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ギルドクエスト「王家の秘宝」

 勇者を殴っていた。

っというところまでは覚えている。ぼんやりと…





 気が付いたら、ノエルの店にある埃まみれのソファに座っていて。

天井がない場所だったせいで、しとしとと降る雨を受けながら、意識が戻った。


【カノン】の仲間になった後。

シックル・クローに転生した俺が、勇者と戦い仲間になった後の記憶がない。


ない、が。

のあとひなたちは、壊れた店を掃除に専念し、掃いても掃いても終わりそうになかった。


 せっせと掃除している周りに変わって、俺がソファに座り。

ゆっくりしてしまったようだ…そんな俺の隣には、殴りまくっていた勇者だと思わしき少女に、左腕を抱きしめられ頬ずりされていた。


―――驚いた。


俺が戦っていた相手は女子高校?だったのだ!

150㎝くらいの黒髪ショートの笑顔が眩しい美少女!


勇者だとわかったのは、特徴のある大きな盾がソファに寄りかかって少女の隣に、大人しそうにあったからだ。真っ黒な鎧で顔も隠れていたから、こんな少女が隠れていたとはつゆ知らず…

殴るとか。これは社会問題として挙げられても勝てないだろう。


いや!しかし、まてよ?

もしかしたら、中身はネカマかもしれないんだよな?


男性なのだが、女性になりきって女アバターで遊んでいる。そんなプレイヤー…


このRe:MIX100のユーザーは男性が主だとか聞いたことがあるし、それもワンチャン。

いやしかし、このプレイヤーはマイクも使ってて、肉声から聞こえる声がなんとなく人工物ではなさそうだった。


女性…なのか?


生々しい話にはなるが…

のあや、ひなのように。女の子らしい匂いとか、暖かさは感じられなかった。


―――無臭。


無臭だった!


頬ずりされ、ムニムニな感触が当たっているのに。

本能的に違和感を感じさせるものがあった。


人間…生き物であった俺の五感による違和感。

珍獣を見るような得体の知れない「物」。


柔らかな「何か」だと思ってしまってからは「プレイヤーとは別の存在なのだ」と壁を作りそうになる…自分の推しの桃子も、もしかしたらプレイヤーだった俺に対して、そんな感情を秘めて接していたかもしれない。


…そう考えると、少しだけ寂しく…思う。


だから俺はプレイヤーを不快に思わせない為にも、悲しませない為にも、にこやかに笑ってみた。


俺「ーーーおや?」

【カノン】「あっ!シックル・クロー!おはようっ!」

俺「おはようございます。ワタクシが寝ている間にどうなっておりましたか?」


 「ワタクシ」と一人称を口にしている俺だが。

シックル・クローをどのくらい知っている相手なのか測り兼ねる、下手な動きをしないで猫なで声をしながら、シックル・クローにできるだけなりきり。

今後は友好的に接していかなければならないだろう。


勇者…いや、プレイヤー【カノン】は今日から俺の主としてNPCであるシックル・クローをコマ使いに…するのだろうな。


ああ…しかし。

勢い任せで口にしたこと。


俺『仲間にしてくださいっ』


―――だったはず。多分。そう。

その言葉を()()がそう答えるように言ったが。


あの時に殺されそうになったわけだし、今でも感じる違和感はこれから拭えるかわからないし。

今ある俺の心理を覗かれないように猫を被らないとやっていけない…のか?

はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~しんどっ。


これから上手くいく確信はないが、【カノン】は俺の笑顔を見て、満足そうに目を輝かせながら無垢な笑みを浮かべ、よりベッタリとしている。


【カノン】「えっと、選択しは?選択…」


 キャラクターが話しかけてきた時は、簡単な選択肢が四つ目浮かび上がる時がある。

上手く選べば好感度が+3~+1に上がる。

勿論、選択肢の中から選ばず。キーボードで入力したり、マイクで読み込んで貰い、反応してもらうというやり方もある。


【カノン】はキーボードで打ち込むよりも、マイクでプレイしていくほうが楽だと考え。

それを使用しているのだろう。


【カノン】「これにしよ…『何もしてないよ』!」

俺「…何も。ですか」

【カノン】「うん!何も…!あれ?これじゃあ好感度も上がらない…か」


その選択肢でどう上がれと?


