15話 謝罪
遅くなってしまいすみません。
次回は頑張って早めに更新したいと思います。
※私→アオ
固有名称を確定させます。
ーーーーズドン...ズドン...
城壁の外で地響きのような音が鳴り響き、砂煙が上空まで舞い上がる。
カミラは城壁の外へ向け王都の中を駆けながら渦中にいるヘンリを案じていた。
(何かと戦っているようだが...この圧倒的な魔力量はなんだ?ドラゴンとでも戦っているのか!?しかしこの魔力はアオさんと同じ..?しかしアオさんにはこれほどの魔力はないはず...)
「とんでもない魔力量だな...相手は誰かわかるか、カミラ?」
「...っすみません、見覚えのある魔力ではあるのですが...ヘンリ殿が一人で戦っておられるようです。」
「ヘンリか...早く加勢しなければ命が危ないな。急ぐぞ。」
「はい、団長」
聖騎士団長:ニコラスがさらにスピードを上げ、カミラはそれに追従する。
(ーーどうか無事でいて...!!)
♢♢♢
「....ぐっ!!」
「....」
ヘンリが後方へ跳躍すると次の瞬間、ヘンリのいたところにアオが拳を叩き込み大きなクレーターが出来上がる。
「こんな小さい身体のどこにそこまでの腕力が隠されてるんだよ...!!」
「私はこの小ささに凝縮されているだけなので、人間と私じゃ地力が違うんですよ。」
「地力の違いね...ということはあんたは見た目通りの姿じゃないってことか...」
口の端から血を流しながら考察するヘンリだが、その間もアオの猛攻は続く。
指先から放たれる潮水の弾丸を剣で弾きながら攻撃の機会を窺っていると、突然攻撃が止んだ。
「今更なんですけど、私ってあなたと戦う理由がないんですよね」
「は?」
ヘンリは突然何言ってんだといった怪訝な顔をした。
アオは腰に手を当て、ヘンリに顔を向ける。
「だって私は冒険者として薬草採取していたところをあの男がいきなり斬りかかってきた挙句、魔法で森を全焼させたことに怒っただけなので」
「はぁ!?森を全焼させた?殿下が?」
「その“殿下“っていうのが奴のことならそうですね。私の初仕事を台無しにしてくれおってからに...」
「冒険者ギルドの初仕事...ということはあんたF級か?」
「え?いやE級。」
「...ギルドマスターが何か隠してるってわけか。団長に報告して問いただしてやらんとな」
ヘンリが何やら考え込んでいるが、アオは話を続ける。
「というわけで依頼を邪魔された私としてはその王子に鉄槌を下してあげなきゃいけないわけよ。」
「確かにそれは、殿下が全面的に悪いな...」
ヘンリは剣を鞘に納めて頭を抱えた。
初級の冒険者があれほどの戦闘力を持っていることも驚きだが、今はそれよりも大事なことがあった。
王族が勘違いで無実の人を殺しかけただけでなく、王国内で唯一薬草の採取が可能な森を魔法で焼き尽くすなど前代未聞だ。
陛下に報告した場合の殿下の行く末が目に浮かぶ。
「...こちらが悪かった。これ以上殿下を殴るのは看過できないが、陛下へ報告させていただくので一度王城へ来てもらえないか?」
ヘンリの提案にアオは少し考えるが、すぐにヘンリに向き直った。
「それは別にいいんだけど...冒険者の依頼をどうすれば...?」
「あぁ、それだったら陛下がなんとかしてくれるさ...殿下の失態は国としては隠したいはずだからな...ほんとにバカ王子だあいつは...」
ヘンリの目からはハイライトが消えていた。
こうしてなんとか和解?をしたタイミングで、
「ヘンリ!無事か!!...って君は...」
「あれ、アオさん、どうしてこんなところに!?危ないだろう!?」
ニコラスとカミラの二人がやってきた。
「ん?なんだカミラ、この人と知り合いか?」
「そ、そうだが...というかヘンリ、傷だらけじゃないか!?王都の中まで戦闘の音は聞こえていたが相手はどこだ!?」
「お前がそこまで傷だらけになる相手だ。よほどの凄腕なのだろう、私が戦ってみたいものだ。」
カミラが慌てているところに、ニコラスの脳筋発言が飛んでくる。
