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第8話 第一皇子、導名雅(みちなが)。

「これはわたし達、宇宙宮皇族の長兄であられる導名雅みちながお兄様…ご機嫌麗しいですわ。でも教養に優れるとは言え荒事には不向きなお兄様が、何故こんな辺鄙な星に参られたのですか?」


 わたしは皇族の雅な言葉で導名雅みちながに言葉をかける。


「ははは、白々しいね瑠詩羽るしは。私がここに来た理由なんて一つしかないだろう、愛しい我が妹をこの地で永遠に安らかに眠らせる為さ」


白極星王殿はっきょくせいおうでんファレンザン』から百余りの光球が放たれた、その中から鋼の巨人が姿を現す。



「姫様、あれは最新鋭の自立式人型機動兵器オートアーマー、『フレイア』ですな。まだ完成したてと聞いてましたが既に第一皇子の宇宙船ふねに配備されていたとは」


「ははは、瑠詩羽。このフレイアは君の持つ『シルフィア』を上回る性能の次世代機だ。そして君のシルフィアは眼下のベイ国の制圧に幾らか出ているから数の面でもこちらが有利。

まずは君の機動兵器を排除して丸裸にさせて貰うよ」


「ふふふ、尊敬すべきお兄様。妹を剥かれるなんて下品ですわよ。…エドガン、シルフィアのメンテは万全ですか?」


「あいよ姫さん、こちとら万事オーケーだぜ!」


「ヴァーンニクス、格納庫ハッチに残ったシルフィアを全機発進! フレイアを迎撃なさい!」


「了解、マイマスター!」


 覇帝姫宮殿要塞はていききゅうんでんようさいヴァーンニクスの下部から光の球体が70程排出された。

 その中から現れた鋼の巨人シルフィアは編隊を組むと、こちらに向かってきた120機余りの鋼の巨人フレイアとぶつかった。

 2種の人型機動兵器は光線砲ビームカノン、空間跳躍機能、亜光速移動、防御光壁ライトウォール、次元剣、空間切取砲デジョンカノンと互いの兵装を臨機応変に使用して相手を駆逐しまいとする。


「…何故だ! 性能も数も私のフレイアが圧倒的なはずなのに何故押し切れない、いや、徐々にだがこちらが押されている!?」


「お兄様、わたしのシルフィアは宇宙一のメカニックであるエドガンが整備した機体ですわ。少々性能や数が劣っていても問題ありませんわ」


「…ば、馬鹿な! あれだけの開発費と資材を投じて作り出した最新鋭機が機体もメカニックもロートル風情にッ!?」


「いえいえお兄様、エドガンの手で300パーセント性能を引き出されているシルフィアにあれだけ渡り合うフレイアの性能は見事ですわ。幾つか鹵獲ろかくさせて頂いて、わたしのほうで有効活用させてもらいますね」


「お、おのれ! 我が忠実なる配下、『白極五将星はっきょくごしょうせい』、『導名雅直属軍8万』出陣せよ!

ははは、瑠詩羽は配下の『覇帝姫八天将はていきはちてんしょう』、『覇帝姫直属軍10万』は父上に獲り上げられて居ないのだから流石にこの戦力を相手にしてはひとたまりもあるまい!」


「ハクリュウ、空也を護りなさい。そちらに敵が向かった場合は全て任せますよ」


「姫様、御意」


「我が配下よ、かかれ! 瑠詩羽を討ち取るのだ!」


「覚悟されよ! 瑠詩羽姫!」


 導名雅の直属の5人の配下、白極五将星の一人がわたしに槍斧を振り下ろしてきた。わたしは右手を差し出してその一撃を受け止めて見せた。


「なっ!? 我が豪槍の一撃をそんなにたやすく?」


「白極五将星、確かあなた達…わたしがグランディアスから追放される時に口汚く売女ばいたの娘とか罵っていましたよね。

わたしは耳が良いですから丸わかりなのです。わたしの悪口だけならいざしらず母上を悪く言うなんて許されませんよ…燃えなさい!」


 わたしは掴んだ槍斧を握りしめた。わたしの怒りの超々高熱でそれは飴細工の様にそれはひしゃげ、その熱は瞬く間に槍斧の主に伝わってその身は一瞬で蒸発した。


「うおおおお!」


 目の前で同僚が一瞬で焼き払われた事に驚きの表情を浮かべながらも、手にした槍を構えてこちらに向かってくる二人目の白極五将星。


「その果敢ぶりに褒美を上げましょう、受け取りなさい!」


 わたしは蒸発した白極五将星の遺品である焼きただれた槍斧を向かってくる相手に投げ込んだ。その腹に大穴が穿かれて、そこから衝撃波が巻き起こってその身体は四散し消滅した。


