2話 魔法
クジラ生活、満喫します。
私が使える魔法は、《海魔法》と《音魔法》、《物質創造》、そして《時空魔法》か。
《鑑定EX》はすでに使っているため、割愛する。
これらの魔法は具体的にどんなことができるのかな?
《海魔法》海流操作など、海を操ることができる。
《音魔法》音を使って超音波や、衝撃波を発生させることができる。
なるほど。
《海魔法》は、海流を操作することで速く泳いだり、足止めを行うこともできる。また、津波や渦潮などを意図的に発生させることも可能というわけか。
そして《音魔法》は、自分の発生する音に魔力を乗せた魔法だ。
最初に自分の姿をなんとなく確認できたのは、この魔法のおかげなんだとか。
クジラやイルカなどの水生哺乳類は、エコーロケーションという超音波を使って情報を知覚し、周辺環境の確認や獲物の採取に役立ている。また群れの中の意思疎通も、エコーロケーションで行っているそうだ。
私は無意識に魔法を使っていたようだ。
言われてみれば、視界に入っていない周囲の状況が手にとるようにわかるのも、超音波によるものなのか?
超音波ってすごい!!
私の場合、もっと大きく音を出せば海全体をも確認できるらしい。
やってみよう。
口を大きく開けて....
ボオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!!!!!
凄まじい音の波が広がり、通過した場所の情報が頭の中に入ってくる。
珊瑚礁、魚の群れ、大量発生したわかめ、サメの魔物、大きなイカ、海面の船、深海の宝船。
ここまで詳細な情報がわかるなんて、超音波すごいな!!
そして、《音魔法》の衝撃波か。
気になるよね?私も気になる。
でも、先程の超音波でも周りに結構な衝撃があったっぽいんだ。
衝撃波を出そうもんなら、海の生物が全滅してしまう
いつか海面に出た時に試すことにする。
《物質創造》と《時空魔法》は今のところ使う機会がなさそうだから、また今度にしようかな。
少し動いたらお腹が空いてきたな。
そこまで考えて、私はあることが思い浮かんだ。
...クジラって何を食べるんだろう?
某お魚アニメ映画によると、クジラの主食はオキアミというエビの形をしたプランクトンらしい。詳しくは知らない。
それに気がついた私は少しショックを受けた。
こんなに大きな口があるのに、食べるものはあんなに小さいのか...
いや、決めつけるのはまだ早い。
ここは異世界、地球の常識はこの世界では通用しないかもしれない。
地球のクジラはなんかしらの理由があって食べない、もしくは食べられないのかもしれないが、私は異世界産のクジラ。
私が食べるものは私が決めるのだ。
というかクジラってこの世界で私しかいないんだから気にする必要ないんじゃない?
そんなわけで、魚食べてみました。
超音波の衝撃で気を失っていた大きな魚を一口でパクリ。
大きな顎を動かして複数回咀嚼をし、そのまま飲み込んだ。
うん、問題なく食べられる。
クジラの私は雑食だったようだ。そこらに生えてる昆布もどきも食べられた。
ていうかこの魚美味しいな!?
どうしてこんなに美味しいんだろう?
《鑑定EX》で調べた結果、魔素量が関係しているようだ。
この世界は魔素で満たされており、魔素の吸収率で生物としての強さが変わる。
魔素というのはいわゆる星のエネルギーであり、星の核から生み出される命の元である。
魔素というエネルギーを多分に含んだ動植物は栄養価が高く、高級品として扱われるのだとか。
しかし、高級であることにも理由がある。魔物の存在だ。
魔物とは魔素があるところに自然発生する生き物であり、周囲の魔素濃度によって発生する魔物の強さも変わる。
魔素を多分に含んだ動植物がいる環境は魔素濃度も高いため、強力な魔物が発生する。
入手が困難であるがゆえ、値段も跳ね上がるのだ。
海という環境は星の核との物理的な距離が近いぶん陸よりも魔素が多く、深海にいくほど魔素濃度も高くなる。陸と比べても強い魔物が生まれやすい。
海の魚は内包された魔素が多くとても美味なのだが、海に生息する魔物が強力なせいで捕獲が難しい。
海面、海中での魔物との戦い方も限定されてしまうため陸の魔物よりも戦いが困難を極める。
この世界で、魚は肉よりも高級品なのである。
この情報を知った私はこの1ヶ月の間、魚をたくさん食べた。
高級品だもの、食べなきゃ損だよ。
このクジラの姿を見て襲いかかってくる肉食の魚を返り討ちにして食べる。
魔物が襲って来た時ももちろん食べる。
個人的には、魔物の肉は魔素がより多くてとても美味しかった。
こんなことをしているうちに体長はどんどん大きくなり、小型の船ほどの大きさだった私はこの1ヶ月で貨物船ほどの大きさにまで成長した。
成長しすぎだって?クジラなんてこんなもんでしょ?
さっきも超音波で美味しそうな魚いないかな...って探してたら、海面に大きなイカを見つけたんだよ。
サイズは甘く見積もって体育館程度。
でもイカなんてこの世界に転生してから初めて見たもんだから、もう興奮しちゃって!
泳いで近づいて、海面から飛び出した瞬間にパクついてしまった。
一口だったからそのまま深海に引き込んで、その後美味しくいただきました。
すぐそばに少し大きい船があったけど、船は美味しくなさそうだからね!
放っておいたんだ、偉いでしょ!?
なんでも食べるわけじゃないんだから!むふん!!
人生ならぬ鯨生はこれからなんです!
次回:人類Side