ヘンリは少し躊躇いアオにちらっと視線を向けると、アオはコクッと頷いた。
「実は俺が戦っていたのはこのアオさんなんだ...」
「へ?」
「ほう?」
カミラは素っ頓狂な声をあげ、ニコラスは目を細めた。
「アオさん...戦えたのか?まぁ人化の魔法が使えるくらいだからそれなりに強いだろうとは思っていたが...まさかヘンリと戦えるほどだとは...」
「人化の魔法とはどういうことだ、カミラ?」
「あ...」
カミラのボソっと呟いた言葉に反応したニコラスがカミラに問いかける。
「人化の魔法...?ということはアオさんは魔物?」
ヘンリとカルロスの視線がアオに突き刺さる。
「まぁいつかはバレるものなので別にいいけど...」
「すまない、アオさん...」
カミラの謝罪にアオは軽く反応する。
カルロスはアオから視線を外すとヘンリに向き直る。
「...で、どういう経緯でアオさんと戦うことになったんだ?」
「はい、それがですね...」
ヘンリがことのあらましを説明すると、カミラとカルロスの二人はヘンリと同じように頭を抱える。
「...あのクソガキが...全面的にこっちが悪いじゃねえか...」
「アオさん、本当にすまない...」
ニコラスはアオへ視線を戻し、話しかける。
「あんたが魔物っていうことはひとまず後回しだ。まずは王城で待機してもらうことになるが...」
「あ、はい。さっきヘンリさんから聞きました。」
「そうか、というか敬語じゃなくていいぞ。話しにくいだろ。」
「...そこまで気にはしてませんけど..まぁいいっていうならそうさせてもらうね。」
そんなわけで王城に行くことになりました。
♢♢♢
「クリストファーが、冒険者に斬りかかったと?」
「はい、依頼を邪魔された件についてはひどく気分を害されている様子でした。」
ニコラスを含む3人の聖騎士からの報告に国王:カルロスも頭を抱えた。
今この場にいるのは国王に宰相、そして聖騎士3人である。
「あのバカ息子は...しかし今まで魔物の討伐をさせなかった私にも責任はあるか...その人物は今どこに?」
「城内の来賓室にて待機してもらっております。」
「では連れてきてくれるか。」
ニコラスが部屋の外に待機するメイドにいうとパタパタとメイドが部屋を出て行った。
「それとこれは極秘なのですが...」
「ん?」
ニコラスの言葉にカルロスが顔をあげる。
「その冒険者の正体は人化の魔法を使用する魔物です。」
「...っなに!!」
「魔物であるならば討伐対象だったはずだが、なぜそれをしない?」
カルロスは驚きの声をあげ、宰相:ハビエルがニコラスに問いただす。
ニコラスは躊躇うことなく話し始めた。
「彼女は意思疎通ができ、当初から人類に害したことはないそうです。現に斬りかかってきた殿下と殿下を守るために攻撃を仕掛けたヘンリ以外の人間には特に攻撃をしていなかった。」
「3人の聖騎士がそういうのなら信じても良いのだろうな..はぁ...」
カルロスが再び頭を抱えたところでアオが入室してきた。
「私に用事って聞きましたが...」
見た目が明らかに偉そうな人がいるのを確認したアオがぎこちなく膝をつこうとするとカルロスが手を上げて制した。
「かまわん、王家の醜聞であるからな。被害者のそなたに膝をつかせるなどあってはならん。」
そういうとカルロスはアオに向けて頭を下げた。
「この度は愚息が迷惑をかけて申し訳ない。この通りだ。」
「陛下!?」
突然のカルロスの行動にニコラスたち聖騎士が声を上げるが、カルロスは手を上げる。
「そなたがひどく気分を悪くしているのはよくわかっているつもりだが、詫びの品と我の謝罪でなんとか許してもらえないか?」
カルロスの行動にアオは両親を思い出した。
頭を下げるこの男は、親の顔をしていた。
「わかりました。許します...でいいのかな?」
アオの言葉にカルロスが頭を上げ、聖騎士たちが安心した顔をした。
ひとまず問題は解決したと思ったところで
「ところで、そなたが魔物だというのは本当か?」
カルロスの爆弾質問が飛び出した。




