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17話 束の間

次回更新日は未定です。


長らくお待たせしてすみません。





王様に身バレしてから2週間が経った。


その間冒険者の会員証を通じての連絡もなく、アオは自堕落な生活?を送っていた。


創造神様にもらった島はとても快適で、草原で寝転がると瞬く間に眠りにつける。


この島で私の惰眠を邪魔するものはいない。


《時空魔法》がある私にとっては天気も関係ない。台風がきたとしても結界で島を守ればいいのだ。


ご飯が欲しくなったら海に飛び込み、魚をかっ喰らう。


または備え付けのお家で料理する。


焚き火ってなんだか落ち着くね。ハ○ジみたいで。


そういえばこの身体は食事は必要ないらしいのだ。魔素が食事代わりになるらしく、食事はもはや趣味である。


あれ?これ前にも話した気がする?気のせいかな?


身体の大きさは以前にも増して大きくなった。比較できるものがないから表現しづらいけれど、今の私は少なく見積もっても某ネズミキャラの遊園地並みの大きさといってもいいだろう。


そんなに大きくなった私でも海は自由に泳げるのだから、海とは偉大なものだよね。


生命の起源、海、万歳!


もちろん海の管理の仕事は年中無休だ。しかし分体を通じて見える海は何も変わりないし、超音波で定期的に海全体の確認をしているけれど何にも起きていない。精々船が何隻出航した程度だ。報告を上げる必要はないけれど。



○月×日 今日は海は平和だ。

○月△日 今日も海は平和だ。


・・・・


こんなのが2週間も続いてみいや。クジラ形態で日光浴するのにも飽きるってものさね。


アオはお家で揺れる座椅子に座りながら目を閉じていたが、突如ぱちっと目を開けた。


「冒険者ギルド行こうかな。」


薬草摘みの依頼からまたもや長い時間が経ってしまった。そろそろ剥奪されそうな気がする。


生活するには困っていないからぶっちゃけ必要ないのだが、身分証がないと王都に入れないのは勘弁願いたい。


王様から身分証明書くらいは用意すると言ってくれたのだが、そんな特別扱いされてしまったら目立ってしまう。


王都に入るたびに

『え!?陛下の許可証だって!?あの娘は何者なんだ...』とかね。


そんなめんどくさいことはしていられん。


それに、適度に小銭を稼がないと買い食いができないから!


さぁ、王都に転移しますかね。




♢♢♢



依頼票を貼り付けてある壁の前で、何やら言い争っている。


「お前さん、この依頼はやめといた方がいいぞ。」


「なぜだ!僕たちはもうB級の冒険者だぞ!?海での依頼も余裕だ!」


「B級だとしても【サンマンタ討伐】は実質A級の依頼に近いんだ。B級上がりたての実力じゃまだ早い。」


「僕たちの実力は既にA級相当なんだ!こんなB級の依頼程度大丈夫!!海中専用の武器だって持っているから!!」


「海ってのはそんなに甘くねえぞ」


すぐ横で繰り広げられる若干ずれたテンプレ的光景にアオは眉を顰めた。


先ほどから騒がしい冒険者は新品のそこそこ良さげな装備に身を包んだ青年だ。年齢は高校生程度だろうか。顔立ちが幼く見えるから初心者の冒険者っぽく見えなくもない。

そんな彼を宥めているのは使い込んだ上等な装備に身を包む年を重ねたお兄さん..いや、おじさんかもしれない。おじさんが5人、初対面だとその強面が少し怖いかもしれない。実際私も少し怖かった。


何も知らない人が見れば初心者の冒険者にちょっかいをかける強面の冒険者だが、中身は実力を過信する中ランク冒険者を説得する上級冒険者という構図だ。


あのB級冒険者が異世界転生主人公でチートを持っていた場合はここで争いが起こり、決闘に勝って受付嬢から『あなたってすごいんですね!』と褒めてもらって、高難度の依頼を次々にこなして一気にランクアップ!!とかいう流れになるんだろうけど。



私の《鑑定EX》で確認したところ、B級の彼はそこそこの実力は持っているようだが、サンマンタ討伐は圧倒的に実力が足りていない。魔力量も体力も技術も中途半端というか、訓練すればいいところまでいけそうなのにその努力を怠っているような感じなのだ。


逆に上級冒険者の方は、今この場にいる冒険者の中でもトップに近い実力を持っている。筋骨隆々の肉体に反射神経、背中の大剣を自在に振るえるほどの技術、そしてスキルの扱い方もよくわかっているし魔力量も多い。その実力に驕れることなく研鑽に励むその様子からギルドからの信頼は厚い。その実力からA級の冒険者のみで構成されたパーティのリーダーを務めているとのこと。


