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第15話 慣れなさい。

「姫サマー、オ腹ノ傷ノ跡ハヒトツモアリマセンー」


「全身モ傷ハアリマセンー」


「綺麗ナ身体デスー」


 ルーシー国と鬼琉扶きるふとの戦いを終えたわたし、宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしは覇帝姫宮殿要塞はていききゅうでんようさいヴァーンニクスに帰還し大浴場で戦いの汗を流していた。

 今回は迂闊にも大きく負傷してしまった為、わたしに仕える一流のメイドであるパミロン星人のウィナ、フィナ、ティナの三姉妹に身体を洗ってもらっている。

 彼女たちは看護、治療に関しても一流なので、そちらの面でも見て貰ったのである。


「流石にお腹を貫かれた時は驚きましたけれど、再生復元は問題なく出来ましたね。

闇巨蜘蛛アトラクナクア』には再生復元を阻害する闇の力があると聞いていましたが、杞憂きゆうだった様です」


「姫サマー、良カッタデスー」


「はあ、わたし虫は苦手ですからね…鬼琉扶には悪いですけれど今でもちょっとぞわぞわします。

パミロン三姉妹、今日は念入りに洗ってください」


「「「ハイーー!! 姫サマーー!!」」」


 パミロンメイド三姉妹は息の合ったタイミングでわたしの身体を優しいタッチで磨きつつ迅速かつ綺麗に洗っていく。

 流石は一流のプロの仕事である。

 空也も洗うのがとても上手いのだがパミロンメイド三姉妹とどちらが良いと聞かれればこれは甲乙捨てがたい。

 バハムートの刺身とリヴァイアサンの刺身のどちらが旨いか? と聞かれた時と同じ感覚であろうか?


 それはそうと、その空也であるのだが、パミロンメイド三姉妹が大浴場に入って来てからというもの浴槽の中に入ってしまい何故かこちらに来ようとしない。

 しかもわたしたちとは正反対の方を向いているのである。

 そんな有様でわたしに奉仕できるというのですか空也?

 ちゃんと主人であるわたしのほうを向くのが礼儀と言うものでしょう空也?

 そこまで思考してわたしは気付いた。

 ああ、今わたしの身体を洗ってくれているパミロンメイド三姉妹も当然、一糸まとわぬ全裸なのである。

 なるほど、空也はパミロンメイド三姉妹に遠慮してわたしから離れてずっとあちらを向いているという訳か。

 …ちょっと待ってください空也?

 何かおかしくないですか空也?

 パミロンメイド三姉妹は私の忠実な配下ですけれど、言い方を変えるなら私が雇い入れた使用人です。

 あなたは主人の裸は平気なのに使用人の裸は遠慮するというのですか!?

 どういうことなのですか空也?

 これはまたしてもお仕置きが必要ですか空也! 空也あ!


 わたしはおもむろに立ち上がると空也の入っている浴槽へ向かい中に入ると、お湯を分け入って空也の後ろに仁王立ちした。


「わっ!? 瑠詩羽様っ?」


 突然わたしが側に来て驚く空也。わたしは意に介することなく彼の手を取るとそのままパミロンメイド三姉妹の元へと連れて行った。


「ウィナ、フィナ、ティナ、空也の身体を綺麗にして上げなさい!」


「「「ハイーー!! 姫サマーー!!」」」


「う、うわあーー!?」


 メイド三姉妹は空也を取り囲むと空也の身体を洗い始めた。


「ケッコウ逞シイ身体デスー」


「着ヤセスルタイプデシタカー空也?」


「腕モ足モ硬イデスー」


「あ、あわわ…」


 空也から見ればどこに視線を移しても女性の全裸、彼は手で目を覆って必死に見ない様にしようとする。


「駄目デスー、腕ガ邪魔デ洗エマセンカラー」


「で、でもお…」


「アラ? 前ノ方モ立派デスー」


「み、見ないでええーー!」


「ウィナ、フィナ、ティナ、空也の前の方も綺麗にして上げなさい!」


「「「ハイーー!! 姫サマーー!!」」」


「ひっ…うあああーー!!」


 顔を真っ赤にしてメイド三姉妹に抵抗する空也。

 わたしはハンドタオルを手に取るとそんな彼の前に仁王立ちした。


「る、瑠詩羽様っ!?」


「ふふふ、空也はいつもわたしの大切なトコロを丁寧に洗ってくれているじゃないですか。

いまさら三姉妹の裸を見るのも、自分の裸を見られるのも、今更何だというのですか?」


「それとこれとは…違うと…思う…」


「…何か言いましたか空也?」


「ひゃいっ! 何でもないです瑠詩羽様!」


「まあ良いでしょう。それでは今回はわたしが空也の大切なトコロを洗ってあげるとしましょうか?

ふふふ、主人が奴隷の身体を洗うというのもいつもと違う趣向があって良いですよね。

メイド三姉妹、空也が逃げない様にしっかりと抑えて下さいね」


「「「ハイーー!! 姫サマーー!!」」」


 パミロンメイド三姉妹は戦闘力は無いのだが、柔良く剛を制すとばかりに、わたしの血を飲んで強靭な肉体に生まれ変わった空也の剛力をも上手く抑え込んだ。


「ふふっ、覚悟してくださいね空也」


「る、瑠詩羽様っ! だ、だめえええーーー!!」


 空也の絶叫が大浴場に響き渡った。












「はあ…いいお湯です…」


「イイお湯デスー」


「ハアー♪ ビバビバー♪ ノンノンー♪」


 わたしはメイド三姉妹の次女のフィナと三女のティナと湯舟に浸かっていた。

 お風呂は大勢で入るのも良いものである。


「…うう…」


「空也ー大丈夫デスカー?」


 空也は浴槽の外でメイド三姉妹の長女のウィナの膝枕に頭に乗せて目を回していた。

 ウィナは何処からかうちわを出して空也を仰いでいる。


 空也は女に慣れていないふしがある、

 主人のわたしには平気なのに他の女に慣れていないのはおかしいだろう。

 だから他の女にも慣れさせなければいけない。

 これは主人の奴隷に対する教育なのだ。

 ただそれだけで深い意味は無いのである。



「ハクリュウ、ルーシー国の制圧報告をしなさい」


 わたしが声をかけると同時に大浴場の空中にモニター画面が映し出されてハクリュウの顔が浮かんだ。


「姫様。ルーシー国の制圧は5時間前に完了しております」


唐土国からどこくよりも早いですね、戦意も兵器の威力も高くても、それを実行する体力、資本力が無く、鬼琉扶の言った通りにわたしのたった一度の反撃でほぼ完全に沈黙したということで良いのでしょうか?」


「はい、姫様。ですが彼等は我等に到底敵わなくとも持てる全ての力を持って喰らいついて散って行きました。今まで戦ったこの星の軍の中では最も良く戦ったと私は評価します」


「確かに今までの国よりは良いとわたしも思います。ですがその勢いが良かっただけにその失速ぶりによる肩透かし感が半端なかったですね…残念です。

さてハクリュウ、あと残っている常任理事国とやらはどうなのでしょうか? この覇帝姫、宇宙宮 瑠詩羽を満足させるだけの戦力、戦意を魅せてくれると良いですね」


 わたしはそう言うと新たなオモチャを期待する子供の様に微笑んでみせた。





※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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