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第4話 首都を攻撃する。

「ふふふ、この都市がニホン国の首都ですか。この国はこの星で最弱の国と宇宙覇帝うつはていから聞いては居ますが、この文明レベルの惑星の都市としてはなかなか発展していると思いますね。

その証拠にその繁栄に対しての驕り、傲慢振りが都市全体から感じられますよ。

わたしは数多の宇宙を統べる宇宙宮皇家の覇帝姫はていき宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしは

わたしの持つ意識感応力は、この大宇宙に生きとし生ける、文明を持つレベルの生物の大まかな思考そして意思は大体は感じることが出来るのです。

さて、この都市で一番高いあの塔がこの国の王の住処すみかということですね。なら早速…」


「瑠詩羽様…あれはスカイツリーといって観光施設であり電波塔です…」


 塔に向かって手をかざしたわたしに空也がおそるおそる訂正の言葉をかけてきた。


「えっ!? 何なのですかそれは! 王と言うものは一番高い所から全てを見下すのが基本ではないのですか?

なら…こちらの建物なのでしょうか?」


「瑠詩羽様…そちらは東京タワーといってこちらも電波塔でこの国で一番偉い人がいるところではありません…」


「…なっ! なんなのですかこの国の価値観は! 数多あまたの星々を征服してきたこの覇帝姫はていき宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしはの価値観からしてありえません! ありえないのです!

ちょっと空也なんなのですかその目は! この瑠詩羽だって時には間違いは…あります…」


 わたしは恥ずかしくなって思わずそっぽを向いてしまった。

 そんなわたしを見てちょっと笑顔になる空也。

 はっ!? まさかこの覇帝姫、宇宙宮 瑠詩羽が可愛いと思われている!? しかもよりによって空也なんかに!? わたしの奴隷なんかに!?

 わたしは怒りを込めた瞳で空也を睨みつけると怒りの言葉を吐き出した。


「空也…あとで自分の立場というものをわからせてあげますから覚悟してくださいね…」


「は、はひっ!」


 ふふふ、思わず噛んじゃって…可愛い。

 そしてわたしの圧に心底震えましたね空也。

 まあ、せいぜい楽しみにして居て下さいね。


「姫様、こちらの建物がこの国の王、ソウリ大臣の住処の様です」


 ハクリュウは覇帝姫宮殿要塞はていききゅうでんようさいヴァーンニクスの床の全周囲モニターに映ったソウリ官邸をわたしに指し示した。


「ふふ、この国は大臣が一番偉いのでしょうか?

それにしても何故この国の長がこんな粗末な小屋の様な所に住んでいるのでしょうか?

まあこの国はこの星で最弱の国らしいですから余り時間は掛けたくは無いですね、手早く終わらせましょう。

それでは参りましょう空也! ハクリュウ!」


 覇帝姫宮殿要塞ヴァーンニクスの瞬間移動光線テレポートビームによってわたし達は一瞬でソウリ官邸の上空に瞬間移動した。


「さあ出て来てくださいこの国の王!」


 わたしは右手をかざした。その手の平から破壊の波動が解き放たれてこの国の王の小屋の様な城は粉々に消し飛んで消滅した。

 ふふ、国の王たるものは全て強靭な肉体を備えているもの。この程度のレベルの一撃は大宇宙的には単なる挨拶でしかない。

 さあ出て来なさいこの国の王。いくらこの星で最弱国と言っても『王』には替わりないのだから、多少は抵抗してこのわたしを楽しませなさい。


「…ちょっと! 誰も出てこないじゃないですか! ま、まさか今の一撃で本当に消し飛んでしまったとでもいうですか!?

う、嘘…? 今のわたしの一撃はこの大宇宙の基準的にはとても攻撃とも呼べるものではなくて只の挨拶みたいなものなのですよ!

