第5話 国家中枢炎上。
ニホン国という国家の中枢、ナカタ町。
その中心にこの国を支配する王の住処があり、その周りに王に仕える配下や役人が勤める建物があり、その近くにはこの国の傀儡王の城もある。
この地に住む者達は、自分達が永遠にこの国の支配者層として君臨できることを信じて疑わなかった。
その意識に大小の差はあれど、自分たちがこの国における上級存在であり、自分達以外のこの国の国民全てを見下し、自分たちの糧でしかない奴隷の様な存在だと思っていた。
自分たちはこの国で殺す側の勝者であり、殺される側の敗者では決して無い偉大なる存在だと、心の底から思っていたのである。
だがこの大宇宙で永遠のワンサイドゲームなどというものは存在しない。
宇宙宮 瑠詩羽の”挨拶”でこの国の王とその取り巻きはその住処ごと消えた。
サクラタモンは自立式人型機動兵器、『シルフィア』に射撃されて瞬く間に消えた。
そして瑠詩羽の指示によってこの国の王の住処であったソウリ官邸の跡地の上空に配置された1機のシルフィアは、マスターである瑠詩羽の命令に従って此処にやってくる敵機動兵器の迎撃を開始した。
西のコマツから飛来してきた2機のイーグルに対して光線砲を射撃して撃墜した。
火の玉になって落ちたイーグルは積んでいた燃料を撒き散らしながら周囲を火の海にしていく。
しばらくすると北のヒャクリから新たな2機のライトニングⅡが飛来する。
シルフィアは光線砲を射撃して即撃墜するが、撃墜前に敵機が射出した空対空ミサイルが2発、シルフィアに迫る。
シルフィアは万全を要して防御光壁を展開する。
それは攻撃を防ぐバリア機能の他にも着弾と認識されずに攻撃を受け流して斜めに弾くという能力がある。
なので着弾時に信管が作動して破壊力を撒き散らすタイプの弾はそもそもシルフィアに対して攻撃が発動しないという事である。
空対空ミサイルは信管が作動せずそのまま斜めに弾かれて1発は神殿の様な形の大きな建物に、もう1発は大きな森の中にある城の様な建物に突き刺さって大爆発、それぞれの建物を吹き飛ばしてその周囲ごと大火災を引き起こした。
ミサイルより先に墜落したライトニングⅡの機体自体も周囲に燃料を撒き散らしながら街の中に落ちて大火災を引き起こしている。
シルフィアが投入されてから幾ばくもせずにナカタ町周辺は火の海になって建物も人も次々と焼き払われていった。
シルフィアは完全自立式の無人機であり、マスターである瑠詩羽の命令に従い、此処にやってくる敵機動兵器の迎撃をしているだけでこの街を焼き払うというつもりは毛頭無い。
だがマスターの瑠詩羽は自分の奴隷を痛めつけたこの国の人間に対して一切の容赦は無かった。
だからシルフィアへの指示も敵機動兵器の迎撃のみというシンプルなものであり、周囲に被害を与えない様になどという補足指示は一切していない。
つまり瑠詩羽のこの国に対する意思が無意識でシルフィアに伝わったその結果、瞬く間にこの地は火の海になったのである。
もし空也に害を加えようとする人間がいなかったら、そもそもこの様な事にはならなかったのかもしれない。
まさに因果応報であった。
また新たな敵機動兵器が接近してきた。
シルフィアは黙々と迎撃任務を遂行する。
光線砲に撃ちぬかれた敵機のことごとくは地上に落ちて大火災を引き起こし、そのミサイル攻撃は防御光壁に弾かれて地上に落ち大火災を引き起こし、どんどんこの街一帯の火は焚べられていく一方である。
せめて機動兵器の無駄な投入を辞めればこれ以上の火災の拡大は無いのだがその様子は見られない。
おそらく全機が投入されその全てが撃墜されるまでこれは続くのだろう。
何のことは無い、この国を、この国の民を護ろうとするものはこの国に最初からひとりも居なかったのである。
誰もが自分の保身と欲の為だけに生きていて、自分で考える意志が無く、上の者には絶対服従で、それで居て自分より下の人間を苦しめていたぶってあわよくば殺したい、そんな小役人根性の人間だったのである。
誰も自分で物事を考えない、判断できない、行動できない。
その様な者しかいないのだからこの様な結果になった。
ただそれだけのことなのである。
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
このニホン国という国家は自衛隊ではなく防衛隊と言う組織が存在しています。
お読み頂きありがとうございました。
ブックマークのクリック、(☆☆☆☆☆)のクリックで応援頂ければ嬉しいです。
ご感想もお待ちしております。