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18話 襲撃

更新できず誠に申し訳ございません。


今後も不定期更新かと思いますが、よろしくお願いします。


もっと頑張らねば...!!





分体の視界を見る限り、どこかの研究施設にある水槽の中に入れられているようだ。


まぁ戦闘能力なんて皆無だし考える力もないから捕まえられたってどうしようもないよね。


色々調べられたところで特に何も困らないから、放っておくことにする。


一応、その目でみた映像は私に転送しておいた。


分体を捕まえたのは先日ギルド内で見かけたあの冒険者たちだった。


たまたま海面付近で見つけてしまったようで、即座に網で捕獲されたようだ。


まぁ奴には自我がないししょうがないよね。





海全体に超音波を飛ばしながら他に異常がないことを確認していたアオは、急速に自分に向けて近づいてくる存在を確認した。


しかも、空から。


現在クジラの姿になっているアオはその方向に顔を向けることは難しいので、目線だけをそちらに向ける。


翼の生えた魔物が群れを成してこちらに向けて飛んできており、近づくにつれギャアギャアと鳴き声も聞こえてくる。


ワイバーン...っていうのかな?爬虫類のような柔く煌めく鱗に縦に細く鋭く尖る眼、開いた顎から覗く牙、そして大きく広がる翼。


トカゲに翼を生やしたような魔物、といえば想像がつくと思う。


そしてなぜか、ビシバシと殺気をぶつけられているんですが....


よく目を凝らしてみると、ワイバーンの上に人が立っているようにも見える。褐色の肌にツノが生えているようにも見えるが、彼らは人間...なのか?


「...奴が例の...?」


「そうだ、我らが魔王様の障害となる存在は消さねばならん。総攻撃だ」


念話で話をしているようで、アオの《音魔法》がその念話を拾った。


司令官のような人物が手をあげると、ワイバーンの口に魔力が集中する。


(あ、これは魔法撃たれるやつや...)


アオがそんなことを考えていると、彼は挙げていた手をシュッと私に向ける。その瞬間、全ワイバーンの口から《ファイアーボール》が放たれた。


放たれた魔法はまっすぐアオに向けて飛んでいき、アオ自身と周囲の海面に着弾し爆発する。


《ファイアーボール》の熱で海水が蒸発し、アオの周囲は水蒸気で白く染まる。


「...やったか?」


「これだけ集中砲火されたらもう終わりだろう。」


そう言って彼らは砲火地点には目もくれずに飛び去ろうとした。




その時、



不意に彼らを大きな影が覆う。


「あ?」


「なんだ?今日は快晴だったはずじゃ...」


全員が困惑して空を見上げると、大きな物体が太陽を覆い隠していた。


「(死ぬ覚悟はできてるんだよね?)」


彼らは突然頭に響くように聞こえてきたアオの声に彼らは身動きを取ることができなくなった。


特に魔法をかけられたわけではない。ただ純粋に恐怖しているのだ。


生物としての格の違いをこれでもかと見せつけられたことで。


彼らは身動きを取ることもできず、目の前の生物がただ大きく口を開けて迫ってくるのを見ていることしかできなかった。


そして、そこで彼らの生命は終わった。







「(...ワイバーンってあまり美味しくないなぁ...)」


全てのワイバーンとその上に乗っていた人を一口で飲み込んだアオは、静かにそう思った。


前世のとある動画サイトにて蛇の肉を食べている人の動画がごくたまに上がってくることがあり、鶏肉のように美味しいと言っていたので期待していたのだが...


まぁ、理想と現実は違うってことだよね。


そう考えながら海に落下していく私は、一旦人型に姿を変えてから海にダイブした。


人型に変わった理由は至極簡単、クジラの私はでかいからだ。


日々成長を続ける私の大きさは、すでに一つの島と大差ない。


海に落下しようものならたちまち津波が発生し、近海にある陸地は壊滅してしまうだろう。


「(まぁ、飛べばいいだけなんだけどね。)」


滞空してゆっくり着水すればいいだけの話なんだけど、そこは元高校生。


勢いでいくことも大事だと思っている。



飛び込んでその場にいた魚を咥えると海面にあがる。


周囲の様子を確認すると、アオはガッツポーズをした。


「よひ、ひはいはへへはい。よふやっはわはひ。(よし、被害は出てない。よくやった私。)」


「いや、僕にめっちゃ被害出てるんだけど?」


そのまま海に戻ろうとしたアオに後ろから声がかけられた。


ゆっくりと振り返ると、そこには先ほどワイバーンの上に乗っていた人と同じような容姿をした女性が、先ほどワイバーンより一回り大きなワイバーンに乗って降りてきていた。


先ほどの奴らと決定的に違う点は、溢れ出す魔力量だろう。今まで会ったどの人物よりも魔力量が多い。


アオは咥えた魚を咀嚼して一気に飲み込む。鯵じゃんこれ。うま。


「...だれ?」


「...君が食べた魔族たちの上司だよ。敵討ちするつもりはないから安心してくれ。」


「...そうですか。」


アオは自分が被害者だと思っているので、死んだからって加害者側が敵討ちを目論むものなら一族郎党丸呑みにしてやる所存だ。


しかし彼女はそんなつもりはないそうなので、アオは特に気にしないことにする。


「で?なんの用ですか?」


アオが周囲をすいすいと泳ぎながらそう質問すると、彼女は《アイテムボックス》からクリップボードとボールペン、そしてなんらかの書類を取り出した。


「あぁ、簡単にいえば君をスカウトしにきた。」


「...スカウト?」


「あぁ、君を魔王の配下としてな。全12人いる魔王の一人、僕ガルムフェルナの配下として」


「いやだ。」


「うむ、悩むと思...え?いやだ?」


ガルムフェルナという魔王はポカンとした顔でアオを向く。


「私には私の仕事がある。魔王の配下なんて無駄な仕事が増えそうだ。だからいやだ。」


「い、いや、そこをなんとか...ほら!君は人間が嫌いなんだろう?ちょくちょく人間を攻撃しているじゃないか!!」


人間を攻撃?前の正当防衛のことかな?