好感度数値が相手にしか見えてない状態で、俺は【カノン】に対してどのくらいの好感度で写っているのかは知らない…けれども。

最低「0」だろう。それ以上好感度を下げることはできないとは思うのだが…


ってか。選択肢で残り3つではどんな選択肢が表示されていたんだ?

変に気になるじゃないか。






【リン】「おーい!」

【カノン】「あっ!きたぁ!おーい!」


 遠くの森林から手を振って駆けだしてくる少女の影が、徐々に形を作って、色をはっきりとさせていく。【カノン】は活発な元気っ子であるのに対し、やってきた友人はポニーテールの茶髪。軽装な装備を見る限り職業は盗賊(シーフ)だろう。

なんとなく…その…ここだけの話。痛い腐女子みたいな女の子だと思った。


【リン】「おおおっ!すごいよ!ボクでもこんなレアなキャラクターゲットできないのに!

 ラスボスを仲間にするなんてっ!レア中のSSSレア!

 神レベルのレアだよ!どうやってシックル・クローが仲間になったぁ!?」

【カノン】「【リン】と一緒にプレイしたあのルートでだよ~!

 ず~~~っと!粘って粘って!

 地下牢から脱出して!なりゆきでゲットしたのっ!」


【リン】「ほぉおおおおおっ!あれかぁ!!そうかっ!!

 マジで凄いよ!レアイベント?レア中のレアルートに普通行けないって!!

 だって攻略サイトにだって!シックル・クローやアイビーが仲間になるとか

 書かれてないもん!【カノン】が初の未解読者かも!!?」


【カノン】と【リン】は合って早々、友人同士であーだこーだと和気あいあいでソファに座る【カノン】に向き合って【リン】は話し始めている。

つまり…俺に気が付いているけど、挨拶もなく、無視に近い状態で二人で会話を初めてしまい。

俺は隣にいるのにすぐ、蚊帳の外になってしまった…


うううん。

気まずいなぁー…会話し始めるなら【カノン】は立ち上がって、どこか移動してくれたらいいのに。もしくは俺が動きたい…でも。


俺(動けない!まるで金縛りにあったみたいに動けないっ!?)


足を組んだり、手を動かしたりの自由は可能なのだが。

ソファーを立つことが出来ない!

【リン】が口にしていた攻略サイトって。ネットで乗っている非公式の攻略サイト。

の事だよな?まあそりゃあそうだ…

俺が転生してしまったのだから、有り得ない事が起きているんだから、仲間になったのが。

“奇跡”

のようなものだ…


そんな奇妙奇天烈な存在の俺なのだから、ソファーを立つ事ぐらい出来ても良くないか!?

くだらない事に気をとられていると、二人はチュートリアルが始まる時間帯を確認し。

このゲームを始めた目的について話し始めた。


【リン】「じゃあ早速だけど!

 ボクが昨日話したギルドクエストに参加して欲しいんだけど。

 出来る!?」

【カノン】「うん!出来る出来る〜!」

【リン】「ヨシ!じゃあ15時になったらチュートリアルが発生すると思うから、その前にはポーションと。

 武器を調達したほうが良いかな…

 お金はボクが持っている奴あげるから、それで買ってね!」


【カノン】「ちゅーとりある?」


【リン】がアイテムから出したであろうお金がいっぱい詰まった布袋を、乱暴に地面に落とした。

ジャラリ!と金属音が派手に鳴り出すのを見ると、【カノン】は気にも止めてはないが、何となくこちらだけが勝手に不快感を受け取ってしまう。


使用上。

相手に直接渡す機能が無い為、自然と地面に置いて。

拾うしかない為、傍から見たら失礼に映るも。俺も【カノン】も。

「ゲームだから」で違和感なくスルーしてしまう、ちょっとした動作であった。


【リン】「チュートリアルって言うのは、次のイベントに合わせての操作方法を話すと思うんだよ!まあ、もしかしたらボクが思っているようなイベントが来ない可能性もあるけど、次にくるのは。

