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外道に転生した俺!?

 火花散る安物の剣と、煌々する()()()()()


満身創痍な状態で、娘に支えられる大男の血の匂い。

建物が戦闘で破壊された衝撃で、土埃が舞い上がる砂利と。


娘の友人の、か細い悲鳴…

死と隣り合わせの緊張感ある匂いが今、俺の頭を叩きつける!


1歩間違えれば血を見るだけでは済まない…!


今まで命の取り合いをしてこなかった平穏でゆるい小川に流された人生を歩んだ身には、重すぎる運命だ。


「どけ!勇者っ!!貴様はワタクシには勝てないっ!!」


こんな言葉はただの強がり(ハッタリ)だ。


そして、この世界に生きている俺じゃなきゃ感じれない恐怖は、軽々しく剣を振るう相手には絶対に伝わらない…


今。俺を殺さんばかりに膨大な魔力と、底知れぬ腕力で殴りに行く勇者は、子供のように楽しく笑っている。


勇者はプレイヤーだ。


そしてゲームだ。

ゲームの世界…勇者にとっては…!


この戦いも、重症の大男も、ゲームのイベントの1つでしか捉えられてない。


第三者としての目線ではなく、神の目線で命を狩ろうとしている。

相手はそもそも、俺に命という。

儚く、重いものが存在しているなんて、想像もしていない事を。

俺だけが知っている…


それは何故かって?


俺はある事を堺に、このゲームの世界のラスボスに転生した。

プレイヤーと同じ(  現実  )世界に生きた、大学生だからだ。








*   *   *









 カチカチと、今日も自分のPCで作業を続けている。


昔はそんなものに興味もなかったのだが、なかなか面白いじゃないか…


俺はあるオンラインゲームに夢中になった。

ワンクリックで遊べて、物語が濃くて、農業したり商売したり、どんな事も自由…そして仲間になるヒロインたちがかわいいっ!!


このオンラインゲームは『Re:MIX100』。

剣と魔法と科学もある異世界なろう系RPGだ。


Re:MIX100の世界観は4つの国の、様々な文化・四季・職業・種族に別れていて。

なろう小説では定番のネタが多く散りばめられている。


例えば…

「勇者」となって王道に冒険し、魔王を討伐して、多くの人々から称賛をあげられ、楽に富と名声を手に入れる事ができるし。


「魔王」となれば4つの国を相手に魔物を率いて領土を獲得したり、「勇者」や…同じ「魔王」同士で戦い。相手を支配したり権力を震わせる事ができる。


「悪役令嬢」なら異国のイケメンと恋愛しつつ…乙女ゲームの主人公からの嫌がらせを阻止したり、復讐をすることだってできるし。


「人外」は…ゴブリンになったり、スライム・蜘蛛・魔王の配下となって活動したり、成長すれば「魔王」になることも出来る…らしい。(人外ものは申し訳ないが、よく知らない…)


そして5つ目の「エルフ」は。


「勇者」と同じだが、どちらかと言うと…のんびりスローライフがメインで。店を開いたり、農業したり…宛もなく旅をする事が出来る!


俺はそんな安心できて、癒やされる「エルフ」になって。

好きな推しキャラと毎日平穏だが、魔法を入り混じった学園生活を楽しんでいた…!


Re:MIX100はやりこみ要素や自分だけの世界観・自分だけのキャラクター・自分だけの、ストーリーを堪能できるというのがこのゲームの大きな強みだ。


 俺のお気に入りで、俺の今の彼女は…PC画面にいる魔法少女。

馬子田 桃子(まごた ももこ)」となり、

常に俺に対して元気で明るい笑顔を返してくれている…


桃子『おはよう!今午前5時だよ!早起きさんだね!…

   ふにゃ〜あ…えへへへ、今日も一緒に頑張ろうねっ!』


 馬子田桃子は、異世界に転生してしまったごく普通の女の子。

スポーツ万能で、明るく前向き。

主人公であるプレイヤー(エルフ)が転生して来た桃子を元の世界に帰れるよう手助けするのだけど、持ち前の性格を生かして。


異世界で学んだ魔法を使って、沢山の人たちを幸せにし。

主人公エルフも彼女に感化されて、変わっていく…


…という温かいストーリー設定があり。


話がとても純粋でキレイで。

()()()()()


まるで生きているかのような彼女の感情や、考えに、俺は思わず感動してしまって…

いつしか桃子が誰よりも好きで、尊敬できるキャラになっていた…




……

………。




 キャラ。

Re:MIX100には、キャラクターにまつわる、ある話が囁かれている。


占い師「ローズ」による「大地震がくる」と予言(占い)が、発生源となる地方のプレイヤーにのみ、告げられ。一時期「不謹慎」ではないかと、小さくネット内で炎上した程度だったのだが…


その占いが真実となった大地震の日。

プレイヤーはローズの占いの的中さに誰もが驚き、またたく間にRe:MIX100の名が広まって。

テレビやSNSでは知らない者は少ないほどの、知名度を誇るゲームとなった…!