そんな…王ともあろうともがそんな脆いはずは…。

…ん? もしかしたらあっちの森の中にある大きな建物に住んでいる者が本当の王なのでしょうか?」


「姫様、あちらの建物に住んでいる者は私が調べたデータによるとこの国の形式上の傀儡王の様です」


「なるほど、わたしも数多あまたの宇宙を駆け巡って力を失い形だけの傀儡に成り果てた王を幾つも見てきました。

わたしたち宇宙宮皇家もそうならない様に気を引き締めなければなりませんね」


「はっ、ですが力に満ち溢れた姫様ならば問題は無いでしょう。

…む、こちらに急速接近してくる機動兵器らしきものが2つあります。

データによるとこの星の機動兵器は”戦闘機”と呼び、接近してくる機動兵器の機体名は『ライトニングⅡ』と呼ばれるモノの様です」


「ハクリュウ、わたしはその機動兵器をその身で受けてこの惑星の文明レベルを見極めたいと思います。よって手出し無用、いいですね!」


「姫様、御意」


「そこの未確認飛行物体に次ぐ、諸君はわが国の領空を著しく侵犯している、直ちに退去せよ、さもなければ警告射撃を開始する」


 音速で飛来した戦闘機とやらのパイロットから警告の声が響く。

 しかし音速程度とは機動兵器の癖に随分と遅いが…しかも何か異様にやかましい。

 大音量で威嚇しているのか?

 …まさか子供の使いではないでしょうね?

 あまりの速度の遅さに中のパイロットが撮影機の様なものでこちらを撮っている姿もスローモーションの様に確認できた。


「…既にこの国の王が消されたのに何を流暢なことを言ってるのでしょうか? 愚鈍なモノは消えてください!」


 わたしが手を振ると同時に戦闘機はバラバラに裂けて消し飛んだ。

 わたしの言葉は意志となって相手に伝わり事象として具現化されるが、声は音と同じ速度であるので音速を超える相手にはたやすくかわされてしまう。

 そこで超高速で手を振ることによって音よりも遥かに速く相手にわたしの意思を届かせて事象を具現化させるのである。

 しかし何だこのライトニングⅡというものの脆さは? 金属装甲の材質も弱くその表面にも攻撃を防ぐ何の”力場”も発生していない?

 そんなものが機動兵器と呼べるのか? 大宇宙的にはありえないのだが…。


「そこの未確認飛行物体に次ぐ、直ちに攻撃を停止せよ! さもなければ射撃を開始する!」


「…既に僚機が消されているのにこの愚鈍振りはなんなのでしょうか? 爆ぜなさい!」


 音速程度でまっすぐ突っ込んできたのでわたしは手を振る必要も無いと判断し、相手を撃ち砕く言葉のみを口にした。

 言葉は意志となってもう一機の戦闘機に突き刺さり、事象として具現化、その機体はバラバラに弾けて吹き飛んだ。


「姫様。【コマツ】から別の2機が接近。こちらは『イーグル』という機体名の様です。

少し遅れて【ヒャクリ】からも先程のライトニングⅡと同型の2機がこちらに接近して来ます」


「ふふ、時間差攻撃のつもりでしょうか? この宇宙宮 瑠詩羽、真正面から受けてあげましょう!」


 コマツから飛んできた戦闘機がバルカン砲と呼ばれる武装を射撃してくる。

 なかなか射撃は正確。

 放たれた鋼の弾の嵐はわたしの身体を捉えるがわたしの肌にも着ている衣服にも傷はひとつも付きはしない。

 粉々に弾け飛んだ弾は金属の粒子となって宙に浮かぶわたしの足をつたってぱらぱらと地上へと落ちていく。


「これは只の金属の弾をぶつけるだけの攻撃なのでしょうか? 着弾時に空間ごと切り取るとか魔術を発動するとかそういう類の弾は無いのですか?

