8話 入場
短めです。
先ほどの冒険者が言っていたけど、私ってそんなに魔力垂れ流してるの?
自分ではよくわかんない。
ただこの魔力の垂れ流しによって冒険者に襲われる形になった。
そんな訳で、魔力を隠蔽しておけば冒険者に襲われることはないじゃない!と誰もが思いつきそうなことを考えついた私は、早速実行に移した。
《時空魔法》で“結界“を薄く展開し、自分の身体にピッタリ張り付くように纏う。
その結界から魔力が漏れないようにすれば完成だ。
うん、よし!
自分じゃよくわからないけど、多分大丈夫でしょう!!
私は再度歩き始めた。
道中やたらと魔物が襲ってきたけど、私が手を払うだけで遠くに飛んでいった。
大袈裟じゃない?そんなに力込めてないよ?
そうこうしているうちに森を抜け、平野にでた。
町に向かう途中冒険者の人とたくさんすれ違ったけど、みんなして私を二度見するんだよね。
何だろ?私の顔に何かついてたのかな?
私を見た時、少し顔が赤くなってる人もいた。
風邪でもひいてるのかな?お大事に。
数時間ほど歩くと、遠目に城壁が見えてきた。
あの城壁都市はこの前クジラの姿の時に見たところかなぁ?
多分そうだ!数十キロ離れたここにも美味しそうな匂いがするもん!!
そんなわけで私はその城壁都市に向けて気持ち早歩きで歩き続けた結果、1時間ほどで門の前につきました。
しかし、私に重大な問題が。
「身分を証明できるんものを出せー。」
鎧を着た兵士にそう止められてしまったのだ。
残念なことに、私はこの世界で身分を証明できるものを持っていない。
まぁ、海で生活してたクジラなんだから持ってたらおかしいんだけどね!!
「あ〜...持ってないんですよねぇ...」
私が申し訳なく見えるように言葉を絞り出すと、兵士が怪訝な顔をする。
「持ってない?獣人の街とかでもらえなかったのか?」
兵士の言葉に私は慌てる。
やばい、設定を何にも考えてなかった。何とかそれっぽい設定を考えよう。
「じ、実は私一人暮らししてたんですけど、外出している間に家が焼かれてしまいまして...生活に必要なものが全てなくなってしまったんですよ。なので冒険者になってお金を稼がなきゃいけないんですよ...」
自分で言っててもわかる。なに言ってんだ私?
設定がめちゃくちゃじゃねえか。
しかし、兵士さんにはよく効いたようで、
「そんなことがあったのか..なら特別に入れてやろう。しかし犯罪歴がないかだけ確かめさせてもらうぞ?」
「はい、大丈夫です。」
ほっ、何とかなった。
何やら水晶玉に触るだけでその人物の犯罪歴がないか見れるようだ。ちなみに犯罪歴があると水晶玉が赤く発光するそうだ。
もちろん、私は犯罪なんか犯していないため何もおこらない。
「おし、大丈夫だ。最近魔物が強くて危険だからな、外に出る時は気をつけろよ嬢ちゃん!」
「はい!兵士さんもありがと!!」
おのおじさん兵士、なかなか優しい人じゃないか。
私の前世のお父さんといい勝負だ。
納得しそうな嘘をついてしまったことに少々心が痛いよ。
それはともかく、町に入った瞬間に美味しそうな匂いが周囲に立ち込めているではないか!!
これはなんだ!?焼き鳥か!?
肉というだけでこんなに美味しそうに感じるのは久しぶりだからかな?
とりあえず食べたい!!
「おじさん!一串ちょうだい!!」
私は近くの串肉屋のおじさんに話しかけるとおじさんはニコッと微笑んだ。
「おう!銅貨3枚だぜ!!」
銅貨3枚。
そういえば前に沈没船を漁ってた時にとんでもない量の財宝を積んでたものがあったから、財宝だけ取って置いたんだよね。
使うかわからなかった《異空間収納》を使わせてもらいました。
ありがとう財宝。これのおかげで私は串肉に出会えました。
チャリーン、銅貨3枚。
「おう!毎度あり!熱いから気をつけろよ!!」
そう言って手渡された串肉に私は勢いよくかぶりついた。
鼻を突き抜けるスパイシーな香りに程よく感じる塩味、そして噛むたびに溢れる肉汁。
こ、これはっっっっ!!!!
「美味しい...!!!」
「ははっ!!嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!!」
ガハハと豪快に笑う串肉屋のおじさん。
私ははぐはぐと肉を完食すると、追加で串肉を30本ほど購入した。
串肉が美味しすぎるのがいけないんだよ。
歩きながら食べよう。
《異空間収納》に入れておけば時間は止まるから冷めることもない。常に熱々だ。
このベリーデリシャスな串肉がお金がある限り永遠に食べ続けられる...
なんて素晴らしい!!
この財宝もいつかは無くなってしまうのだから、自分で稼げる手段を見つけておこう!
まぁ、異世界といったら冒険者一択なんですけどね。
というわけで行ってきます!冒険者ギルド!!!