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16話 露見

早めに更新すると行ったのに遅くなってしまい大変申し訳ありません。


更新頻度はもう少し頑張ります。






「ところで、そなたが魔物だというのは本当か?」


カルロスの爆弾質問が飛び出した。


「へ?」


アオは思わずカミラに顔を向ける。


カミラは静かに頷いたことで、アオはもう隠す必要がないことを察した。



「..まあ本当だよ?今は人型を取っているだけだから。魔力の放出は抑えてるからね」


「本当なのか..そしておさえた状態で聖騎士とまともにやりあえるのか...」


カルロスは目を閉じ、眉間を抑える。


ニコラスが口を開く。


「アオ殿、魔物の時の姿を見せてもらうことはできるか?」


「できるけど、この部屋の中では無理かな。入り切らない。」


アオが周囲を見渡しながら答えると、ニコラスがやや顔を引き攣らせながら浮かべる。


「謁見の間は城内では大広間に次いで広いのだが...ここでも足らないのか..」


「私の住処だったら近くに人は来ないから、よければ案内しようか?」


アオが姿を見せる場所として提案すると、ニコラスが困ったような表情で言葉を発した。


「君の住処とは魔物の領域だろう?聖騎士の護衛付きとはいえ君のような強い魔物が跋扈しているところに陛下を連れて行くのはまずいのだが...」


「あ、それなら大丈夫。あの領域で私より強いのいないから。」


アオの話す言葉にカルロスたちは安心したような表情を浮かべるが、カミラだけは思案した表情を浮かべる。


(アオさんは海の魔物じゃなかったか?その領域で自分より強い魔物はいないと言っていたが、そう考えると海にはアオさんより強い魔物がいないということになる?もしかするとアオさんの正体は....?)



カミラが深く考えている間にアオは《時空魔法》で転移門を作成し、無人の浜辺と繋いだ。


突如目の前に出現した転移門にびっくり仰天のカルロス達だったが、アオがひょいっと飛び越えるとすぐに切り替えて門をくぐる。


最初にヘンリが通り、安全を確認してからカミラの先導でカルロスが通る。そして最後にニコラスが通った。


転移門の先はとある無人島。陸地は森や草原など緑が生い茂り、周囲は断崖絶壁。外からの侵入を拒む自然の要塞となっている。


周囲に満ちる魔素はどこか澄み切っており、なぜか魔物が一切発生しない土地となっている。


「魔素濃度がここまで高いのに魔物の気配がない...?こんな場所が存在していたとは...」


ニコラスやカミラ、ヘンリの反応の横で、カルロスとハビエルはもはや言葉もない。


「知らなくて当然だよ。この島は外から見えないんだから。」


「外からは見えない...?」


実はこの島、創造神様が作ってくれたのだ。


転生してからしばらくたった頃に私の家がないことに気がついたようで、「お家作っておいたからね〜」という念話とともにこの島を案内してくれたのだ。


アオ自身はクジラとして生活する以上海が家なんじゃないの?と思っていたのだが、創造神様曰く、


「海はみんなのものですから〜。あなた個人の家が必要でしょう?」


とのことだ。


今彼らがいるのは崖付近だが、家は内陸の方にある。


全員が転移門をくぐったところでアオは転移門を閉じる。


「さ、ここなら広いから見せられるよ?」


「...確かに広いが、アオ殿が向いているのは海の方角じゃないか。」


海の方向を見ながら話すアオにニコラスがツッコミを入れる。


「うん、こっち側が正しいからね。」


「正しい?」


ニコラスの言葉を聞くが早いか、アオは崖からヒョイと海に向かって飛び降りた。


「「「はあぁぁぁぁ!!!????」」」


崖から身を乗り出して飛び降りたアオに顔を向けると、突如眩い光が視界を覆う。


ニコラス達は思わず目を閉じた。


ーーザバァァァァァン.....


崖の上のニコラスたちの耳に水飛沫の音が響き、目を開けるとそこにいたのは...。


世界で一番危険と言われている領域“海“に生息しており、ここ最近話題に上がることの多かった魔物。


調査に向かった冒険者たちが返り討ちにされて戻ってきたのは記憶に新しい。


『これが私の本当の姿だよ?』


頭に鳴り響くアオの声がそれを真実だと突きつける。


彼らの目の前には、『クジラ』がいた。




♢♢♢





「ごめんね、まさか失神するなんて思わなくて...」


「いや、其方は自分の姿を見せただけだ。気にしないでくれ。」


アオの魔物形態を見た彼らの反応は様々だった。ニコラス達3人の聖騎士は驚愕に目を見開き、手が少し剣に伸びかけていた。カルロスとハビエルは白目を向いて気を失っていた。


復活したカルロスとハビエルの顔が若干赤くなっているのは気のせいだろうか。


そこでカミラが難しい顔をしながらアオに問いかける。


「アオさん、私が以前““巨大な黒い魔物は知っているか?“と質問をしたのを覚えているか?」


「え?そりゃあもちろん。」


「しかし君は知らないと答えただろう?なぜ嘘をついたんだ?」


カミラの真剣な眼差しにニコラス達も視線をアオに向ける。


「え?私以外に黒い大きな魔物は知らないなぁと思ったから知らないって答えたんだよ?」


「...え?...っ海の魔物が空を飛ぶといった質問には?」


「私以外にも空を飛ぶ海の魔物がいたんだっていう驚きが強かったかな。」


「....」


「あれ?どうしたの?」


カミラが地面に膝をついているのを見てアオは困惑する。


「アオさん、君はこの国を滅ぼしたいと思うか?」


「...?特にそう思う理由もないけど...?」


「そうか...」


常に張り詰めていたカミラの心が少し楽になった気がした。




ーー王城 謁見の間ーー



アオに再度王城まで転移にて送り届けてもらい、アオが帰っていったその夜。


魔物アオと相対した5人は謁見の間に集まって会議を行なっていた。


「さぁ、これからどうするか...」


カルロスの声に全員が頭を抱えた。


彼女自身は基本的に仕掛けられたら対処をしているだけであり、自分から人類に対して何かしらの危害は加えていない。人類が何もしなければ基本的に無害であることはわかった。しかしだからといって彼女の素性を公開することはできない。魔物が人界に紛れているということが人々の不安を煽ることになりかねないからだ。


魔物は敵、見かけたら倒すというのが世界の常識。


もし彼女の正体が明かされるものなら騎士や冒険者がこぞって彼女を討伐しに向かうだろう。そうなればこの国は終わりだ。


「隠すしかないでしょうね。」


「だな。」


カミラの呟きにニコラスが頷いた。


「貴族会議で提案されているアオさん討伐作戦についても考え直してもらうしかないな。国を挙げての討伐作戦は許すつもりはないが、貴族の私兵や冒険者を募集して討伐に向かわれた場合は対処ができなくなる。」


「理由はどうします?彼女の素性を明かすわけにもいきませんが、貴族連中を納得させる理由がなくてはいけませんよね?」


ハビエルはニコラスの問いに少し考える。


「それについては今日戻ってきた冒険者の船を理由にすればいいだろう。それなりに上位の冒険者が手も足も出ずに撃退されたとなれば、おいそれと手を出すわけにはいかんということにしてな。」


「なるほど」


カルロスの言葉にニコラスが納得したように頷いた。


「彼女の敵意がこちらに向かないことを願うばかりですね。」


ヘンリの言葉に全員が顔を上下に振るのを最後に会議は終了した。





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