 お店のオーナーになって経営するか、しかないの、か…」


ノエル「…!」

【リン】「まあそれは【カノン】が如何するかを決めて貰えばいいし、ボクとしてギルドクエストを参加して貰えるだけでもいいんだ〜!」


 ノエルが少しだけ反応を見せたが、コチラに目線を向ける事はなく、淡々と背を向けたまま掃除を進めるだけだ。

でも俺もそのノエルの反応で、()()()()()()()()で思わず顔を触る。


【カノン】「了解〜!じゃあまたココで待ち合わせね!」

【リン】「うん!ボクも準備あるから、ヨロシク!」


 そう口にした【リン】はさっさと指で空気をなぞり、姿を消した。準備…と言っていたのだから自分のギルドに【カノン】を招待でもするのだろう。

一方【リン】の話を聞いていた【カノン】は「えっと、今の時間は…」っとリアルの世界での時間を、俺にもたれ掛かりながら気を緩めて確認していた。


Re:MIX100では、大体15時から更新が行われ。

そこで各プレイヤーに新たな試練やイベント、報酬用の課金ダイヤが配られる事がある。


ゲームをしていたからなんてことの無い事で、特に気にも止めては無かった。


今回【カノン】がこの破壊され、ノエルの親父さんの安否確認が取れてないが、きっと働ける状態ではない。

危機的で、何も無くなったに近いノエルの店を引き継いで。助けてくれる可能性が()()…可能性もあるのだ。


俺もプレイヤーとしてゲームをしていた時に、ノエルの親父さんが亡くなり…


俺は「勇者」を辞めて、店を経営し。

それが楽しくて、進める流れになったのだが…【カノン】はどうだろうか?


友人に勧められてプレイし始めたのは、やり取りを見て察しはつくが。こうゆう場合はギルドクエストを始めるだけ始めて、次にプレイしてくれない場合があるかも知れない。


そして、続ける選択をしてくれたとしても。

勇者になっているところを見たら、冒険を主に活動し。

【リン】のギルド入りするか…別のギルドを作るか。になる可能性もあるのだろう。


そうなったら…


俺(俺はどうなってしまうんだ?)


【カノン】「よし!シックル・クロー!一緒に初のお買い物いこうね〜!」

俺「買い物…ですか?」

【カノン】「ふぁあ…っ!そう!買い物!

 好きなの買ってあげる!ひゃははっ!」


 俺が彼女の返事を答えただけで、無邪気な少女のように笑って騒いだ。コチラによりもたれ掛かり、足をバタつかせて落ち着きがない。変な子だ…


彼女がマイクで対応しているのは、どうやら仲間内だけで話すつもりだけでなく。NPC相手にも音声マイクで対応しようかと思っているかも知れない。


Re:MIX100のNPCは、学習機能を持ち。

日本音声だろうと、英語・中国…何処の言語だろうと理解して。反応をするという優れたプログラムで作られたゲームだ。


さすが神ゲー。


でもまあ…俺は元人間であるため、音声から聞こえるその声に反応したに過ぎないのだけれど。


俺(しかし…好きなもの、かぁ〜。好きなもの…)


俺「まずは共に街に出てから決めてもよろしいでしょうか?

 ああ…出来る事なら、のあやひな達(むすめたち)もお供に…」

【カノン】「勿論!じゃあみんなで一緒に行こうかっ!」


皆は軽い返事をして、片付かない片づけを止めて。

【カノン】を中心に集まりだした。


ノエルからは意図的に目を背けられたまま、俺も何食わぬ顔顔で隣に立つのあに、連れていきたい場所へ行くかどうかを聞こうと横目で見る。


すればのあは頷き、ある子に話しかけた。


のあ「()()()()()()()。ちょっとの間だけ、(ひな)を預かってくれる?」


アイビー「()()()()の娘様の頼みとあれば…」


俺「やめなさい。ご主人様なんて言うのは…」


【カノン】「ところでなんで鍛冶屋のアイビーちゃんがここにいて、シックル・クローをご主人様〜って言ってるんだろう?」


アイビー「そ…」

俺「では行きましょうか!」


俺はここぞとばかりに話を割いて、主人を目的意識をもたせた。






*   *   *






 ノエルの店は目的地である場所よりも少しだけ距離を置いてある宿屋である。

アイビーは俺たちが向かっている目的地の場所。『秋の国 キャロル』からやってきた鍛冶屋の娘なのだが、わざわざ()()()()()ノエルの店に来ていたのだ。


秋の国キャロルは、ゲーム初心者がよく集まる正しく中世ヨーロッパを舞台にしたようなお洒落な国で。敵であるモンスターが国の中に入らないよう、円形状に壁を引き詰め、堂々と存在している。


