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ふしだら百合バードの女神コネクト ~わたくし冥府の使いにかこつけて魅了チートで女神様たちを口説いてまわりとうございます  作者: シロクマ
【C章おまけ】登場人物紹介、外伝など

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EX02.アマルテイアの角、豊穣の角笛コルヌ・コピア

EX02 外伝エピソードになります。

章管理調整のため、掲載位置を変更調整いたしました




 アマルテイアの角という伝説のアイテムを皆さんはご存知でしょうか。



 豊穣の角笛コルヌ・コピア。


 収穫の円錐。



 いくつかの名で呼ばれ、いくつかの伝説に登場いたしますこれなる宝物は、食と豊かさの象徴として親しまれ、今日でも様々なシンボルに用いられております。


 感謝祭や収穫祭にとりわけ目にするコルヌ・コピアは、植物で編まれた角形の籠に農作物が満たされた形で表現され、自由自在に食物を生み出すことができるとされているのでございます。



 ああ、なんと夢のある伝説のアイテムであることか。


 色彩豊かなぶどうやリンゴ、南の地ではバナナやマンゴー、とかく羨ましい限りにございます。



 古今東西の豊穣を司る神様もこれを象徴として有するとされることがしばしばあり、コルヌ・コピアがいかにして産まれたか、誰が所有するかには諸説がございます。



 例えば、大英雄ヘラクレスと川の神アケラスが戦い、圧し折られた角がコルヌ・コピアになったという説がありまして、いやはや、どこにでも顔を出されるのが人気者ヘラクレスらしいですね。


 この両雄、デーイアネイラという王女様を巡って求婚バトルを繰り広げたのでございます。



 川の神アケラス、またの名をアケローオス。


 この方は西方の雄大なる大河アケローオス川を司る河神でして、大英雄ヘラクレスにも負けず劣らず素晴らしい戦いぶりを見せるのでございます。



 変幻自在の変身術にてにょろりと大蛇に化けてぎちぎちと締めつけ、巨大な魚に化けては脚に噛みつき、大地を揺るがす雄牛に化けては強烈な突進を浴びせてヘラクレスを追い詰めるのです。



 さりとてヘラクレスも天地無双の英雄にございます。


 数々の変身に翻弄されまするが、ついに雄牛に化けたアケラスの角をですね。


 その絶大なる膂力によって、パワー炸裂! 雄叫びをあげながら角をへし折ってしまうのです。



 すわっ! 大変です!


 多大に流血した川の神アケラスは敗北を認める他なく、川の中へと逃げてゆきました。



 この流血が川を通じて海へ辿り着き、かの有名な魔性の歌声で知られる怪物セイレーンの誕生秘話につながるのでございます。


 あ、セイレーンは元々ペルセフォネ様の部下だったとか、アケラスの娘として普通に産まれたとか、別説もありますが、そこはまぁ神話なので誕生秘話が三つ四つあるのはよくあることです。



 こうしてポッキリ折れた川神の角こそ、後の豊穣の角笛コルヌ・コピアでございます。


 そして無事、ヘラクレスは三番目の嫁としてデーイアネイラと結婚いたします。



 いやーめでたしめでたし。


 なお、デーイアネイラという名は「汝の夫を殺せし者」といいまして、きっと後々にそう呼ばれたという話なのでございましょうね。


 彼女が原因となってヘラクレスは毒で死ぬことになりますので、この求婚バトルが盛大な死亡フラグだったのでございますから運命とは皮肉なものにございます。








 さて、皆さまお気づきでしょうか。


 この「コルヌ・コピアはアケロスの角」説ではひとつ説明できないことがございます。


 今回のおはなしは「アマルテイアの角」なのに、今しがたの話では「アケロスの角」なのです。



 おや、おかしいですね。


 そうそう、お察しの通り、豊穣の角笛コルヌ・コピアには「アマルテイアの角」というもうひとつの誕生秘話があるのでございます。







 時は遡ること大昔。


 大英雄ヘラクレスと川の神アケラスの戦いよりずっと昔のことにございます。



 なぜ大昔かと申せば、これはヘラクレスの父ゼウスがまだ幼少期の頃のおはなしだからです。



 神々の王ゼウス。


 ゼウスの誕生は、当時の神々の王にして父親である農耕神クロノスにあわや飲み込まれる大ピンチからはじまります。


 産まれたばかりのわが子を食べて己が内に閉じ込めようとは酷い父親もあったものですね。



 農耕神クロノスは予言によって我が子に権力を奪われるといわれたことを恐れて、ハーデスやポセイドン、デメテル等の神々を次々と生まれるたびに飲み込んでしまったのでございます。



 何をそこまで恐れるのか。


 というのは農耕神クロノスの生い立ちにヒミツがあり、彼は原初の天空神ウラノスという父親のアレを鎌で切り落としてしまうことで神々の王の座を奪ったのでございます。


 かつて父親にやったアレを息子たちにやられるぞと予言されたらそりゃー必死にもなります。



 ……いやいや、我が子に殺されたくなけば子作りしなければよいのでは?


 それはイヤと申されますか、クロノス様。



「ムラムラしてヤッた。反省はしていない」



 ……まぁ、お気持ちは察しますとも、ええ。



 こうして農耕神クロノスはアレを死守すべく末子のゼウスもまた飲み込んでしまいました。


 あれ? それでは話が終わってしまいますね?