「導名雅様の直属軍8万、我等と力を合わせよ! 共にこの逆賊の姫を討つのだ!」


 残った3人の白極五将星は戦法を改めて、8万の軍と共同でわたしを攻撃する。

 3人の将星の近接攻撃と8万の軍のエネルギー弾攻撃とで、わたしに襲い掛かって来た。

 わたしが将星の攻撃を全ていなして反撃しようとすると横から8万の攻撃が飛んでくる。

 流石にこの数は煩わしい。

 わたしは視覚範囲内の8万の軍を”視た”。瞳に破壊の意思を込めることによって、わたしが視た敵性体全てに破壊の意思が伝わって事象として具現化する。

 だが、流石は導名雅の直属の軍、この星の機動兵器の様に脆くはない。”事象防壁”を展開してわたしの破壊の意思を防いで見せる。

 だがいつまでも耐えられるものではあるまい、わたしは3人の将星の攻撃をいなしながら8万の軍を視続けた。

 やがてその何人かの兵士が爆ぜて消え始めた。その破壊の連鎖は広がって幾ばくもせずに8万の軍は瓦解した。

 こうなってしまえば最早何の問題もない。

 わたしは裏拳を襲い掛かって来た将星の胸に叩き込んだ。上半身に大穴が空いたそれに向け手をかざして完全に消し飛ばすと、背後から斬りかかってきた将星に蹴りを見舞う。

 その者はそのまま吹き飛んで爆散した。最後に残った将星は剣を構えて斬撃波ざんげきはを見舞った。

 わたしは右手を振るい斬撃波を打ち払うとそのまま将星の至近まで跳んでその腹に掌底しょうていを見舞い、その身体を粉々に吹き飛ばした。

 このわたしに接近戦を挑んできた命知らず達だったが、その勇気は称するべきであろう。


「馬鹿な! 私の『白極五将星』『導名雅直属軍8万』がこんなにたやすく!? …だが私にはまだ奥の手がある!

出でよ、我がテクノロジーと資金をありったけ注ぎ込んで蘇った! かつて第94宇宙ファーズ銀河を支配した機械仕掛けの女神の一柱、『フレイヤル』よ!」


 白極星王殿ファレンザンからひとつの光球が放たれた。

 そして一体の朱色の鋼の巨人が姿を現す。

 それはフレイアを遥かに凌ぐ速度で飛ぶと、こちらのシルフィア数機を瞬く間に消散らした。


「損壊率50パーセント以上…撤退シマス」


 損壊したシルフィアは自己判断でヴァーンニクスの格納庫ハッチに次々と空間跳躍して撤退する。


「なるほど…第94宇宙ファーズ銀河大戦でわたしたち宇宙宮皇族連合軍が倒したあの4柱の機械仕掛けの女神、そのうちの1柱の炎の女神をお兄様の技術で可能な限り再現したのですね!

これは流石にシルフィアでは歯が立ちませんね。でしたらエドガン、こちらも『女神』を出しなさい!」


「了解、姫さん! シルフィア75号機の次元封印を解くぜ! 女神型機動兵器ヴァルキリーアーマー『シルフィール』、機動!」


 フレイアと戦っていたシルフィアのうちの1機が輝いてその装甲の全てが変化し、白緑に輝く機体が現れる。


「この覇帝姫、瑠詩羽が命じます! 『シルフィール』、そのまがい物の機械仕掛けの女神を討ちなさい!」


「了解しました、我があるじ


 シルフィールは超光速で飛んで瞬く間にフレイヤルとぶつかった。

 空間次元跳躍機能、超光速移動、絶対防御光壁、超次元剣、空間消滅砲と互いの武装を仕様し相手を滅ぼさんとする。

 やがてフレイヤルが圧され、その装甲が徐々に壊れていく。


「そんな馬鹿な! フレイヤルは限りなくオリジナルを再現した機体だ! こんなにたやすく圧される筈が…」


「あはは! だってお兄様、こちらのシルフィールは第94宇宙ファーズ銀河大戦でわたしに負けて消滅寸前だった風の女神のオリジナルを回収して、再生させて配下に加えた本物の機械仕掛けの女神ですもの。