【カノン】「わぁ…!すっごくおっきぃ~!これがキャロル…!?」

俺「【カノン】…さん?」

【カノン】「ふぁい!!?あっあっ!わ、私を呼んだ!?」


キャロルの出入口の一つに立った俺は、のあとノエルを後ろにし主役に確認をした。

【カノン】はややぎこちなくキョロキョロとあたりを見回して、コントローラーを倒したのだろう。ぐりぐりとキャロルの門番兵にぶつかるように「〇」ボタンを押す。


門番兵「これはこれはっ!長い旅路でしたなぁ!ようこそ秋の国キャロルへ!

    ココはお洒落と美食の街!勇者様を心よりおもてなし致しましょう!」


顔が隠れて目元も見えない門番兵が、にこやかに勇者に挨拶をし。

自分の体よりも倍に大きな門をゆっくりと重々しく開いてくれた…!キャロルの街はとても知っているのだが。やはり何度見てもキャロルの国は()()()()()()そのものだ!


門の隙間から、勇者を待てなかったと言わんばかりに色とりどりの風船が飛んできて。

パレードのように音楽と花びらが舞いに待っているっ!


キャロルには街でありながらジェットコースターが設置してあったり。

ポップコーンやチュロス。わたあめ等が売っている為、甘い匂いがダイレクトに感じられた。


俺(ゲームに入らなければ匂いまでは感じとれなかった。

 こんなに旨そうな匂いが充満していたとは…)

【カノン】「うわぁ!すごい、すごいすごいっ!!」

ノエル「勇者さまはキャロルに入ったのは初めてですか?」


やっとノエルが喋りだした!しかも俺が知っているノエルとは違い、とても上品な態度。

本当にノエルとはあれから少しも表情を見ていない。

横目で笑顔を見るだけとなっている。


【カノン】「うん!『初めて』だよ!『オススメな場所を教えて』ほしいなっ!」

のあ「では単独行動しましょう!パパと私は占い屋によりますので、また合流しましょ!」


【カノン】「え!?ま…一緒にまわらないの?買い物は?」

のあ「後ででもいいですか?ごめんなさ~い♪えへへっ!」

ノエル「まあまあ勇者さま!そんな不安にならないでよ!

 勇者さまにとっておきの場所、いくつも連れていきますからっ!」


にかっと笑い、ノエルは流れるように【カノン】の腕を引っ張り、人ごみの中をするりと進んでいってしまう。そして、のあも。


俺「まるで流れるように行ってしまいましたね…」

のあ「―――ふぅ…だってあれから、ノエルちゃん。ずっと張り付いた空気をしていたし。

 パパだってなんだかやりずらそうだった。でしょ?」

俺「…否定は、しません」


 本当に否定はしない。

ずぅ~~~っと、どうゆうわけか【カノン】は俺に張り付いていたため。体に嫌でも力が入り、いい加減腕とかを回したいとは思っていた。

ノエルともぎこちないし、本当に離れてくれて助かっているのだ。


俺「…のあ」

のあ「うんっ」

俺「占い屋にでも行きましょうか…」

のあ「そうだね。その為にひなを預けたんだもんっ」


俺はあの時、のあがひなをアイビーに預ける。と言った時にそこへ行きたがっているとすぐに察してしまった。これで2回目の利用である。


……

………。


ローズ「ありがとうございましたぁ〜、また来てちょうだいね♪」

【タケシ】「ふへへへっ!またね〜♪」


 勇者【タケシ】御一行が、ニヤニヤと笑いながら黄色のテントからゾロゾロと出てきた。

どう見ても冷やかしにでも来たみたいだ。一人は胸元に手を持ってきて、意味有りげなゼスチャーをしながら仲間内でふざけ笑いをしていた。俺はそれを軽蔑してみると同時に、ローズ。

俺達が会おうと思っている占い師の、その格好にも問題があるのではないかと思わざる負えない。


ローズ「あらぁ!シックル・クロー!のあちゃん!