「あれは人間がいきなり攻撃してきたからやり返しただけ。あなたの配下と対応は同じだよ。」


「えぇ、代償が大きい...じゃ、じゃあ!!美味しいものたくさんあるよ!クラゲのソース焼きとか!!」


ガルムフェルナは《アイテムボックス》から串に刺さった食べ物を取り出し、アオに差し出す。アオはそれを受け取ると一口食べ、顔を顰めた。


「これなら王都で食べた肉串の方が美味しいなぁ...」


「うそぉ!?魔王城下で一番の串焼きなのに...じゃあ...」


「もうよせ、ガルムフェルナ。」


「!!」


突如後ろから聞こえた声にアオは固まり、ガルムフェルナは声の主を見て硬直する。


「だ、大魔王様....」


ビビり散らかすガルムフェルナを見、大魔王と気配を感じたアオは一瞬で悟った。


この人には絶対に勝てない。


魔力量はおそらく隠蔽しているだろうが、アオの《鑑定EX》を持ってしても能力の底が見えない。


間違いなくこの世界で最強の存在だ。


「私が世界最強などと思ったら大間違いだぞ。龍王や精霊女王は私と同格、創造神や破壊神といった格上もいる。」


「!!創造神様を知ってるんですか!?」


自分の生に関係のある名前が出てきてアオは思わず振り返った。


そこにいたのは紅い髪に蒼い瞳の美丈夫であった。ガルムフェルナと違う点といえば、肌が褐色でないことと角がないことぐらいか。


彼は一人で空中に佇んでいた。《時空魔法》を使っているようなので、アオと同じ原理で飛んでいるのだろう。


大魔王とやらは眉を少し上げ、声を発する。


「知ってるもなにも私や精霊女王、龍王を生み出したのはあの方だ。」


!!!?


生み出した!?


創造神様って生み出すこともできんの!?こんな理不尽な存在を!?


まぁ確かに創造神様自体が理不尽な存在だからそれにも納得か。私を転生させることもできるんだもんね。


それにしても、精霊女王に龍王かぁ...


「本当にファンタジーだなぁ...」


アオの言葉を大魔王は特に気にした素振りも見せず、ガルムフェルナの襟首を掴む。


「大魔王様!!何卒、何卒...!!」


「やかましい。彼女は創造神の配下なのだ。手を出してはならん。」


ガルムフェルナが顔を青褪めさせていると、大魔王はアオに向き直った。


「アオ、と言ったか。うちのものが失礼した。後日精霊女王と龍王も紹介しよう。」


「あ、はい。」


アオとしてもありがたいことだった。


こんな理不尽な存在が敵対するわけじゃなくて。しかもその同僚を紹介してくれるときた。


創造神様の話題で会話できるのは嬉しい。


「私はゴル・デビリアスだ。其方が話したいことがあれば念話を飛ばすといい。できる限り応えよう。ではな。」


そう言って大魔王は《瞬間移動》で消えた。





......世界は広い。


アオはどっと汗をかいた。今日はもう休もう。


そしてアオは海深く潜っていった。









その様子を使い魔である大型の鷹の背に乗っていたギルドマスターが見ていた。


魔物の集団を感知し単独で調査に来たギルドマスターは、ワイバーンに乗った大量の魔族が上空から海の魔物に攻撃している様子を見ていた。


魔族たちは度々情報に上がってくる海の魔物を配下にしたかったようだが、対応を間違えたらしく丸呑みされて終わった。


しかし問題はその後だ。


かの魔物が眩い光に覆われたかと思えば、その光の中から出てきたのは一人の少女だった。


しかも、その少女は自分が保護対象として特例で冒険者の試験に合格させた『海人族』と思っていた少女。


「おいおい、あれはアオの嬢ちゃんじゃねえか...マジかよ...」


その後、彼女が魔王と接触した時には肝が冷えた。


あの魔物が魔王軍に属してしまった場合、今の人類が勝つ術はなくなる。


そう思っていたところで、更なる理不尽が舞い降りた。


あんな存在がいてもいいのか!?


一目見た瞬間に絶望した。


しかもその絶望は自分の存在に気がついていた。


いつ自分の命が刈り取られてもおかしくないこの状態。


身動きすらできなくなった。


しかし彼らは特になにをするわけではなく、そのまま別れた。


アオも海に潜っていった。


一部始終を見たギルドマスターはその場で深呼吸をして気分を落ち着けると、全速力でギルドに戻った。


今見たことをアオの嬢ちゃんに問いただしてみねば。


いざというときは....


現役を退いて数年。人生最大の戦いがこうして訪れるとは思わなかった。


そんなことを考えるギルドマスターであった。





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