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第10話 最強の資本国家を攻撃する。

「ふふふ、ここが唐土国からどこくの首都なのでしょうか。此処が、この星の王のハウスなのですね!

なるほど、この都市からも昨日のベイ国と同等かそれ以上の驕りと傲慢さを感じますよ。

この覇帝姫はていき宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしはの意識感応力は、この大宇宙に生きとし生ける、文明を持つレベルの生物の大まかな思考そして意思を大体感じることが出来るのです。

『この星の全てを買い占めて我がモノとする』その様な強い意志を感じます。

この国はこの星で一番の資本国家と聞いてますから、その心意気は良し! でしょう。

ですが資本力は力を買うための手段でしかありません。

本当にこの星の力全てを買い占め、我がものとしていることを期待していますよ!」


 わたしは覇帝姫宮殿要塞はていききゅうでんようさいヴァーンニクスを首都ホキンの上空に停止させた。

 そして空也とハクリュウと共にこの都市の中心にある皇帝城と呼ばれる城の上空へと瞬間移動する。


「これがこの星の王が住むという皇帝城なのですかハクリュウ? なかなか良い城じゃないですか? プレジテントハウスより断然支配者の建物としての風格がありますね」


「姫様、そちらはかつてはそうだった様ですが今は宝物殿になっている様です。その隣の地区に王たちの住処があります」


「なんですかそれは? 王がそんな細かいところに住んでいるのですか? 何故、王が城に堂々と住まず、そんなにところにこそこそと隠れるように住んでるのでしょうか?

まあわたしは別に構いませんけれど。どうせすべて吹き飛ばせば良いのですから。

…ですが、宝物殿の中にあるものは少し気になりますので皇帝城は標的まとから外しますね。

それでは出て来てくださいこの星の王!」


 わたしは右手をかざした。次の瞬間、辺り一帯はプレジテントハウスやソウリ官邸と同様に粉々に消し飛んで消滅した。

 手応えは無い。そしてまだ底があると感じたわたしは手をかざしたまま、そのまま地面を掘り進めて区画全体に巨大な穴を形成する。


「ふふふ、これぐらい念入りに挨拶しましたから、これでこの星の王には届いたはずでしょう。さあ出てきてその力を魅せて頂きましょうか!」


 しかし王が住んでいた区画跡の巨大な穴からは何も反応は無かった。


「…あの、誰も出て来ないのですけど、これは一体どういうことなのですか空也!?

ま、まさかベイ国の王同様に今の挨拶だけで消し飛んだことは無いですよね? だってこの星の王なのですよ!

これは只の挨拶なのです、これぐらいで吹き飛ぶ星の王の肉体強度なんて大宇宙の常識的にはありえません! ありえないのですから!」


 次の瞬間、四方八方からミサイルや砲弾が飛び交ってわたしたちに突き刺さった。


「空からの攻撃ではないですね、これは地上部隊からの攻撃でしょうか? ですがさっきの挨拶で本当にこの国の王が消えたというのなら愚鈍すぎますね! 爆ぜなさい!」


 わたしは破壊の意思を込めた言葉を叫んだ。

 相手が地上部隊なら音速の速度である声でも回避は出来ないので問題は無い。

 しばらくすると攻撃が飛んできた方向の区画が全て消し飛んだ。

 そこに地上部隊が居たようだが、もう影も形も無かった。


「ふふふ、次は機動兵器のお出ましですね」


 上空からベイ国を凌ぐこれまでに無い大量の数の戦闘機群が現れて首都ホキンの空を埋め尽くすと、わたしたちとヴァーンニクスに向かってバルカン砲と空対空ミサイルで攻撃を開始してきた。


「姫様、これらの機動兵器は『ジエンジー』、『フランカー』と呼ばれる機体の様です」


「ふふ、ぱっと見た限り、ベイ国の機動兵器と似たり寄ったりの様ですね。それでは性能も期待できませんか?」


 わたしが破壊の意思を込めて手を振るうと戦闘機群は粉々に吹き飛ばされて瞬く間に全滅した。


「ですが数は多いのは良いですね。数はそのまま戦力になりますからその姿勢は良いですよ。さあどんどん来てくださいね!」


 続いて増援の戦闘機群が殺到する。と、同時に中型ミサイル群も殺到する。


「ふふふ! 機動兵器を巻き添えにしてもおかまいなしに攻撃とは! なりふり構わなくて良いですよ!

この覇帝姫はていき宇宙宮うつのみや 瑠詩羽るしはを前にしてなら、それぐらいの必死さは見せて当然ですよね!」


 わたしは破壊の意思を瞳に乗せて視覚範囲の戦闘機、ミサイルの全てを”視る”。

 そしてわたしの瞳が輝いた瞬間、全ての敵性物体は粉々に吹き飛んで消滅した。

 続けざまにわたしは手を振るう、視覚範囲外に居た生き残りの戦闘機群、ミサイル群も粉々に吹き飛んで消え去った。


「ふふふ、良いですね! 流石はこの星で最も資本力に優れた国だけあって戦力の多さはとても良いと思います! さあもっともっと来てくださいね!」


 引き続き大群の戦闘機の増援が現れるが、それらは首都ホキンの外周をグルグルと旋回して何故かこちらには近づいて来ようとはしない。


「ハクリュウ? これはどういうことですか?」


「姫様の力を恐れてその間合いに入るのを恐れているのではないかと」


「何を言っているのですか! まだ戦闘が始まって序の口なのですよ! わたしはようやくアップを始めたばかりです! この程度の戦闘は大宇宙的には軽い会釈程度だと言うのに、もう逃げ腰だというのですか!?