ちなみにこの情報も《鑑定EX》の情報だ。


彼がここまで説得するのには理由がある。


サンマンタとは、地球にもいるマンタと同じで海に生息している魔物で、体長はおよそ3メートルほど、討伐クエスト難易度はA級よりのB級だ。

基本的に穏やかな性格で基本的にマンタ側から攻撃を仕掛けることはないが、攻撃を受けると凶暴化し相手の命が尽きるまで攻撃をやめないという恐ろしい魔物だ。


であればぶつからなければいいというものだが、ことはそう簡単ではない。


なぜならば、サンマンタの表皮は光を吸収することで透明化し周囲に溶け込む。戦闘機顔負けのステルス性を有するのだ。ぶつかるまでその姿を確認できないのだが、ぶつかってしまったらそこからサンマンタは凶暴化し襲いかかってくる。

ちなみに凶暴化中は表皮が真っ赤になり、視認できるようになる。


今までに何人もの昇級したてのB級冒険者が命を落としているのだ。


そのような経過があるだけに熟練冒険者はキッパリと忠告している。


しかし、そのB級は聞く耳を持たず依頼票を持って受付へと向かっていった。


「はぁ、生きて帰ってこれればいいが...」


「海の依頼は報酬が高いからなぁ、報酬に釣られて危険度を知らずに受けるやつの多いのなんの...」


「「はぁ...」」


A級のため息がここまで聞こえてくる。


まあ私には関係ないけど。


とりあえず手頃な依頼はないかな...


「おい、俺らも海の依頼受けるぞ。」


「おいまたか?この前もB級の尻拭いしてたじゃねえか。」


「B級が減っちまうのはよくないだろ?A級になれるほどの人材は少ないんだし、A級まで上がるかもしれない人材をみすみす失うわけにはいかねえからな。ある程度はそいつらにやらせて危なくなったら手助けすればいいだろう」


「はぁ、わかったよ。じゃあこの【巨大生物分体の捕獲】でいいか?」


「あぁ、それなら大丈夫だろう。報酬もそこそこあるしな。」


「じゃあ受注してくるぞ」


横の会話を聞き流しながらアオはとあるE級の依頼を見つけた。【迷子の猫探し】だって。

初級の冒険者らしいじゃん!これにしよう。


アオも依頼票を持って受付に向かい、依頼を受注して外に出た。


「海の依頼受けたの?大丈夫な依頼だった?」


「海は危ない...他のはなかったの...」


「あぁ、報酬もよかったし俺らもうB級だろ?海が危ないなんてのはよく聞く話だが、俺たちなら大丈夫だって!」


「そ、そう。まぁあなたがそういうなら大丈夫ね!」


「ん...トマスがいいなら...いいよ...」


「よし!それじゃあいくぞ!!」


先ほどのB級の青年と二人の美少女が一緒に歩いていった。


あの組み合わせってよくあるのかな?男子一人に女子二人、しかも女子は魔法使いと治癒士だ。


近接で戦えるのがあの青年しかいないみたいだな...


まぁ私には関係ないけど。


それじゃあ猫、探しますか!!


♢♢♢



猫は割とすぐに見つかった。


私の《音魔法》の超音波を使えば、王都内の全てを見通すことなんてヘソでお茶を沸かすより簡単なのだよ。


迷子の猫は普通に屋根の上におり、見つけた瞬間にその場に転移、すぐさま捕獲しました。


猫を届けに依頼人の元へ向かったら、お茶でもどうぞと中に招き入れられた。


依頼を出していたのは王都在住の紅髪のおばあちゃん(75)、とても大きなお屋敷に住んでおり屋敷内にはたくさんのメイドさん、おばあちゃん専用の執事までいた。もしやどこかの貴族なのではないだろうか?


彼女は息子に家督を譲っており既に隠居の身らしいが、孫も大きくなってしまいやることがなく暇していたそうだ。そのため、時間があるときに話し相手になってほしいとお願いされた。


まぁ私も暇な時間が多いので二つ返事でOKをした。


ある程度お話しをした後でお暇したが、若い頃の話を聞くのは楽しかった。特に聖騎士だった時の話は臨場感があって思わず聞き入ってしまった。


「次来た時は門番にこれを見せな」と言われ、身分証に何やらちょいちょいと追記されたが、身分証を見せたときに「陛下とギルマスも目を付けてんのかい」と呟いたのが聞こえた。一体なんなんだろう?


何はともあれ、依頼も達成したことだしアオはギルドへと向かった。


冒険者ギルドの受付にて依頼達成の報告をしたアオは寝るためにすぐに自宅のある島へ転移し、ベッドで眠りにつくのだった。





その翌日、分体を通して日課である海の確認をしていたところ、奇妙なことが起こった。

分体の一体の視界にたくさんの人間が写っているのだ。

しかも着ている服は普段着、メガネをかけた研究者のような人間が多かった。




どうやら分体の一体が捕獲されたようだ。






次回は冒険者視点を綴ろうかと。

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