 いらっしゃあい♡丁度席が空いたから、入ってちょうだい♡」


ローズの姿はゲームの世界だから成立する程の露出も多く、何より胸がデカイっっっ!!!スイカ並み!!!


赤色の布1枚で陰部を隠し、太ももや胸の谷間が露わになって、少しでも動けば見えてしまうのでは無いかとヒヤヒヤしてしまう程々ギリギリの格好した。恥辱褐色お姉さんだ。


金色のチェーンが胸の間に流れているのだから、余計に卑猥に写る。


ローズ「ここに残っているって事はぁ〜…来たのね。勇者が」

のあ「ええ、しかもパパも仲間に入れてくれたよ。

 あの子はパパを殺さない勇者だった…」

ローズ「ふふふっ♡大丈夫か心配してたの♡勇者がシックル・クローを受け入れてくれて良かったわ♡

 のあちゃんとひなちゃんも…家族が一緒で安心よね…♡」

のあ「はい!」


占いする為のテントは外は明るい黄色と売って変わり、光なんてなくなったかのように暗く、青紫の色に包まれていた。

いや、小さな(ほし)がキラキラと光って。

太陽の光を吸い込み、輝く。


まるでスピリチュアルが好きな女の子なら、喜びそうなオシャレな空間だ。ラベンダーの香りが充満し、クラクラしてしまう程の場所でローズは自分の商売道具である水晶を手で撫でまわし。

のあは客席に座って、水晶を思わず覗いたりしていた。


俺は占いというのは信じてない。


っと言いたかった。


ローズ「さてぇ…占いたいところなんだけどぉ〜…」

のは「水晶…治らなかったですね…」

ローズ「ただの()()()()じゃあ、無かったみたいねぇ〜…」


ローズはしょんぼりしながら、自分の胸を潰してしまう程。

水晶を我が子のように心配しながら撫でている。


俺「天使の仕業ですよね…()()()()()()()()()()()()()()()の。」

ローズ「ええ。」


 俺はこのゲームの世界に転生させた存在はこのゲームの女神でも。神でも何でもない。


天使の姿をした悪魔であり、()()()()()()()()()(みそぎ)』というキャラクターだ。






*   *   *







禊「ひっどーい!悪魔だなんてぇ!ガチ恋不回避天使でしょ?もしくは堕天使かな?w

 も~~~遅いよぉ俺くん!ボク待ちくたびれちゃってつい()っちゃった☆

 えへペロっ☆(๑´ڡ`๑)」


ザクッ!!


 これは俺に当たった音じゃない。

ノエルの親父さんの肩にサバイバルナイフが簡単に刺さった!

刺した本人はまるで果物を刺したような罪悪感も、思入れも、感情もない。

禊は羽を羽ばたかせる事もなく宙に浮きながら俺との身長差なぞ関係なく、顔を近づけて頬ずりしてきた!温かさと柔らかさに、存在を感じざる負えなくて。

自然と背筋が凍る。


俺はノエルたちの寝室に入った…忘れられないトラウマのシーン。

シックル・クローが「男だから」と泊めて、助けてくれた恩人に向かって冷淡に放った言葉と共に悍ましい事をしたあの場所に来たのは。

俺は勇者が来る前に、無駄な殺生をやらない為にもひなとのあを引き連れて、ここから出ていこうと身支度をしていた。


ノエルの親父さんを殺す張本人は、俺がなったのだからそんな未来には起きるわけではない。

だから安心して気を抜けていた。


最後にお世話になった事のお礼をしようと思い、顔を出しただけなのだが。

…ゲームをして、俺はこいつだけは許せない敵だと、心の底から思ったあの時と同じ…

残酷で悪趣味な死の…光景。


そこは真っ赤で現実的じゃない体液。

それが知っている人から滝のように溢れていく。


―――ダラダラ…ダラダラ…


部屋が鉄と言っていいのか、臭いを嗅いだだけで心がざわつくにおい。


  これはもしかして、血…なのか?


     血?こんなにも血が流れている?


       ノエルの親父さんが…?


          どうして?


禊「こらこら!恐怖に支配されないでよ~!

 ボクを無視しちゃダメ!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

 それともぉ~…おっぱい揉む?」もみもみっ


目の前にはそのイベントシーンにはなかった真っ白くて…背中からお尻まで丸見えな特徴的で挑発的なスク水と学生服が合体した天使なんて…

手のひらでほのかにあるのを感じる程のちっぱいを触るだなんて、ゲームにはなかったっ………!!


