四話
「シュッシュ!」
どうもこんにちわ、アリア・シュゼリクスでございます。
ただいまシャドーボクシングの最中です。
この世界には魔物や盗賊など危険な存在がいることをしって
こうやって敵をイメージして練習しているのです。
「えい!やぁ!」
私の可愛いパンチが空気を切る音が部屋に響く。
「アリア様、一体何をしているのですか?」
「ビックリした!」
驚きのあまり声が出てしまった。
いきなりメリッサが私の後ろに現れたのだ
「見てわからない?修行だよ?」
メリッサは呆れたような顔をする。
失敬なメイドである。
「それは見れば分かります、
私が言いたいのはなぜ急に修行をし始めたのかということです」
メリッサは鋭い目つきで私を睨んでくる。
「え?だって強くなりたかったんだもん」
私は当たり前のことのように答える。
「お嬢様は私が守ります。ですのでそんなことする必要はありません」
「いいじゃん別に、それに強くなっておいて損はないと思うけど?」
元男の身の私としては守ってもらうより守る存在になりたいと思うのだ。
それにこの世界ではいつどんなことが起こるか分からない。
「確かに強くなられるに越したことはありませんが、
お嬢様に傷ついて欲しくはないのでございます」
「大丈夫!私には秘策があるんだよ!」
そう言って私はうずくまる。
「ううっ……」
「お嬢様…?どうなかされたのですか!?」
「メリッサ…胸が……」
「胸がどうかなされましたか?」
メリッサは心配になり、私の顔を覗き込むように見る。
「隙あり!」
メリッサに抱きつこうとするが…
「お嬢様、甘いです」
メリッサは私の動きを見切っていたかのように回避し逆に私を拘束した。
「くそー負けたー」
メリッサには秘技カワイイフェイントは効かないようだ。
「まだまだですね、お嬢様」
「うぐぅ……」
私は悔しさに歯噛みするが、今の実力差を考えれば仕方がない。
「お嬢様強くなりたいのでしたら私が稽古相手になりましょう」
「ほんと!?やったぁ!」
私は嬉しさに飛び跳ねる。
「しかし、あくまで基礎的な部分だけです、
本格的な修行は奥様の許可がおりてからです」
「わかってるよ!それで、いつから始めるの?」
「そうですね、明日の朝あたりから始めましょう」
「わかった!」
こうして私の新たな目標ができたのであった。
そして、私はいつも通り朝食を食べに食堂へ向かった。
「美味しい……」
今日もご飯がとてもおいしい。
前世でも毎日自炊していたので料理を作ること自体は得意だが、
やはりプロが作るものは別格だ。
今日も残さず全部平らげてしまったなと思いながら
お父様の書庫へ勉強のために向かっていると
ソフィアさんが時間より早くやってきていた。
「ソフィアさん、おはようございます」
「弟子よ、おはよう」
「お早いですね?何かあったのですか?」
「あなたにどの魔法を教えようか考えていたら
居ても立ってもいられなくてここに来てしまっていたわ」
師匠は他にすることがないのか…?などと思っていたら
「お嬢様はこれから旦那様の書庫で
座学の時間でございますので魔法の訓練はまた後にして下さい」
メリッサが笑っているような笑っていないような表情で言う。
「そうなの?それじゃあ魔法の座学でもしましょうか?」
どうやらソフィアさんは私に魔法を教えるつもりらしい。
メリッサと目が合いゆっくりと頷く
「はい、よろしくお願いします」
今日の座学は魔法についてに決定した瞬間だった。
「まず魔術に出来て魔法に出来ないことはない!
これだけは必ず頭に入れていてほしいわ!」
「この世の中魔法という特別な力を尊重しないで
魔術が蔓延る世界になったのは何故かわかるかしら?」
「それはね、魔術はどんな小さな魔力でも
魔力さえもっていれば魔術を行使できる」
「それ故に魔術師は魔術こそ万民を救う力などと宣伝したのよ」
「そしてその噂を信じた愚か者共が魔術師に群がり始めたのよ」
「今やどこの王族も魔術師を宮廷へ就かせて魔術研究を始める始末」
「そして魔術をもって戦争を仕掛ける国が後を絶たないわ!」
「これが魔術が広まった結果の現状よ」
「あの……なんでそんなに怒ってらっしゃるんですか?」
私は恐る恐る聞く
「魔法こそが……正義だからよ!!」
ソフィアさんのテンションがおかしい。
なんか変なもの食べたんじゃないだろうな?
「お嬢様、失礼なことを考えているとわかります」
メリッサは私の考えを読んでくる。
「まあいいわ、とにかく魔法こそ素晴らしい力なのよ」
「魔術は決められた術式を詠唱することで
決められた魔力が消費され決められた力が生まれる」
「しかし魔法は内に秘めた魔力を自らの意思によって
具現化し使用した魔力を超える力が生まれてくるのよ!」
「魔術が科学だとすると
魔法は神の御業に近いのよ!どう?凄いでしょ?」
「はい、すごいです!」
私は目を輝かせる
「わかってくれればいいのよ、
ただし魔力を具現化出来ない限り何も起きなかったりするけど、些細なことね」
なんかすごい不吉なことをさらりといいやがったぞこいつ
「魔力にも種類があるの具現化しやすい魔力としにくい魔力とね…
魔力が具現化しにくい人でも、魔力の量が人より多い人は
魔法の訓練をすることが出来るわ。
それでも魔法を具現化出来ずに魔力をただ浪費し続けて
無力感から魔術へ逃げるものばかりの難しい技術ではあるわ」
「でもあなたは、私の魔力に触れたときすぐに魔力が
どのようなものかイメージして感知した。
それはとっても魔法を習得する素質があるってことなのよ」
「え、そうなんですか!?」
「つまり!この才能を無駄にしてはいけないわ!」
「はい、頑張ります!」
「分かってくれたようね。それでは魔法の訓練をしましょうか!」
そういうとソフィアさんは私の手を取り部屋を出ようとする
「お待ちください、まだ座学の時間です」
「むう……」
メリッサはソフィアさんを止めてくれたようだ。
「それでは弟子よ、何か魔法の質問はある?」
「魔法と魔術との違いは判りました。
そこで魔術が出来なくて魔法に出来ることって何があるのでしょうか?」
「良いところに気がついたわね、いいでしょう答えましょう」
ソフィアさんは胸を張って答える
「魔術は決められた術式を使い決まった威力の魔術を行使する」
「それに対して魔法は術式などは存在せず己のイメージで世界を改変するのよ」
「例えばすでにある火を爆発させたりコップの水を凍らせたりできるのよ」
「なるほど……」
質問は以上かと聞かれたので最後に一つだけ聞きたいことがあるので聞いてみた。
「美容の魔法などあるのですか?例えば肌がきれいになるとか、顔に出来た傷を癒すとか」
ソフィアさんは顎に手を当ててしばらく考える
「弟子よ、魔法で人の身に干渉することは不可能よ
傷を癒す魔法…もし、そのようなことが本当にできたとしたら、それは奇跡よ」
「そうですか……」
私は残念な気持ちになる。
癒しと可愛さを届けるヒーラーとか最高だと思ったんだけどなぁ……。
「それじゃあ、お嬢様、私は奥様のところに行って参りますので」
メリッサはそう言うと私の部屋から出ていった。
「よし、今日は魔法の訓練をするわよ」
ソフィアさんは笑顔で言う。
「はい、お願いします」
こうして私はソフィアさんと魔法の訓練を開始するのだった。