それから人気MyTuber(動画MyTubeにて動画を投稿する人の事を指す)が「とある魔女の私生活を丸一日観察してみた!」という企画をやりだし、丸一日観察してみると…


まるで生きた人間の。

ルーティーン化されていない、平凡な女性の日常を見てるようだと話題が上がった。

(洗濯したり、買い物したり…しかもそれがいつも決まっている動きではないとか…)


宇宙空間にある星ひとつひとつにも、まだ行けないが、都市や宇宙人が存在し。

宇宙人たちが独自の文化を作っていて、一人ひとり独立して動いていたり…


バグで地面に入ると、本来ならば空洞になっているところを。地下都市が存在しており、そこの地底人や恐竜が食ったり食われたり…

何もかも()()に作り込み過ぎてたりと…


遊び尽くせない程の楽しみと共に。

キャラクターに対する異様なまでの作り込みがえげつないゲームに、()()()を求めてどハマりしてしまった。


そんな話題が多いRe:MIX100を、いつしか周りは「神ゲー」とよび、()()()()()()()()()桃子に。

現実で会えないものかと妄想に耽ってしまう程になっている…


「んんんん〜ぐっ…もう朝かぁ…」


 ずっと画面に釘いるように見ていた為、首肩が凝り固まってしまった…

両腕を天井に伸ばして、肩を回す。

簡単なストレッチをしては、締め切ったカーテンの中から漏れる淡い光で「朝」と知った俺は、真っ暗な室内を見回し「()()に帰ってきてしまった」と。


ため息を漏らす…


(虚しいな…)


俺は高校を卒業後。


そこそこに良い大学に入り、彼女と出会った…物心つくときからぼっちが確定していた俺に、まさか女の子から告白されるとは思ってもおらず…それはもう浮かれた。


彼女は今時らしい明るく社交的で、アニメやゲームが好きな俺とは違い、芸能人やアイドルが好きな女の子だった。


美味しいお店を沢山知っていて、男らしくリードしようとしたけど。逆にリードされっぱなしで、恥ずかしくはあったが…

それでも良かった。


お互い、持ちつ持たれつな関係で。

それが楽しくて、心地良かった…と思ってた。


「ゴメンネ…理由を聞かないで…別れてほしいの」


そう言って去っていったバレンタイン…


俺には手作りのチョコだけが残り、俺は改めて「自分には何もない存在だったのか」と悟った…

だってさ…1年も付き合ってて、好きな女の子を引き止める言葉(もの)が。


俺にはなかったのだから…


俺はその後。


まるで電池が切れたように大学へ行かなくなり、オンラインゲームにハマってはヒロイン集めて引き篭もる日々が長く続いてしまった。


もう…戻れそうにない…


「…飯…何しようかな…」


 箱だけが残ったゴミを、俺は今でも捨てられずPCの隣に飾っていた。七海が選んでくれた包み箱。一度右手で何となく触ったあと、体を起こしてスマフォをポケットにしまった。

―――が。


立ちくらみからか、目のピントが合ってないのか。

ぐわんぐわんと…目の前が揺れ出した。


「やべ……やりすぎ、た……?」


飯よりも寝ないと…俺は、ベッドへそのまま進み。

ひと眠りすることにしたのだった…



――― 人生 いやだな………



マジで異世界へ行きたい。



桃子と



冒険していたい… ―――



この部屋も、現実も何もない世界から抜け出すように。



俺は眠りについた。




……

………。




?「―――パパ…」




 ぐったりと意識が朦朧とした中。

鈴の音のように繊細な声が響いてきた。


「(誰だ?)」


ああ…そうか……


あいつ…帰ってきてくれたのか…


俺を振った彼女…「七海」だろう…

あいつに、合鍵、渡してたっけ…


性懲りもなく戻って来やがったのか…馬鹿な女だ…


今更帰ってきても、もうお前なんて眼中にないんだからな?