本来起きるはずもなく、存在するはずのない、他者のキャラクターがRe:MIX100のゲームにあどけない顔で驚き固まる俺の心境を見透かしたようにこちらを見ているだなんてっ!


俺「て、んし…なんで、なんで(みそぎ)が…!」


声を搾り取ってそいつの名前を口にした。

禊…!


この可愛らしいショートボブは。

俺の腕を握りながらにこりと笑いかけ、フワフワと浮いている。


体格が小学生くらいで、目がたくさんの色をした()()()()()()()という今流行りの色味を持ち、宝石のサファイアのように怪しくキラキラしている。見た目は本当にあどけない天使そのものだが。

俺はそいつが誰よりも命に対して重みを感じてない悪魔かを知っている…!


禊「もう!()()()()()()()()()()

ね~~え~~~?なんでラスボスに転生しちゃったの?君ぃ!


せっかくの残忍でクールな計画を考えて、グレナ…シックル・クローおじさんと一緒に「つくってあそぼう」しようと思ってたのに、これじゃあ”Ojann(おじゃん)”じゃん!」


俺「さ…触るなっ!はなせっ」

禊「( *´艸`)ふふふっ!照れちゃって~♡

 彼女さんのππ(ぱいぱい)を触った事ないの~?(๑•́ ₃ •̀๑)

 せっかくの計画がダメになっちったよ~(つд⊂)エーン。

 またデスゲームして遊びたかったのに~!(●`ε´●)」プンプンっ!


俺「デスゲームだと!?てか俺が転生をしているのをなんで知っている!?」


禊「………ボクの設定まで忘れちゃったの?

 まあいいや!読者のみ~んなにもお教えしなくっちゃ☆」


ここで天使はくるりと周り、誰に向けてか解らない。

可愛らしいポーズを決めて、ウインク1つかける。

まるで一昔のアニメみたいに黄色くフワフワとした色味の背景画面、となる壁紙がどこからか出てきて謎の第三者に媚びだした。


禊「ジャジャーーーン!⸜(*^ᗜ^*)/ボクは彼が遊んでいたアプリゲームの1つ☆

 【デスゲーム×パニックホラーハウス】のメインヒロインであり!!

 ラスボスでありっ!!

 マスコットキャラクターで愛されキャラでゲーム中イチのかわいい担当☆(お色気可)

 大天使!禊ちゃんだぞっ☆キュピーン!


 あっ、ボクのチャームポイントは真っ白な天使の羽にハートのリング!

 そして、キュートな八重歯だよ!いや、待てよ…ここはボクの服かな?


 気になるよね?

 ボクの服は学生服+スク水のいいとこ取りで、ボクの大好きな色である水色と青を貴重にした

 清楚さ!だけど羽を広げる為に背中からお尻までガッツリあいちゃって、

 これはゲームじゃなきゃこんな大胆な格好出来ないでしょ〜?コスプレしたら


 あっ!こらカメラさん!!その角度で撮ったらダメ~~~!(*>_<*)ノ」



禊「って!!!人が紹介している時に助けるなっ!!」


禊がくるくると回っているうちにノエルの親父さんの口を布から外し、

楽な姿勢をと考えて自分のローブを半分に引き裂き、頭と足にクッションとして置く。

出来るだけ心臓に血が行くようにしたいとの考えだ…あとは傷口を塞ぎたい。


だが、俺の記憶の中で肝心な回復魔法が出てこなかった。

あるのは錬金術師の回復道具…ポーションを作る事…


しかし。ポーションを作るにはそれなりの材料も必要で、それ用の道具も必要になる。

だとすれば、俺が持っていた物。

(コイン)だけだ。


コインを錬金術で形を溶かし、糸にして。長く長く伸ばす。

そして。針も作って、親父さんの切り傷を無心に縫い付けていく。


上手くいくのか?どうしよう?よりも傷を塞いでおけばまあ、大丈夫だろう…!


禊「ボクの世界(デスパ)は、それはそれは10万人もダウンロードしてくれて、

 海外にも名を轟かせたくらいの大人気ゲームだった。

 スピンオフ・小説・漫画やグッズ、ましてや一大ブームとなって、

 誰もがコロシアイを楽しんでくれた!愛してくれた!


