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第19話 第四皇女、舎留那(しゃるな)。

 この地球においてエウロッパ大陸と呼ばれている大陸の真ん中には高い山々がそびえ立っている地域があり、そこはハイジ山脈と呼ばれている。

 わたしは覇帝姫宮殿要塞はていききゅうでんようさいヴァーンニクスをこの地に降下させた。


 わたし、宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしはは父であり大宇宙の絶対的支配者である宇宙覇帝うつはていの命でこの地球を征服しなければならない。

 そうしなければわたしは処刑されその命を絶たれてしまう。

 わたしは生き抜かなければならない、そして次帝にならなければならないのだ。

 それがわたしの代わりになって死んだ母上との約束だから。


 星を征服するためには『星の支配国家』を倒さなければならない。

 そして星を支配する国の王、すなわち『星の王』を倒さなくてはならない。

 だが、この地球を支配するという常任理事国と呼ばれる5つの大国のどれもはこの星の支配国家では無く、その王の誰もがこの星の王では無かった。


 わたしは今からこの地球と呼ばれる星の、真の『星の支配国家』そして真の『星の王』を討ちに向かう。

 だがその前に此処で待ち人がある。

 この『ティラミス山』と呼ばれる、このハイジ山脈で一番高い山はその待ち合わせの目印として恰好のものだった。


 ヴァーンニクスの前の空間が歪んで巨大な城が次元跳躍して来た。

 燃え盛る炎の城、『炎國火宮殿えんごくかきゅうでんシャイナダルク』。

 その城からまるで小型の太陽の様な巨大な火球が撃ち出されてヴァーンニクスに迫り来る。

 わたしは瞬間移動でヴァーンニクスの前に出ると両手をかざしてその火球を受け止めた。


 燃え盛る灼熱の火球が霧散して、その中から焔を思わせる足まで届く長い赤髪、紅蓮色の豪華絢爛ごうかけんらんなマントを身に纏った一人の少女が姿を現した。


「アハハ! 父上から理不尽に追放されたって連絡が来たから、至急ヴァーランド惑星攻略戦を終わらせて急いで逢いに来てあげたわよ瑠詩羽! こんな辺境に追放された気分はどうかしら!」


 宇宙宮皇家の第四皇女、舎留那しゃるな

 彼女は私と同じ160歳であるが生まれが少しだけ遅い。

 恒星姫こうせいきと呼ばれており、このわたし覇帝姫はていき、瑠詩羽と並んで、宇宙宮皇家の最高戦力としてこの大宇宙に名を届かせている戦姫せんきである。


「ふふ、相変わらずの元気でなりよりです舎留那。気分は最悪ですよ。この星の人間は戦う気概の無い者ばかりですし、あげくは兄姉弟妹が次々とわたしを暗殺しに来る始末です!」


「アハハ! それは最悪ね! だったら憂さ晴らしにこのアタシと殺し合うのはどうかしら?」


「ふふ、良いですよ。今日こそ舎留那を殺せるかと思うと楽しみでなりません!」


「アハハ! 言うわねえ。それじゃあ行くわよ瑠詩羽!」



 舎留那は右手をかざした。次の瞬間巨大な炎の渦が巻き起こりわたしを包み込む。

 わたしも右手をかざして炎の渦を吹き散らす。

 舎留那は光速で跳んでわたしとの間合いを詰めると、拳を、蹴りを、電光石火の如く撃ち込んでくる。

 光速度の凄まじい連続攻撃。

 わたしも光速で拳を蹴りを見舞ってその全てを撃ち払う。

 舎留那は右腕を円を描く様に回すと炎の球を無数に生み出して光速斉射攻撃を展開する。

 わたしは両手をかざして破壊の波動を広角範囲で照射してその全てを撃ち落とす。

 互いの凄まじい力のぶつかり合いで生み出された衝撃波が周囲に撒き散らされて、ハイジ山脈の雪が剥がれ落ち雪崩が無数に巻き起こる。


「瑠詩羽あ!」

「舎留那っ!」


 わたしと舎留那は互いに渾身の力を込めた拳をぶつけ合った。

 凄まじい力場が巻き起こり、衝撃波が広がってハイジ山脈の雪が崩れ落ち大規模雪崩が巻き起こり、周囲を白の巨波が覆い全てを押し流した。


「へええ、こんな低レベルの文明の惑星に飛ばされて心身ともにしょげていたのかと思ったけど随分とやるじゃないの! というより、前に殺りあった時よりも腕を上げたんじゃない?」