そんなものでこの覇帝姫はていきが討ち取れるとでも思ってるのでしょうかこの愚か者たちは!」


 わたしは手をかざし破壊の意思を事象として具現化する。

 同時にイーグルとか言う2機の戦闘機はまとめて吹き飛んで消滅した。


 ヒャクリから再度飛んできた2機の戦闘機は短距離空対空ミサイルというものを1発づつ発射してきた。

 2発のミサイルは発射元の戦闘機より遥かに速い超音速の速度で飛んでわたしに迫る。

 わたしは左手を振るい1発目のミサイルを両断、2発目のミサイルは右手で受け止めた。その瞬間にミサイルの信管が発動して、わたしは爆発に包まれた。


「ふふ、これぐらいの速度なら目をつむっていても迎撃できますね。

それにこのミサイルという弾にも着弾時に火薬の爆発力以外の破壊力…すなわち、空間的、時空的、波動的、魔術的等の破壊力が発動する機能は一切無いのですね、つまりませんね。

この星の機動兵器のレベルは概ね把握できました…それではごきげんよう!」


 わたしが両手を振るうと2機の戦闘機は真っ二つに切断されその欠片も粉々になって消滅した。


「姫様。コマツから新たに2機が接近して来ます」


 先と同じ? つまり先の攻撃は時間差攻撃という訳では無かった? 只の偶然だったか?

 これは単に少しづつ戦力を投じているだけということ?

 この国の王は真っ先に消したのにその敵討ちをする訳でもなく、かといって降伏するわけもない。

 元から決められた戦術通りに最低限の戦力を順次投入しているだけということか。

 戦術を改めることも無く、退くこともしない。

 王が死んだから独自に考える頭が無いのか? それとも単に指揮権が無いのか? これ以上の損失を恐れているのか?

 確かに今迄わたしと相対した戦闘機からは殺意も必死さも感じられなかった。

 先ず決められていた通りの動きをして、攻撃をして、回避をして、わたしに対応できずに撃破されただけに見えた。


「…これは意思もなく最低限度の仕事しかない只のお役人仕事なのですね。

この国の機動兵器のパイロットは軍人では無いのですね。

もう結構です…わたしは白けました。

これ以上続けてもわたしが求める血湧き肉躍る戦いを得ることは出来ないでしょう。

ハクリュウ、こちらの自立式人型機動兵器オートアーマー、『シルフィア』を出しなさい。

出し惜みながらも仕方がなく投入してくるまるで役人の様な戦闘機とやらは、こちらのシルフィア1機で迎撃は充分過ぎるでしょう。

シルフィアをあと数機出してこのくだらない、軍人の振りをした役人どもの”頭”を潰して終わりにしなさい」


「御意。シルフィアを此処ここに1機、【イチガヤ】、【サクラタモン】、【ヨコタ】に1機づつ、補助としてもう1機を降下させます」


 覇帝姫宮殿要塞ヴァーンニクスの下部から自立式人型機動兵器オートアーマー『シルフィア』を内包した大きな光の球体が5つ排出される。

 そのうちの一つはわたしの側にその動きを停めると光のフィールドを解除し、鋼の巨人の姿を白日の下にさらけ出した。

 そして右手に光線砲ビームカノンを構えると射撃を開始した。

 放たれた光線ビームが大気を貫いてわたしの間近まで接近していたイーグル2機に命中、容赦なく撃墜した。

 シルフィアは完全自立型の無人機、遊びも様子見も無く淡々と命令を執行するわたしの忠実なる機械の戦士。

 わたしの目論み通りここはシルフィア1機に任せて問題は無いだろう。

 撃墜された戦闘機が積んでいた燃料を撒き散らしながら火の玉になって眼下の街に落ちて大火災を引き起こしているのを見つめながら、わたしは他の箇所に向かったシルフィアの戦況確認をする。


 イチガヤ、サクラタモン、ヨコタに降下したシルフィアも射撃を開始した。

 イチガヤとサクラタモンは即沈黙。

 ヨコタは抵抗しているらしいが、ハクリュウ曰くその抵抗力は微々たるもので何の問題も無いとの事である。

 既に勝敗は決している。万が一の反撃があってもハクリュウに全て任せているので何の問題も無いだろう。

 わたしは戦線の興味を一切無くすと別の興味へと関心を移した。

 終始驚いた表情でわたしの戦闘を見つめていた空也に視線を向ける。

 ふふふ、お待たせしましたね空也…。

 今から自分の立場というものを、たっぷりとわからせてあげます。





※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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