だが、少しだけ期待させて。

俺から振ってやろうか…


寝ぼけ眼で両腕を伸ばそうとするが右腕だけ動か、ない…?


少しだけ違和感があったが仕方なく左腕だけを動かし、顔をなぞって彼女をベッドへ引き寄せた。


すると「きゃっ!」とマヌケな声がして、テディベアを抱きしめるように懐に入れ、軽く頬ずりする。

七海は抵抗することなく、大人しく固まっているようだ。


温かくて柑橘系の中に女特有の甘い香りが鼻いっぱいに吸いこんで、眠りにつこう。


俺(七海のアホ…)


?「マンマぁ…おきて、はしゃでしゅよ〜」

?「パパ、起きないとあの人が怒っちゃう…」


七海?「しっ………シックル・クロー!!

あんたいつまで寝てるの!サッサと起きなさいっ!!」


 ベットの外から二人の声…

そして彼女だと思ったもう一人の声に聞き覚えがあるが…

俺はビクリと体を震わせて目を見開いて飛び起きた!


   俺「いって!!」


腹に強烈な痛みが走り、左腕だけが動く。

そして気づく………右目が真っ暗な事に……


?「マンマ…おっきしたね!」


はっ、と起きた事で幼稚園生くらいの女の子が驚いて「すてんっ」と尻もちをつく。


泣かせてしまったか!?

と不安になったが、幼女は痛くもなかったらしく。

それよりも俺が起きた事に満面の笑みを浮かべて話す。


ひな「も〜、ママ。おねぼうさんだよ〜」








俺「―――ひな?」


 夢…なのか?


顔を見ると金髪碧眼のツインテール?でいいのか?小さなツインテールに長い髪を流した髪型をした、見たことある美少女がそこにいたのだ。


ココは日本。

日本のはずだ…


今はグローバル化が進み、金髪碧眼なんて見慣れているが。

俺を「ママ」と呼ぶ幼女なんて知り得ない。

しかも天使かと見間違いするほどの幼女を、見たことが無い。


―――現実では!


俺はひなの顔を目に焼き付けた後は、周りを確認するかのように今まで「パパ」と言っていた少女にも目線を向けた。


亜麻色のロングヘアーに、白バラのような花と黒いリボンの髪飾りをつけた中学生か小学六年生くらいの美少女…








俺「―――のあ…?」


のあ「うん、のあだよパパ。おはよう」




俺「夢なのか!?あの…「Re:MIX100」のキャラが…!!

俺の目の前にいる…!?

す、すげえ!すげえ!!かわいい!うおおおお!本物のひなぁ!!のあぁ〜〜!」




俺は思わずひなと、のあに抱きついた!

これはもしや………異世界転生!?


かなり背がでかすぎるし、腕がなくて痛いのが気がするが、それでもあの現実よりも好きなキャラに囲まれて生きるほうがずっと魅力的だ!


痛みなんてその次になるほど、俺は歓喜に震えた!!

しかも鼻にかかり続けていた()()が消え、裸眼で見ることが出来ることに身軽さを覚えて、この時だけは神か女神に…感謝だ!


ひな「マンマぁ〜くっすぐったい〜!」

のあ「パパ、無理しないでっ。傷口広が…」

 ピキッ! 俺「いってぇーーーー!!」

のあ「あっ、さけたっぽい」


俺「さ゛、さ゛っきから痛いのなんなん゛だ…!

  右目も見えねぇし!片方の腕は動かねぇし…!」


?「な、なんでもいいから早くご飯食べちゃってよ!!」

俺「ん!?」


うさ耳のようなアホ毛が天井に伸びるほどピンっと尖らせて、髪の毛がふわふわというより、ゴワゴワしている茶髪をぶわぶわと動かしながら噛みつかんばかりに怒鳴り散らした。


七海だと思って、抱きついたこの娘も…見たことがあるぞ!


ノエル!!

ノエル・マイスだっ!

つるぺた元気っ娘で。例えて言うならハリー●ッターに出てくるヒロイン、ハーマ●オニー似の…かなり勝ち気で、思い立ったら即行動としてしまうような猪突猛進?

熱血漢なツンデレなのだが、女の子らしい優しさも持っていて、お店を家族同士できりもりしているしっかり者!


