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第21話 魔(エヴィル)。

 そこはどこまでも続く闇の空間の中に様々な色の流れが、渦が、粒子が交じり合う異常な空間だった。

 絶えず空間の色彩が移り変わっていく


瑠詩羽るしは、この空間からはとてともなく大きな力を感じるわね。なるほど…これならアタシの手助けが必要なのも納得がいく!」


「ふふ、頼りにしてますよ舎留那しゃるな


「来い! アタシの相棒!『幻炎虎神獣げんえんこしんじゅうグレンタイガ』! そしてアタシの機神きしん!『鐘天龍火玖しゅてんりゅうかく』!」


 舎留那の後ろの空間が歪んで、炎を纏った一匹の巨大な虎と、黒金くろがねの装甲を纏った巨大な鋼の巨人が姿を現した。

 舎留那もこの空間に潜む強大な存在を感じ取り、自身の最大の戦力を呼び出したのである。


 わたし、舎留那、空也、ハクリュウ、そして2体の幻獣、2機の鋼の巨人は異空間の奥へ奥へと進む。

 すると空間のあちらこちらから、人よりも遙かに巨大な大きさをしたモノが無数に出現した。

 宝石のような複眼に巨大な口と牙を持った頭だけの存在である。

 その数はざっと見て数万。


「…これは、この大宇宙を喰らい尽くす化け物、『エヴィル』ではありませんか。

それも弱体化した亜種でもなく、粗悪な複製品でもなく、培養品でもない、完全なオリジナルですね。

エヴィル』は身体のほぼすべてが口であり、その体内の全ては捕食したものをエネルギー変換する為の機関という、まさに全てを喰らう為に生まれた化け物。

全てを喰らい尽くすことをその生きる目的とする、生き物のことわりを外れた異質な存在であり、この宇宙にとって極めて危険な化け物たち。

故にそのほとんどはこの大宇宙から駆逐された筈ですが、こんな辺境中の辺境の星の底にこれ程の凄まじい数で隠れ潜んでいるとは思いも寄りませんでした。

なるほど…同胞を殺し委縮し自分達だけの繁栄の為に生物の種全体としての滅びすら望むという、このくだらない国家が崇めるものが『エヴィル』というのなら生物の理から外れた異質同士、気が合ったのかも知れませんね」


「…へえ、『エヴィル』がこんなにも居るなんてアタシも初めて見たわね。これほどの数ならばこの恒星姫こうせいき舎留那しゃるなの相手にとっても不足は無いわ! 瑠詩羽、先駆けは貰うわよ!」


 舎留那は手をかざした。その手の平から凄まじい破却の炎の閃光が一直線に放たれて、その直線状にいた数千の『エヴィル』が炎に包まれて瞬く間に灰になって燃え尽きた。

 舎留那の攻撃範囲外のに居た『エヴィル』は全身のヒダの様な箇所から光の粒子を噴射させて光速度で飛翔すると、舎留那に、そしてわたしたちに一斉に襲い掛かった。

 『エヴィル』はその身体そのものである口を開けてわたしたちを喰らおうと突撃してくる。

 あるいは口内から【光線息ビーム】を吐き出して攻撃してくる。

 『エヴィル』の【光線息ビーム】は消化液と舌を兼ねたようなものであり、この光線息ビームに触れて溶かされたモノは一瞬で『エヴィル』の体内に運ばれて瞬く間に自身のエネルギーに変換されるのである。

 わたしは破壊の意思を込めた瞳で『エヴィル』を”視た”、その瞳が輝いて破壊の現象が事象化する。

 だが視覚範囲に居た全ての『エヴィル』は”事象防壁”を展開して防いで見せた。

 流石はこの宇宙を喰らい尽くす存在、この地球の機動兵器とは比較にならない強さというべきか。

 だがこの覇帝姫はていき宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしはの破壊の意思を”その程度”の事象防壁で防ぎ切れると思ったか化け物共。

 わたしの破壊の意思は化け物たちの事象防壁を瞬く間に侵食して、その身体に破壊を事象化させ粉々に打ち砕き、数千の数を消滅させた。



「ハクリュウ、『エヴィル』から空也を護りなさい」


「姫様、御意」


「…ハクリュウさん、僕も!」


「そうだな、空也君。ってみるといい」


「はい!」


 空也は右手をかざすと自分のエネルギーで光の剣を生み出した、そしてその光剣を両手に握りしめた。

 そして襲い掛かってきた一体の『エヴィル』に向けて振るい、空也をたやすく丸のみに出来るぐらいの巨大なその身体を一刀のもとに両断した。


「その調子だ空也君、それでは私について来なさい!」


「はい、ハクリュウさん!」


 ハクリュウは空也を後ろに並走させながら剣を振るう、その刃が動くたびに『エヴィル』が斬り裂かれてその肉片も瞬く間に塵となって無に還っていく。

 ハクリュウからは『エヴィル』に攻撃は仕掛けず、あくまで襲ってくる化け物のみを迎撃しているのだが、それでも瞬く間に数百の『エヴィル』がその剣の露となって消えていった。

