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渡し愛  作者: 稲穂ぴす
9/16

07_ツリガネソウ-前編-

読んでくださりありがとうございます。

読んでくださる方々には感謝しかありません・・・!

 レト司教様とのランチから数日、私はあの時決めた決意が揺らがないうちにと店長に教会での仕事に復帰する事を伝えた。

それまでに何度も一人で考え込んでは浮き沈みの激しい感情に振り回されていたが、これが恋愛というものなのかという結論にたどり着いた時、何故かそれまでのもやもやしたものはどこかへと吹き飛んでいた。

 そして今日、私は久しぶりに教会の門の前に立っている。深呼吸をしてよし、と気合を入れて受付まで行って許可証を受け取って、レト司教様から言われた庭園へ足を運ぶ。

 今日は教会で灯火を持った子供たちがお祈りをするという儀式があるらしく、教会の中では子供たちが真っ白な衣装に身を包んでランタンを配られている。

私にもそんな時期があったなあと微笑みながらその様子を歩きながら見つめる。その光景が見えなくなって少しすると、広い庭園へと出た。見渡す限り一面の花畑でまるでおとぎ話の世界に入ってしまったのかと思うほど綺麗な光景に思わず息を吞む。

その花畑の中にレト司教様が大きく手を振っているのを見つけてそちらへと走っていこうとした時、誰かに腕を掴まれて、驚いていると頭上から声が降って来る。


「走るとこけるぞ。」

「ジーク司教様。ありがとうございます。」


 ものすごく気まずいですと顔に書いてあるような表情のジーク司教様に私は笑ってお礼を返す。

そう、覚悟を決めたんだからこれくらいで気まずくなったりしない。そう思っていると何だかあの胸のときめきがよみがえって来て、顔が熱くなっていく。

そんな私の様子を見ていたジーク司教様は最初こそ怪訝そうな顔をしていたが、優しい表情になってふっと笑った。


「なに一人で百面相しているんだ?」

「え、あー・・・・・・。恥ずかしいので見ないでください。」


 面白かったのにとまだ笑っているジーク司教様に腕を放してもらってレト司教様の許へと二人で歩き出す。

そうだ、話すなら今しかない。私は歩みを止めずに横を歩くジーク司教様の顔を見上げた。


「じ、ジーク司教様。この間の話、今夜お聞かせいただけませんか?」

「・・・・・・分かった。それならこの庭園の奥にあるフォリーに来てくれ。」


 時間を伝えられて私は頷くとジーク司教様は、少しだけ安堵したような表情を見せてありがとうと呟いた。

それに私は馬鹿正直に覚悟を決めたので、と伝えてジーク司教様に大笑いされる羽目になった。

そうしているうちにレト司教様の許にたどり着いて、私のすっきりとしたような表情に嬉しそうに微笑んでくれた。


「さて、今日はこの庭園の土の入れ替えをするよ。」

「はい。頑張りますよ。」


 腕まくりをして軍手を付けると私はしゃがみ込んで土いじりを始めた。




「ソラティちゃん、今日はここまでにしよう。」


 レト司教様の呼び声で私は花畑から顔を出す。空はだいぶ暗くなっていて、予定よりも作業に集中してしまっていたようだ。

ゆっくりと立ち上がり、ズボンとエプロンについた土を払うと軍手を脱いで、少し離れた場所にいるレト司教様に手を振ってゆっくりと歩いていく。


「今日だけで大分作業が進んだよ。本当にありがとう。」

「いえ、出来る事があって何よりです。」

「今日はこの後、ジークと話をするんだよね。」

「はい。・・・・・・ちょっと緊張しますが、前より凄く気持ちは軽いです。」


 レト司教様のおかげです。そう言うとレト司教様は私にツリガネソウの花を一輪手渡してくれた。


「ソラティちゃんの勇気はジークに伝わっていると思うよ。」

「・・・・・・ありがとうございます。まるで、予言のようですね。」

「ふふ・・・・・・これでもたまに街で占いをしているからね。」

「え・・・・・・。」


 その言葉に今流行っているという花占いの人物ってもしかしてと考えていると、それが顔に出ていたのかレト司教様ににっこりと笑顔で頷かれてしまう。

レト司教様が、花占いの人だったんだ。確かに司教様なら必ずいるかはわからないという説明にも納得できる。

頭の中で納得しているとレト司教様に遅刻しないようにねと言われて私は約束の時間に遅刻することをすっかり失念していた。



今回も長くなってしまいそうなので分割しております・・・。すみません・・・。

面白い!と思っていただけたら↓の★を押して応援していただけると幸いです・・・!

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