人里離れた小さな宿屋で父と二人暮らしで経営していて。

シックル・クローが来る前の「勇者」「エルフ」のおつかいイベントである「お父さんにコーヒー」は、本当に泣けるほどの温かい話だった。




なのに…シックル・クローがやってきて、ノエルの父を―――



俺「……………」


ノエル「ちょっと?聞いてるの?」

のあ「…………パパ…どうしたのさっきから…変だよ?」

ひな「ママ…?」



俺「す、スミマセン…俺は…いえ…()()()()は…

  シックル・クローって名前ですか?」



ノエル「そ。そうだ、よ?そうだよね?」

のあ「うん、合ってるよ。パパ。辛いならもう少し寝てる?」


俺「いやいやいえ!大丈夫…ですっ!お腹空きましたです!ご飯にするのですっ!!」


不穏な空気から俺は慌てたのではない…

ましてや朝食を食べる気分でもない…


俺は寝室で固まる三人を尻目に、全身を写す鏡へと小走りで進む。


場所は把握していた。

寝室を抜けて、左側に振り向けばすぐに見える全身まで写してくれる大きな鏡を。


たまに軋む廊下の音が生々しく、鏡に近づけば近づけるほど、受け入れがたい未来が…

映し出されていた…


そこにいたのは間違いない…!

あの…「シックル・クロー」に、俺はなっていたっ!!




Re:MIX100のラスボスの1人であり、多くのプレイヤーに悍ましいトラウマを与えた残忍で冷酷、実の子供だろうと私利私欲の為なら利用する。

最低最悪の極悪人の姿が…!


俺「腕がない…そして、ノエルの宿屋…と、言うことは。

 ()()()()()()から転生したのか…!?」


―――あのイベント。

そう…


“今、まさに”

俺はノエルの父親を殺した悪党として、勇者に殺される。

そんなイベントから転生してしまった…!―――


俺「…………俺はなんで、よりにもよってこの悪魔な男に、転生しちゃったんだ…!?」


姿見に寄りかかるように、項垂れた。

今まで伸ばしたことなんてない髪がゆらりと崩れ、目線に髪の毛の影が割る。

鏡にも左目に髪の毛が視線を遮るように存在しているのを見るに、間違いないのだと。

真実であると突きつけられてしまう…


脳内には自動的にフラッシュバックが流れ、シックル・クローの残虐で過剰な描写をゲームのイベントの中で見せつけてきた。




……

………。




     ~*第13章 神を喰らいし錬金術師*~


 そんなタイトルから始まり、()()()()()()()()()()()()()()

PC画面には生き物のように脈打つパイプと…

蟻地獄のように大きく回転し、飲みこもうとする謎の真っ赤な場所で。

多くの罪のない奴隷亜人種を材料に、錬金術師が何百年と追い求める悲願の万能薬…

『賢者の石』を作るためだけに悍ましく赤く煮えたぎる大釜へと主人公を動かした。


BGMが機械音しか聞こえないシンプルなものだったが、恐怖を煽り、精神的に気持ち悪いと訴えてくるものを引き出される雰囲気を作っていた。


 そんな異色な場所を住処にするシックル・クローは。

娘の「のあ」を使って、Re:MIX100の世界を統べる冬の国の王。ハーヴェスト皇帝を暗殺する為に、賢者の石を生成し、悪事を働こうとしていたが。


シックル・クローの息子たち「ゴールド」と「マンジュ」の悪行が、主人公によって成敗された時に、シックル・クローの基地を知り、二人まとめて倒した後。

黒幕であるシックル・クローを()()()()倒して、城を破壊…

という流れなのだ。

(なんともご都合主義な流れなのだが「そんなゲームだから」で片づけられるゲームだから仕方ない。)


だが、シックル・クローは娘の「のあ」と「ひな」に助けられながら。

ノエルの宿屋まで逃げおおせていたんだ。


のあ「パパ〜!食堂はコッチだよ〜」

俺「あっ!!はいはいっ!!」



俺「………」




……

………。




 逃げてきただけであれば問題はないのだが。

シックル・クローはあの後勇者に右目右腕をなくし、娘たちと共に助けられながら。

親切に助けてくれて、宿屋に止めてくれたノエルの親父さんを、殺すのだ。



 それも椅子に縛り上げ、口元には布を咥えさせ、声を抑えながら。

無残に切り殺された描写がしっかりと写された…



全年齢対象の健全なオンラインゲームに、まさかの名探偵コ●ンも最近じゃ見ないようなグロさに、多くのユーザーにトラウマを植え付け、大炎上する事になった頃がある。


まあ…今はそのシーンもカットされ、限定アイテム。

「龍の杖」というクローの武器が手に入っていたが、それも手に入らなくなり、初見だけの限定アイテムとなったんだよな…


(当時、俺もそのシーンを知らずに見てしまい。かなりのトラウマになって。コイツが今まで見てきたどのキャラよりも、吐き気をもよおすほど大ッキライなキャラになった…)