あんなに数が揃っているのにですよ? アレは張り子の虎猫か何かなのですか?」


「姫様、ニホン海に展開している唐土国の空母群から戦闘機群、唐土国の各七地方の基地からの戦闘機群がこちらに向かって来ます」


「ふふふ、合流して一斉攻撃という事でしょうか? それではこの覇帝姫、宇宙宮 瑠詩羽が真正面からお受けいたしましょう!」


「姫様、各戦闘機群、首都ホキンより離れた空域で滞空展開! これは…各戦闘機群同士で睨み合いになっている様ですな」


「つまり、わたしと戦う気が無い腰抜けの首都防衛の軍、それらを排して首都を奪いたい七地方の軍、空母の軍、それぞれの軍同士でそれぞれ睨み合いになっているという事ですか?

ふふふ、あはは! この覇帝姫、宇宙宮 瑠詩羽を無視して身内同士でこの国の覇権を争って睨み合いですか?

いやもとより身内では無いのでしょうか? 所詮は王のもとに集っていただけの寄せ集めの軍だったのでしょうか?

隙あらばこの国の覇権を狙っていたということでしょうか?

しかし彼らが今真っ先に行うべきは、この国に攻め込んできたわたしと戦うことの筈でしょう。

生物は生まれ落ちてから生き続けなければなりません。

それが生物の理です。

そして自身を滅ぼそうとする敵は倒さなければなりません。

己自身の持てる全てを燃やし尽くして敵に抗う、それが戦いです。

それは生き物が最も輝く崇高な行為なのです。

なのに、まごうこと無きこの国の敵であるわたしを恐れて目を逸らし、それよりも身内同士での睨み合いとは…。

自分が戦って勝てる弱い相手にしか戦いを挑まないとでも言うのですか?

それは戦いではありません、只の弱者いびりというものですよ。

この国の軍は戦いというものを侮辱しているのですか!

わたしが戦いというものを教育してあげましょう!」


 わたしはそう言葉を述べると、凄まじい数の戦闘機群が滞空する空中へと瞬間移動した。


「戦う気概の無い弱き軍は爆ぜなさい!」


 わたしの瞳が輝いてその視覚範囲に居た戦闘機群は全てが粉々に吹き飛んで消滅した。


 視覚外に残った戦闘機群の幾つかはバルカンや空対空ミサイルで攻撃を仕掛けて来る。

 わたしは破壊の意思を込めた手を振るって戦闘機もミサイルも全て引き裂いてバラバラに吹き飛ばした。

 攻撃を仕掛けた戦闘機が一瞬で吹き飛んだのを見届けた残りの戦闘機群は一斉にこの空域から離脱を始めた。


 わたしから離れた距離に居た戦闘機群は既に逃亡を開始しており、わたしを中心にして全ての戦闘機群は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 わたしは破壊の意思を込めた両手を振りかざして全速で離脱中の戦闘機群を捉えて次々と粉々に吹き飛ばす。

 しかし戦闘機群は後続がやられるのも意に介さず一目散に逃げていく。


「…もういいです、わたしは白けました。

ハクリュウ、『シルフィア』を投下して終わりにしなさい。

この国の軍が各勢力の寄せ集めの集合体というなら、その勢力全てに各個シルフィアを向かわせれば問題ないですよね。数だけは多いですからベイ国の二倍ぐらいで良いでしょうか」


「御意。首都ホキンの迎撃に10機を降下、各空母群に2機づつ、各七地方の勢力に10機づつ降下させ、予備戦力として10機を降下させます」


 わたしはマントを翻しヴァーンニクスに帰還しようとした時、突如凄まじい”甘い匂い”が鼻を突いた。


「ハクリュウ、シルフィアの発進中止! 何か、”巨大で嫌なもの”が空間跳躍して来ます!?」


 わたしの前にヴァーンニクスの三倍以上の全幅ぜんぷくの巨大な城が出現した。

 その城全体には巨大な花とイバラを生やした巨大肉食花が巻き付いてる。


「この毒々しい城は…『水麗毒蛇長城すみれどくじゃちょうじょうヒガンバレイズ』ですか!?」


「うふふ、毒々しいとは随分失礼ねえ瑠詩羽。綺麗なバラには毒があるものなの。こんなド田舎に飛ばされた妹の困った顔を見たくて出向いてきたわよ」


 ヒガンバレイズからわたしの見知った声が響いた。

 宇宙宮皇族の長女で第二皇女、愛衣羅あいらの声である。





※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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