 いえいえご安心を。


 なんとこの時、ゼウスの母レアーは一計を案じて赤子そっくりの石を父クロノスに飲ませます。



 こうして一難が去ったものの、母レアーのそばで育てるのは危険すぎます。


 そこでまた女神レアーは賢いことに妙案を思いつくのでございます。






 白羽の矢が立ったのは牝山羊のアマルテイア。


 とある島の洞窟に匿われた赤子のゼウスはこの地にて牝山羊のアマルテイアの乳で育ちます。



 つまり偉大なる神々の王ゼウスの乳母、育ての親こそアマルテイアなのです。



 ……ヤギ?


 ヤギですとも。



 これまた諸説ありますという話ですが、今回は「アマルテイアこそ育ての親」と致します。


 ゼウスの世話役は精霊だったという説があり、その場合は……。




①「アマルテイアという名の精霊が飼っていた牝山羊の乳を与えた」


②「精霊や現地民たちが飼っていたアマルテイアという名の牝山羊の乳を与えた」




 つまり、牝山羊の飼い主こそアマルテイアなのか、はたまた飼われている牝山羊こそアマルテイアなのか、ここがはっきりしないのでございます。


 しかしながらいずれにしても後に神々の王となったゼウスが感謝したのは牝山羊でした。



 飼い主の精霊ではなくて、牝山羊が最大の感謝を受け、天上の星々に煌めく山羊座になるのです。


 これはおかしな話でございます。



 もし皆さんが農家の家に異世界転生でもして産まれ育ったとして、なぜ農家の父母ではなく乳牛に恩返しをしようと考えるに至るというのですか。


 これがアマルテイアは単なる家畜ではなく、育ての親だったと考えれば自然なことです。


 そう、牝山羊アマルテイアと飼い主の精霊アマルテイアは同一人物だったのでございます。





 さて、アマルテイアという精霊はいかなるものか。


 神話における精霊とは、おおよそニュムペーという下級の女神であり美しいのが常です。



 美しき自然の化身たる乙女と考えれば、精霊が美しいのは必然でしょう。


 さりとてアマルテイアは牝山羊でもありますので、美しい乙女にして乳の出がよい山羊なのです。



 そう、モンスター娘ですね。


 これはもう完全にモンスター娘ってやつでしょうとも。



 年端もいかぬ男の子とおっぱいを与えるお姉さん。


 ケモママおねショタ授乳ですね、はい。



 


 生真面目な一部の皆さんは「そんな訳あるか!」と言いたいでしょう。


 しかしアマルテイアのケモおねショタが後々のゼウスの性癖に影響を与えた証拠がございます。



 神々の王ゼウスの夜伽話は山ほどありますが、そのうちに動物に変身してアプローチを掛けるおはなしは枚挙に暇がないのでございます。


 わたくしの勝手な推察も含むとはいえ、このアマルテイアのヤギミルク授乳が性の目覚めだった可能性は大いにあります。



 しかもゼウスがおおっぴらに世に出るのは成人して以降、それまでは洞窟暮らしでございます。


 神話の時代の成人年齢は皆さんより若いとして、それでも短くて十二歳くらいまでは洞窟でアマルテイアのヤギミルクを堪能していたことになります。



 十二年間もヤギおねえさんとおっぱいのんでねんねして、でございますよ。



 うらやましい。


 うらやましいとは思いませんか。



 豊満なる肢体、白無垢の被毛、ほの甘いヤギ乳、一心に注がれる愛情……。



 いいなぁ!


 ケモママおねショタ授乳ずるいなぁ! でございますよホントにもう。



 さて、このアマルテイアという牝山羊の角は片方が折れていた、もしくは後に折れました。


 豊穣の角笛コルヌ・コピアの原型であるアマルテイアの角は、自在に食物を生み出せました。



 花や果実を無限に好きなだけ生み出せる山羊角――。



 なんて素晴らしいものでございます。


 でもなぜ山羊の角にそんな力が宿るのか、不思議には思いませんか。



 なにせ、作物を作り出すというのは農耕の力、つまりは農耕神クロノスと同じ権能なのです。


 しかしじつはクロノスの妻にしてゼウスの母であるレアーもまた、豊穣を司る大地の女神でした。



 レアーの代理として育ての親を担った精霊が、レアーの加護を授かっていたとして不思議ではありません。アマルテイアだけでなく、レアーもまた我が子を慈しみ、育てたのです。





 それはそれとして、コルヌ・コピアがあったからといって山羊乳が不要だったわけでもなく。


 無限に好きな食べ物が選べたのに、それでもヤギミルクを堪能しているのですね。


 そこには神聖な特別な意味があったのかもしれません。



 あるいは、察しの良い皆さんはおわかりでしょう。


 乳離しがたい幼子の心理というものを――。





 かくてアマルテイアの愛情を受け、幼きゼウス少年はすくすくと育ちます。


 そして農耕神クロノスに下剤を飲ませ、ポセイドンやハーデスを救出、神々の王となります。


 それもこれもケモママおねショタ授乳のおかげなのでございます。


 母の愛は偉大ですね。




 


 ありとあらゆる邪悪や災厄を払い除ける至高の盾「アイギス」。


 その表面には亡きアマルテイアの皮が用いられているといわれております。


 そもそも「アイギス」とは山羊革を用いた防具全般を意味する言葉なのだとか。


 皆さまの知るところでは、イージス艦などの語源がこのアイギスなのでございます。





 豊穣の角笛コルヌ・コピアを生み出し、山羊座として天に輝く。


 至高の盾アイギスとして主神を守り、また戦女神アテナに貸し与えられて大活躍をする。



 牝山羊アマルテイアの愛をいかにゼウスが、そして詩人たちが重んじたかが伺い知れるようです。


 皆さまもご興味が湧きましたら、ヤギの乳製品なりヤギ牧場なりをぜひお楽しみあれ。


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