しかも、殺害した動機は「男だから」…と。

差別的な思想で平然と語るところもまたヘイトをかられる理由で。

実の子供であるのあや、ひなにまで。賢者の石の道具として扱い。

主人公に勝つためだけに執着したその考えも、俺は嫌いで嫌いで仕方がなかった…


(なのに。コアなユーザーからは宗教的に好かれていて、無駄に中性的なイケメン顔をしてるから女性ユーザーから人気で最っ悪なんだよな…)



……

………。




 それにノエルやその親父さんは本当に良い人たちで。

クローが来る前のおつかいイベントである『お父さんにコーヒー』は、本当に泣けるほどの温かい話だったから、余計に辛い。



俺はのあに手を引かれて。

こじんまりとした木製で出来た食堂に足を運ぶことが出来た。


まさに異世界の古民家って感じで、椅子もテーブルも手作り感満載で檜の匂いが心地良い…!

テーブルは細長く、12人が座れるほどの長さ。

だが、俺たち以外の人たちは居らず。余計に寂しげが強調された空間となっている。


さて………


朝食で出されたごはんがあることが遠くからでもすぐにわかったのだが?


ひな「わー!おいしそうねー!」

ノエル「うちの目玉焼きは採れたてだから!とっても美味しいわよっ!」

のあ「鶏を飼っているの?」


ノエル「そう!牛も羊も飼ってて、どれも新鮮だからねっ!」

ひな「しゅごいね!ママ!たべようっ!」

俺「………ええ。そうです…ねっ」


 真っ白でこれもまた、寂しいお皿に。カチカチに乾燥した黒いフランスパンと目玉焼きが乗っていた。思わず自分のを触ると「カリッ」と音が聞こえ。

横で何食わぬ顔して娘たちが口に運び、美味しいと喜んでいる…

自分も、動きにくそうにだが目玉焼きを乗せたパンを、口の中に入れると「ボソボソ」な食感が伝わり。味がしない…


目玉焼きには特に塩も何も付けない派なので、さほど苦にならない自分だが、このパンは…素材となる小麦の味がせず。

なんだか乾いたカビたスポンジを口にしている気がしてぇ…


俺(あ、ダメだ…飲めない…)


俺は逃げるように目線で確認し、パンの隣に置かれてあるスープを飲もうとした。


俺「―――あれ?」


スプーンを取りたいのに腕が動かない…!?

って。そうだよ…こいつ(シックル・クロー)は右腕がないんだった…

今更だが、右腕がなく。視界も左目でしか捉えることが出来ないって、こんなに不憫なんだと実感。左手で使ったことなんてなかったが、やってみせるっ!


俺「んぐ…くっ!」


も、持ちにくい!!

やっぱり駄目だ!左手がつりそう!

スプーンを持つ手が聞き手ではないだけで、手の痛みがやってくる。右手の時は意識しないで持っていたけど、こんな持ち方で合ってたはず…!多分…!

くっそ!神か女神か知らないが、転生場所を返却してくれっ!


ひな「ママ」

俺「んっ!?どう、した、ひな?」


馴染みのない「ママ」という単語に、すぐに「俺」を読んでいると瞬時に判断できたのは。

この身体の慣れなのか、それとも別か…


そんなことよりも!

ひながクリクリの目を真っ直ぐに向けた後、不器用そうに持ったスプーンでスープをチョロっとすくい上げた。


ひな「ひな、かわりにあーんしてあげりゅね」


俺「え!?あーん!?」


 ひなが小さな小さなお手てを使い、恐る恐るスプーンを口元に持っていきスープを飲ませようとしていた!



―――こ…!


この体でも悪くはない、だろう!!




こんな天使のような可愛らしい幼女からあーんなんて、現実では絶対ない!てか彼女からあーんなんてされた事もないっ!!!


善意で詰まったものを俺は不慣れな動きで恐る恐る、食べた。




ひな「おいち?」


俺「おいちい…!」




 うううっ!天国か!これは!?

スープは水炊きレベルでうっすいのになんでこんなに美味しく感じるんだ〜〜!

ひなは「キャッキャッ」と足をばたつかせたりして、全身で嬉しさを表現した。

このくらいの幼児のはしゃぎは、心が休まる!