あなたのフレイヤルがオリジナルのフレイヤルを100パーセント再現できなかったのであれば、オリジナルであるシルフィールに勝てる訳はありませんわ!」


「おのれ! 瑠詩羽ッ! ならばこの私自らお前を討ってみせる!」


 導名雅はいかにも文官風情のその容姿に似つかわしくない全身鎧姿に剣と盾を構えてわたしに向かってきた。


「私は『宝具蒐集家レジェンドコレクター』。このあまねく宇宙のあらゆる宝具を収集するだけでは無い、この様に使いこなすことが出来るのだ! 喰らうが良い瑠詩羽、『大聖剣アークカリバー』!」


「!?」


 凄まじい威力の斬撃波が放たれた。この威力はまともに受けては危険とわたしの感覚が告げる! わたしは咄嗟に空間跳躍でかわす。

 大聖剣が起こした斬撃波はプレジテントハウスがあった巨大な穴に深々と喰い込んで、その底が全く見えない峡谷の様になった。


「瑠詩羽、空間跳躍で逃げてもこの『先読みの兜』があればその跳躍先が予測できる! そこだ!」


 導名雅の突き出した大聖剣が空間跳躍したわたしを適格に捉える。わたしは身を逸らし間一髪これをかわした。


「ははは、この『大英傑の鎧』は装備したものに戦いの加護を与え、身体能力を飛躍的に高め戦い方をも教えてくれる。瑠詩羽! 君の動きが手に取るようにわかるよ!」


 凄まじい速さの剣の連撃、わたしは両手を振るい大聖剣をさばき切る。

 確かに宝具の力で導名雅は飛躍的に強くなっている。だが防御面はどうだ?

 わたしは導名雅の腹に向けて蹴りを見舞った。だがそれは彼が構えた盾によって防がれた。


「ははは、その程度の力ではこの『ヤタの盾』を抜くことは出来ないよ瑠詩羽。そしてこの盾には更なる能力がある、『反射』だよ!」


 がごおん! と凄まじい音と共にわたしの蹴りのエネルギーが盾から放たれて、大きく跳ね飛ばされるわたし。

 そこへ導名雅は間髪入れず飛び掛かり追撃の剣を振るう。

 わたしは右腕を盾にしてその一撃を防ぐが、斬られた箇所から血が流れ出していた。


「ははは! やったぞ! あの瑠詩羽に傷をつけてやった! 私は宇宙宮皇族の第一皇子、導名雅! 私こそが宇宙覇帝の次帝にふさわしいんだ!」


「ふふ、やってくれますねお兄様。…ならわたしも少しだけ本気を魅せてあげますね」


 わたしは自身の腕から流れ出る血を舐めとると、獲物に狙いを定めた獅子の様に瞳を細めて導名雅を見据えた。


「ははは、負け惜しみかい瑠詩羽。大宇宙のあまねく宝具を使いこなすこの私に勝てる訳が…ぐぼぉあッ!」


 わたしの次元を超えた速度の拳の一撃が導名雅のみぞおちに深くめり込んだ。


「ば、馬鹿な…全く見えず反応できなかった…ぐがあッ!」


 次元速度で導名雅の頭上の宙に移動したわたしが両手を組んで殴りつけた一撃が、導名雅の兜を叩き割ってそのまま吹き飛ばし地面に叩きつけ、その衝撃波で巨大なクレーターを作り上げた。

