08_リナリア
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※今回は短めを目標にしました。
ジーク司教様へどう伝えようか言葉を探して俯いていると、私の手にジーク司教様が手を重ねる。
「そのままの言葉でいい。」
「ジーク司教様・・・・・・。」
優しい声色に私は少し悩んだけれど、意を決して再び顔をあげた。
「私は、ジーク司教様が好きです。先ほどの話を聞いたうえで今もこの胸に残っているのは、ジーク司教様が好きという気持ちです。」
「ソラティ・・・・・・。」
「今日、覚悟を決めてここに来ました。ジーク司教様もどうか、私と一緒に覚悟を決めていただけませんか。」
私の手に重ねられていたジーク司教様の手を取り、両手で包み込む。
「どうか、私の恋を知ってください。そして、ジーク司教様の恋を教えてください。」
考えるよりも先に出てきた言葉をそのまま伝えると、ジーク司教様は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに優しい表情になってもう片方の手で私を抱き寄せた。
今まで軽いハグはあってもこういった場面で抱きしめられた事なんてないから、恥ずかしい・・・・・・。
あわあわと慌てる私をよそにジーク司教様はぎゅうっと私を抱きしめてきて、ジーク司教様の鼓動を聞いているうちに私も少し落ち着いてきた。
そして、ゆっくりとジーク司教様の手を放して、おそるおそるジーク司教様の背中に手をまわした。
「ソラティ、好きだ。」
「私も、ジーク司教様が好きです。」
「どうか、オレの恋を知ってくれないか。」
「はい、喜んで。」
どれくらいの間抱きしめあっていたのか分からない。不意に庭園の入り口の方で子供たちの声が聞こえてきて、私達はゆっくりと身体を離し合う。
するとジーク司教様は立ち上がって私に手を差し出した。
「メインイベントの時間だ。一緒に見よう。」
「メインイベント、ですか?」
ジーク司教様の手を取って立ち上がってフォリーから出ると、庭園の入り口の方で小さな明かりが沢山灯っているのが見える。
ああそうだ、お祈りのあとのランタンの灯火を不思議な丸いガラス瓶に入れて空に流すイベントだ。
昔、教会の司教様に教えてもらったなあ。あの灯火の明かりとともにこの地に残る魂が一緒に天国へ行くんだと。
少しずつ、子供たちが手を放しているのかきれいなオレンジ色の灯火が空へと上がっていく。次第にその数は増えて、まるで天国へ続く道のようだ。
「今年は子供の数も多いから、圧巻だろう?」
「本当に、すごい綺麗です。私が子供の時は少なかったので、ここまでではなかったです。」
綺麗な夜空に私とジーク司教様は手を繋いだまま、徐々に光が消えていく頃までその光景を見上げていた。
メインイベントが終わって子供たちの声が聞こえなくなってきた頃、私は上を見上げるのをやめてジーク司教様を見ると、ジーク司教様は自分の頬をつまんで引っ張っている。
「ジーク司教様、何をしているんですか?」
「いや、夢じゃないか確認を。」
「ふふ・・・・・・なんですかそれ。」
実際私も同じような事を考えていたとは言えずに笑っていると、そういえばと頬を引っ張るのをやめてジーク司教様が私を見る。
「一つお願いがあるんだ。できれば今後は、ジークと呼んでほしい。」
「じゃあ、お仕事の時以外はそのように呼ばせていただきますね。」
「じゃあ、練習として今呼んでみてくれ。」
「今、ですか?家で一人で練習させてください・・・・・・。」
「今呼んでほしい。」
期待するようなジーク司教様の視線に耐え切れず、視線をそらすが、繋いだままの手を引き寄せられてそのままジーク司教様に抱きしめられる。
抱きしめられたまま頭の中で必死に練習して、ゆっくりと名前を呼ぶ。
「じ、ジーク。」
「ん?どうした?ソラティ。」
「呼んでほしいって言ったじゃないですか・・・・・・!」
「はは、すまない。嬉しくてな。」
ジーク司教様はひとしきり笑ってから抱きしめるのをやめて私と向かい合ったまま手を差し出してくる。
「これから、よろしくな。ソラティ。」
「・・・・・・こちらこそ。」
その手に自分の手を重ねて私たちはゆっくりと庭園を後にした。
リナリアの花言葉は私の恋を知って下さい。