「ふふふ、舎留那こそ強くなっているじゃないですか。以前よりも更に熱さを増したその灼熱の炎、流石は宇宙覇帝国うつはていこくのもう一人の次帝候補、恒星姫と呼ばれるだけのことはあります」


「アハハ! 強さだけならそうかも知れないけどね! アタシは頭を使うことはからっきしだからね、次帝は瑠詩羽のほうがふさわしいわよ!」


「そんなことは無いとは思いますけどね、貴女のそういうさっぱりしたところはわたしには無い人を集める力がありますから」


「アハハ! 次帝候補イチのアンタに褒められるのも悪くないわね!

…瑠詩羽。無事でよかったわ。

どうしてすぐにアタシに助けを呼ばなかった?

連絡をくれたらすぐにでもグランディアスに乗り込んでアンタをさらったのに。

そのままその場の皇族全員を打ち滅ぼして、二人で父上に挑んでも良かったのよ!」


「ありがとう、舎留那。

わたしを陥れたのが誰だかわからなかったですし、今のわたしたちの力ではまだ父上には勝てなかったでしょう。

共に無駄死になんて最悪じゃないですか?

ですから機を伺うことにして、舎留那への連絡も後回しにしていたのですよ」


「…それでもすぐに連絡ぐらいよこしなさいよね、心配するでしょ?」


「ふふ、ごめんなさい。舎留那は頼りになりますから、甘えていたのかも知れませんね」


 舎留那はわたしを抱きしめて無事の再会を喜んだ。

 わたしもそんな舎留那の背中に手を回して喜びの感情を返した。

 舎留那はわたしの妹ではあるが、わたしたちの関係は姉妹というよりは親友に近い。

 互いに同格の力を持ち、魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこするこの宇宙宮皇家の中で、共に手を取り合ってこれまで生き抜いてきたのである。


「瑠詩羽、アンタから来た連絡の内容を確認するわよ。

様はこの星を支配する国家と王を討つためにアタシに手伝って欲しいのね?

連絡を受けた時にアタシが攻めていたヴァーランド惑星の氷凍帝王リフリジレイターはまだ変身を二回残していたからもうちょっと楽しめそうだったわ。

でも他らなぬアンタがアタシに助けて欲しいって言うんだから、それを即滅ぼして切り上げてきたのよ。

それに見合っただけの戦いがいのある相手なんでしょうね? この星の王とやらは?」


「舎留那。わたしはずっと考えていたのです。

何故、父上はこんな辺境中の辺境の惑星である地球にわたしを追放したのか?

最初はただの嫌がらせかと思ったいたのですけれど、この大宇宙を支配する宇宙覇帝うつはていである父上が果たしてそんな感情に任せた無駄な行いをするのでしょうか?

つまり、この地球と呼ばれる星の王は…このわたし、覇帝姫はていき宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしはを送り込むほどの相手では無いのか? ということです。

…ともあれ、この地球と呼ばれる星を支配している国家は既にはっきりしています。まずは其処へ向かいましょう」


 覇帝姫宮殿要塞ヴァーンニクスと炎國火宮殿シャイナダルクはハイジ山脈の側に位置するとある国家の上空にその巨大な姿を停めた。

 この惑星上で永遠中立国を謳う『ホワイトクロス国』。


「わたしはハクリュウにこの星の資金の流れ、資源の流れ、人材の流れ、技術の流れを調べさせました。

その結果、この永遠中立国を自称する『ホワイトクロス国』にその流れの全てが集まっていました。

この星の資本、資源、技術、人材、その全てはこのホワイトクロス国に集約され、その”上澄み”は全てこの国が独占していました。

常任理事国、そしてその配下であるこの星の全ての国々はその”搾りかす”を受け取っていたに過ぎなかったのです。

常任理事国とはこの星を真に支配している国家を隠すための隠れ蓑でしか無かったのですよ。

結局のところ、常任理事国というものはホワイトクロス国の忠実な下僕…いや只の手足でした。

常任理事国の行動の全ては自身の利益で無く、この国の利益に繋げることでしたからね。

つまり、このホワイトクロス国こそが、わたしが探し求めていた、この地球と呼ばれる星の真の『星の支配国家』ということです。

そして此処にこの地球の真の支配者である『星の王』が居ます」





※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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