 わたしは一瞬で導名雅の元へ飛ぶとそのまま馬乗りになり両手を振るって嵐のような連撃を叩き込む。


「う、うあああああ!」


 導名雅は恐怖に顔をこおばせながら必死に盾を構えわたしの攻撃を防ぐ。


「な、何故だ! なぜ反射の力が発動しない! 何故、瑠詩羽は吹き飛ばない!?」


「あはは! それはですねお兄様! わたしの拳の一撃以上にわたしが頑丈だからなのですよ! ちょっと踏ん張ればわたし自身の力でわたしが吹き飛ぶ道理はないのです!」


 ばきゃあ! と音がして導名雅の構えていた盾が粉々に吹き飛んだ。わたしの猛連撃を受け続けては例え伝説の宝具の盾とて耐えられるわけはない。


「あああああ!!」


 導名雅は大聖剣を突き出して来た。わたしは身をひるがえしてその一撃をかわす。


「フレイヤル! フルパワーだ! 私の大聖剣と同時攻撃で瑠詩羽を討つ!」


「了解シマシタ、我がアルジ!」


 フレイヤルはその手に持った巨大な大剣をわたしに向けた。だがシルフィールの大剣の一撃がフレイヤルを吹き飛ばす。


「偽物の女神よ、貴女の相手はこの私です」


「シルフィール、そのまがい物はわずらわしくなってきました。『風凰翼形態ウィンドバード』で一気に止めを!」


「了解です、我が主」


 シルフィールの手足が組み替わり翼が広がって巨大な鋼の鳥の姿に変形した。

 それは瞬く間に空に舞い上がると凄まじい速度でフレイアルに向けて降下した。


「あはは! お兄様、その様子だとそのまがい物のフレイヤルは『炎凰翼形態フレイムバード』を再現出来なかったようですね。それでは本物の女神に勝てる訳がありませんよね。それではごきげんよう、まがい物の機械仕掛けの女神様!」


 まがい物のフレイヤルは本物のシルフィールの風鳳翼形態に粉々に斬り裂かれて跡形も無く消し飛んだ。


「瑠詩羽ああああ!!」


 導名雅は大聖剣を振りかぶる。わたしはそれを白刃取りで受け止めるとそのまま大聖剣をへし折って、両手に挟んだままの大聖剣の刀身をそのまま導名雅の胸に突き刺した。


「ぐあああああああ!」


 導名雅の絶叫が周囲にこだましました。




「がふっ…あ…ああ…私は…負けたのか…」


「ねえ、お兄様、どうしてわたしに戦いを挑んだのですか? わたしは別にあなたと戦うつもりは無かったのですよ」


「…な、何を…今更何を言うんだ瑠詩羽…君は第一皇子で長兄である私を差し置いて…次帝に成ろうとして居ただろう…そしてその為に邪魔な私を排除しようとした…だから私は…この星で君を…完全に亡き者にしようと…」


「ですが宇宙宮皇族は何よりも実力が尊ばれます。

第一皇子であろうとも長兄であろうとも、力では到底わたしには及ばないあなたはとても次帝の器でありません。

でもわたしは文官、技術官として教養のあるお兄様を尊敬してましたわ。

実際にフレイアを作り、そしてまがいものとは言えあそこまでフレイヤルを再現した技術も見事。

更にわたしを傷つけるだけの力を持った法具を収集する目も確か。

戦いの資質はありませんでしたけど、それ以外は見事でしたわ。

それはわたしには決して真似できないものでしたから。

尊敬こそすれ、貴方を排除などわたしは考えてはいませんでしたよ。

あなたに攻撃されるまでは」


「あ…ああ…瑠詩羽…私は…選択を…間違っていたのか…?」


愛衣羅あいらにそそのかされましたか? それとも他の皇族ですか? それとも父上ですか?

どちらにしてもわたしに実際に刃を向けて来たあなたを生かしておくことは出来ません。

わたしは次帝に成らなければならないのです。それが無き母上との約束ですから。

…残念ですけど、ごきげんよう、さようなら、尊敬するお兄様」


 わたしは手をかざした。幼いころ導名雅に遊んでもらった記憶が一瞬、頭によぎった。

 そして凄まじい破壊のエネルギー波が解き放たれて導名雅の身体は完全に消滅した。





※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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