貴方様に遊ばれるのは本望! 本懐! 本心より願いましてございます! 特にこのベッドに縛られて身動きとれないのが最高にわたくしのまぞひずむを刺激して……えふえへへへへ」


「え、なにか気持ち悪い……」


 素でドン引きされてしまいました。ガーンでございます。

 いやしかし、意外です。アレサ王女はどこか気取っている、己を演じている言動ばかり。支配者たらんと努めているのでお若い年相応の言葉遣いは初めて耳にしました。

 それは彼女にとってもいささか失敗だったのか、こほんと咳払いして元の調子を繕います。


「ふしだらな小鳥さんを籠絡して心を奪い、支配するのよ。冥府の神々を地上に招くには貴方のような“基点”が必要不可欠。わたしの配下にしてあげる。相手側の手駒を奪い取ることは妨害と強化を兼ねる。一石二鳥よ」


「ぬが! 今、一石二鳥と……! わたくしを本気で欲するでもなく、片手間に手に入れようというのはいささか聞き捨てなりません!」


「残念だけれどその片手間でこれから支配と隷属を受け入れることになるのよ、小鳥さん」


 アレサ王女の愛撫に、わたくしは言ったそばから「くぅん」と甘くうめいてしまいます。


「抵抗は無駄。小鳥さんはわたしの従順でかわいいペットになるの」


「きゃぴっ!」


 支配と魅了。

 父王アドニス譲りの、半神としてのアレサの権能の力がいかに恐ろしいものか。

 ささやき、触れられるたびに、ぼんやりと霞がかってゆく頭。当初はごほうび等と軽くみていたわたくしも、次第に拷問めいたアレサの甘い誘惑に余裕をなくしていきます。


「侍女たちが見ているわ。貴方のあられもない声に顔を真っ赤にしてる。きっとうらやましいのね。このわたし、豊穣の女神アレサの寵愛を受ける貴方のことが」


「やぁん……っ! み、見ないでくださいましっ!」


 わたくしの奏でる艶声に、警備の侍女たちは確かに釘づけになっている様子でした。

 魅了の魔声。

 わたくしの人の心を惑わせる魔性に影響されると時に女神さえおかしくなるのです。並みの人間であれば耐えがたいのは必定です。


 それでも目視以上の行動を起こさず配置を動きもしないのは、当人達の資質や侍女としての職務意識だけでなく、同時にアレサの支配の力も働いているためでしょうか。


「さぁ堕ちなさい、カラット・アガテール」


「あっ、はぅっ! やめてくださいまし! これ以上は、もう、わたくし……っ!」


「ふふっ、次はどこをさわってほしい? 羽根? おでこ? おなか?」


 高貴な指先、妖艶なささやき。

 わたくしは辛抱たまらず、欲望に負けてつい、叫んでしまいます。


「おねがいです、どうか……! わたくしの■■■■をぜひその指先で……!」


 まさに陵辱の限りでございます。

 わたくしは焦らすように核心を避けるアレサ王女の責めに耐えきれず、ついに哀願しました。

 とうとう一線を越えようというおねだりに、見守る侍女達も息を呑みます。


 するとアレサ王女様は邪悪そうに微笑んで、こう言葉します。


「■■■■って、どこ?」


「ふえ?」


 今、なにかすごい違和感がありました。

 完全にもうダメだと期待して、けほけほ、絶望しかけていたわたくしは戸惑います。


「ねえ教えて小鳥さん、それは一体どこ? ここ?」


「ひゃんっ! そこはおへそでございます! わざと焦らしていらっしゃるので!?」


「わざとも何も、わたしは■■■■なんて初めて聞いたのだけれど」


 沈黙のひととき。

 わたくしは侍女の皆さんにさっと視線を送ります。


『え、マジですか』


『マジです』


 と言外のやりとりで疑惑は確信に変わりました。


「……アレサ王女殿下、もしや、貴方様はこのように支配の権能を行使なさるのは初めてでは?」


「うん? そうね、動物や魔物以外を撫で従えるのは初めてよ。大半の人間は触れるまでもないわ」


「……わたくしのこと、ペットにしようと思ってます?」


「ええ、そうよ。ペガサスナイト達のように懐かせ、支配する。そのつもりだけど」


 王女様は妖艶な言葉遣いを途絶えさせることなく、そうおっしゃいます。

 しかしわたくしの耳にはもう、そのウソ偽りに満ちた上辺だけの言葉は通用いたしません。


 だってこのお姫様――。


 ■■■■も知らないえっちワード初心者だったんですから。


 いやー盲点でした。

 絶妙な指使いに言葉責め、てっきり閨事に通じる英才教育でも受けているのかとばかりに。


 この方、天然の原石です。

 まだ穢れを知らない初心な乙女だったのでございますよ。

 アレサ王女様はペルセフォネ様の娘。そのエロさも親譲りだという先入観が罠でした。


「し、失礼ながらお尋ねしますが、赤ちゃんはどうやって生まれてくるかをご存知で」


「無論よ」


 アレサ王女は胸を張って、威厳高く申します。


「我が祖アドニスは霊樹ミルラのうろ穴より生まれ、冥府の鳥に運ばれた。人は霊園の畑で生まれ、鳥が赤子を運んでくる。それが摂理よ」


 王女当人は理路整然と神話になぞらえて答えているつもりなのでございます。

 ああ、無理もありません。


 一体だれがお姫様に■■■■なんて放送禁止用語を詳しく教える勇気があるというのですか。


 というかその神話のコウノトリ、たぶん前世のわたくしです。


 神話的発想で考えると絶対ありえないともいえないのが困ります。

 いや、それ以上に困るのは……。

 わたくしは侍女の皆さんに『■■■■について教えても?』と尋ねると『絶対にダメ』と睨まれてしまいます。神聖不可侵領域だと。


 ……あれ?

 ということはわたくし、生殺し確定では?


 え、ここまで愛撫されまくって快楽に身を落とす覚悟完了してたのに、おあずけ?

 わたくし性欲を持て余してならないのですが!?


「次はどこを撫でられたい? ふふっ、わたしのかわいい小鳥さん」


「いやぁぁぁー!? 楽に! いっそ楽に! 一思いにイかせてくださいまし!」


「ダメよ、どこにも行かせないわ」


「ぴゃあーーーっ!?」


 かくして青空が夕暮れに染まるまでの一時、わたくしは過酷な拷問に耐え忍ぶのでした。

 ハァハァと悶え苦しむわたくしを、アレサ王女は心折れるまで服従せよと愛撫するのです。

 しかし、わたくしはおかげで新たな境地に至ります。


『ロリ無知責めおあずけプレイ』


 ああ、このまま闇の快楽に堕ちるのも一興か――。

 長時間の責め苦に、わたくしのココロとカラダは限界に達しつつありました。二重の意味で。

毎度お読み頂きありがとうございます。

お楽しみいただけましたら、ブックマーク、感想、評価など格別のご贔屓をよろしくおねがい致します。

悪の王女様の手により過酷な洗脳調教を受けたカラットは身も心も堕ちてしまうのか!?

待て、次回!

今後ともよろしくおねがい致します。

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