 だけれど人気になればなるほど、デスパに似たゲームが腐るほど増えた。


 デスパを作る製作者はすぐにブームがすぎ、飽きられるのを恐れ、賭けとして

 ファンがまちに待ったアニメ化を果たしたんだ!


 ……だけどそれが火消しとなって、ブームも。デスパも終わった…。

 誰もデスパについて語らなくなった。


 また、栄光を飾りたいんだよ…!俺くん!


 このRe:MIX100に返り咲いたら、ボクはただのゲームキャラじゃなくなった!

 意思を持ち、ログを読み取り!

 どこぞのデッ●プールみたいに先もなんでも見れる!最強だったのが、さらに最強となった!


 俺くん!俺くん!

 ボクと一緒にこの世界を遊ぼう!俺くんと友達になりたかったんだ!ボクは―――」


俺「友達?冗談だろ?」

禊「―――は?」


俺「俺はなぁ。シックル・クローという外道の錬金術師も嫌いだが、てめぇも嫌いなんだよ…

 可愛くて見た目がいい女だから外道よりはマシなだけで、

 中身なんて何もないビッチに好かれるだなんて虫唾が走る…!


 俺はデスパを始めた理由は俺の桃子(推し)の声優が出ていると聞いたから、

 グロが苦手だったけど我慢に我慢してプレイしていただけでデスパに思い入れも何もない。

 特にてめぇがでてくるだけで不快感極まりない。


 異世界に召喚してくれたのは100歩譲って感謝はしよう。

 だが、今すぐ俺の前からその面見せるな。

 あと、ゲームと同じように俺の心を語るとしても、傍から見たら痛いんだよ」


ノエルの親父さんを助けている内に、禊のキンキンした声に耳障りと思っていたものが、いつの間にやら「プツン」と切れて。

普段から口にしないような汚い言葉もこぼれてしまった。


てか。

禊は何をさっきからわけのわからない事ばかりを口にしてるんだ?

まあいいや。

ホントにこいつと考えがおんなじになるのは嫌だ。

わからないならわからないままで良い。


気に入らない奴との対話はとにかく適当。


そして、すぐに切るに限る。

そうだろ?禊さんよぉ…


禊「―――は?はぁ?は?

 何いい人ぶってるの?あれだけ…()()()()()()()()()()()()()()()

 はぁぁあああああ~~…ヤメてよね俺くん。

 君は優しい人じゃない。異世界でも優しいをしなくていいんだよ?

 欲望のまま…酒池肉林しては、世界を好きなようにしようよ?それに~

 …シックル・クロー(俺くん)は、男は助けない設定なんだよ(キャラクター改悪)?」


俺は勇者よりも先に禊を挑発し、シックル・クローの杖をガツンと突いた。






*   *   *





 



 禊は俺の思考等お見通しで、奴が本来いるその【デスゲーム×パニックホラーハウス】というゲームで選ばれた12人の女子高生たちを、廃墟となった学校内で閉じ込め。

恐怖と絶望を与えたのちに、仲間を殺した存在は誰なのかを裁判させ。言い当てる。

胸糞悪いゲームのゲームマスターだ…


主人公が殺人を犯した相手を言い当て、当たれば嬉しそうに禊がそいつを拷問・処刑し、そのブラックな設定に多くが熱狂していたものだった。


でも俺は、ハマれなかった…胸糞が悪すぎて。


禊が。

全てを見透かし、人の心を()()()()()()()()馬鹿野郎に拒絶反応を持ってしまって、苦痛だったのは本当で。

ゲームの設定だとしても…


俺(殺したのは、本当なんだよな…)


 喉の奥がロープでも絞められたように息ができない。

俺が実際にゲームキャラとして転生してしまったから、余計にデスパの女の子たちに対して強い罪悪感と悍ましさを感じざる負えなかった。

勇者に殺されそうになっていた時、本当に恐ろしくてシックル・クローとして演じなければ、今だって勇者を見れない。


それでも勇者の仲間になると決めたのは、この占い師。ローズが口にしていた。


2022年9月5日:わわわっ!? 途中の奴を上げてしまいました!すみませんでした! 


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