 そして空也も光剣を振るって『エヴィル』を一体、二体、三体と、ハクリュウには数では及ばないが確実に倒していく。

 『エヴィル』は一体でも地球人程度のレベルでは全く歯が立たず、この大宇宙においてもかなり強い種族で無ければ対抗できない強力な化け物である。

 空也がハクリュウといつも早朝に鍛錬をしているのは知っていたが、『エヴィル』を倒せるまで強くなっていたとは…。

 わたしは空也の成長を喜ぶとともに、ハクリュウのその指導の上手さを称賛した。



 うおおおん! とわたしの最強のモフモフ、幻雷獅子皇獣げんらいししおうじゅうアルマレオンが吠えて、その頭に生えた角から雷撃を照射する。

 それは『エヴィル』の大群に突き刺さり、数百、千の化け物を撃ち砕いていく。



 ぐおおおお! と舎留那の使役する幻獣、幻炎虎神獣げんえんこしんじゅうグレンタイガが吠えて、その全身から沸き立った炎を解き放つ。

 それは『エヴィル』の大群に燃え刺さり、数百、千の怪物を焼き払っていく。



「我があるじの敵を討滅します」


 わたしの配下の機械仕掛けの女神、女神型機動兵器ヴァルキリーアーマーシルフィールが凄まじい速度で駆けながら手にした大剣を振るい、身体に装備された砲を放つ。

 空間次元跳躍機能、超光速移動、絶対防御光壁、超次元剣、空間消滅砲など様々な武装を際限なく使用して数千の『エヴィル』を滅ぼしていく。



「拙僧の主様ぬしさまの敵を討つ!」


 舎留那の機神きしん鐘天龍火玖しゅてんりゅうかくが両腕に構えた二刀のの太刀を振るい、全身に仕込まれた砲を撃つ。

 空間次元跳躍能力、超光速移動、絶対防御障壁、超次元刀、次元衝撃砲など様々な武装を際限なく使用して数千の『エヴィル』を討滅していく。



 異空間に二人の宇宙宮の戦姫とその配下、召喚獣、鋼の巨人が繰り出した破壊のエネルギーが炸裂し、数万の『エヴィル』のことごとくが吹き飛ばされて完全に消え去った。

 だが空間のあちこちから新たな数万の化け物の頭が無数に出現して攻撃を仕掛けてくる。

 凄まじい波状攻撃。

 だがわたしたちも油断なくそれらを迎え撃ち、そのことごとくを無に還していく。



エヴィル』はその内に保持しているエネルギー総量が高ければ高い個体ほどその身体は赤く染まっていく。

その中でも深紅ハイレッドと呼ばれる特に赤い個体群、数千がわたしたちの前に躍り出ると、それらはその頭だけの身体の背部から一瞬で身体を構築した。

それは巨蛇のような身体だったり、巨人の身体だったり、四肢の巨獣の身体だったり、翼生えた巨鳥の身体だったり、多脚の巨虫の身体だったりと多種多様であった。

数千の怪物群はそれぞれの形態の武器である、鋭い牙、爪、触手、光線、エネルギー波、ブレス、雷球、稲妻、その他の様々な手段でわたしたちに一斉に攻撃を仕掛けて来た。


 わたしは力を込めた腕を振るい足を振るう。そのたびに怪物たちはバラバラに吹き飛んだ。

 手をかざし破壊の波動を放ちその放射状の全ての怪物が消し飛ぶ。

 わたしの瞳が輝いて破壊光線が照射される、怪物たちは光に撃ち抜かれて一瞬で塵となる。


 舎留那、ハクリュウ、空也、アルマレオン、グレンタイガ、シルフィール、鐘天龍火玖も立て続けに怪物達に攻撃を仕掛ける。

 数千の怪物達は幾ばくもせずに全て吹き飛んで消滅し異空間の霞と散った。



 だが空間のあちこちから更なる新たな深紅の化け物の頭が無数に出現し、それらは一瞬で身体を構成して襲い掛かって来た。


「アハハ! 本当に凄い数の化け物じゃない、これは凄く燃やしがいが在るわね! 全て燃えなさい!」


 舎留那が破却の意思を込めて手をかざす! 周囲の全ての化け物が炎に包まれて瞬く間に灰になって燃え尽きた。


「アハハハ! アタシの炎はこんなものじゃ終わらないわ! もっともっと燃え盛りて全てを破却する業火よ! アハハハハハハ!!」


 舎留那はその全身に炎を纏わせながら、焔の様な長い赤髪を生やした頭を、腕を、足を、その全身を振るう、それは炎の演舞をする戦女神を思わせた。

 彼女が舞うたびに全身を纏っている炎は爆発的に広がって炎の渦となり、周囲を取り囲んだ数千、数万の『エヴィル』を包み込んでそのことごとくを焼き払っていく。


 新たに出現した『エヴィル』群は集結し渦を巻く。その数は更に増し、数十万の、そして百万の怪物の渦が形成される。

 それは一つの宇宙を、いや銀河をも喰らい尽くすほどの凄まじい数の化け物。

 その口内が一斉に開き無数の「光線息ビーム」が一斉射された。それは全てを喰らい尽くす巨大な閃光となってわたしたちに迫る。


「アハハハハハ! 化け物共! 喰らうがいいわ! アタシの恒星の一撃を! 超恒星臨界熱波動ハイ・フレア!!」


 舎留那の纏った灼熱の業火が煉獄炎の球体へと替わる。それは極小の恒星を思わせた。

 彼女は超圧縮された恒星そのものと化して『エヴィル』の百万の大群の渦に突っ込んだ。

 とてつもない熱量の一撃が化け物たちを屠り、その全てを肉片のひとつも残さず塵に変えて完全に消滅させた。




 『エヴィル』の百万の大群が消え失せた空域の奥に、更なる異空間が広がっていた。

 わたしたちはそこに足を踏み入れた。

 今で倒して来た『エヴィル』群のその全てを纏めても敵わない、それ程までにとてつもなく巨大な力がこの空間に溢れている。



 そしてその空間の中央に、黄金色をした岩の塊の様な巨大な身体に幾つかの触手のようなものが生え、その最上部に白い女の顔を逆さにしたような頭が生えた存在モノが居た。






※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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