それを見ていたのあも、ふと手を止めて膨れる…感じはなく。

楽しそうに笑い、()()に合わせてきた。


のあ「あ〜、ひなズルい。お姉ちゃんもパパにあーんしたい。

ん〜…あっ!パパ、あーん」


俺「あ、あーん…!」


今度はのあが食べやすいサイズにちぎってくれて、口元に差し出した。

今度は俺もぎこちない感が減り、むしろテンションが上がっている。


自分から頭を近づけて口を開けた。

サクサクのパンがコロリと入り、噛みしめる!


―――ぱ、パンが激変した!


めちゃくちゃ高級のパンに変わったぁ!!




のあ「パパ♪おいし?」ふふふっ♪


俺「おいちい♪」




 やべぇええええ!!鼻の下が伸びるぅぅぅう!


シックル・クローめ!


こんな幼女を持っていながらひなや、のあに卑劣な事しやがって!てめぇは血も涙もねぇのかよ!

うらやま…いや!もうこの娘らは俺のものかっ!


劣悪非道の魔の手から、俺は転生の力でこの娘たちの未来を守ったんじゃん!!


次からは優しいパパになっていっぱいなでなでしてやろうっ!


俺「ふっ、ふふふふ…」


ノエル「………………」


俺「あ゛…」


ノエル「(ニコッ)よかったらコーヒー飲む?」

俺「い、いただきます…」

のあ「あっ、私も飲みたい♪ブラックでいい?」

ノエル「おっ!のあちゃん大人だね〜!いいよ〜!」


み、ミラレタ…


恥ずかしい…


どうも顔に出てしまう程、嘘が下手な性分で。

転生前からそれは変わらない…と…


まあ、これは性格なのだから仕方がない。


 ノエルは焙煎した出来たてのコーヒーを、木製のマグカップに注ぎ入れてくれた。

コーヒーの香ばしい薫りが、この部屋とマグカップに香る木製と混ざり合い、神聖に感じる。


のあ「ああ…イイ香り〜…!」

ノエル「ふふ!でしょ?これはね、勇者様が取ってくれて。

 作ってくれた特性のコーヒーなの!

 レシピは企業秘密だから、誰も真似できないからね〜!」

のあ「へぇ〜!」


親父さんが堪能したコーヒーはこんな味だったのかなぁと思いながら、ゆっくりと堪能する。

おつかいイベントの「お父さんとコーヒー」では、ノエルが冒険者ギルドでコーヒー豆を採取して欲しいという依頼があり。

ノエルと一緒に冒険するクエスト。


第13章が入ってしまったらみられないものだが「森のコーヒー」レシピはしっかりと覚えている。


・ピギーモグのコーヒー豆

・山脈の天然水


それを使って、調理「T」で焙煎する時に表示されるバーから。

オレンジ色に針が合うよう「D」をタイミングよく、ボタンを押す。

(もしくはコントローラー「〇」をタイミングよく押せばいい)

すると焙煎されてドリップ…って覚えてはいるんだけれども―――


俺(きっと、この世界に転生したから作り方が違っていたり、意味ないものだろうなぁ~)


チビリ…とコーヒーを口に含む。

程よい苦さで、砂糖やミルクなんて入れたくはない程。味わいが良いものだった。


いつもは缶コーヒーや、インスタント。

もしくはコンビニで作られたコーヒーを飲んでいたので、味の違いがとてもわかる。


俺(親父さんがまたコーヒーを飲めるようになるんなら、これで転生したのは

 本当によかったかもな…

 コイツをガチで止められるのは勇者でも難しそうだし、これでよかったんだ…)




 俺はこのクローに転生したことで、親父さんを殺さない未来になりそうだと思った。





だが……問題は勇者が来たとき。



 親父さんを殺さない選択をしたとしても、俺は…シックル・クローは皇帝であるハーヴェストを殺し。世界を支配しようと考える指名手配犯のようなものだ。


娘たちを見逃してくれても、こっちはそうはいかないから、どうしたら俺も死なずにすむのだろうと眉を潜めて考える。


―――コーヒーを飲む。


うまい…



 本当に転生するとは思ってもなかったし。

大好きな場所に転生できたのは嬉しいさ…だが、どうして主人公じゃない?

主人公なら桃子や沢山のかわいいヒロインとイチャイチャ出来たってーのに…


ひな「ママぁ~、これもたべてぇ~」

俺「はいはい♪」


完全に雛鳥になった俺は、ひなからパンを食べさせてくれた…

最高だ…!








*   *   *









その時間を堪能できたのはほんの一瞬に感じる程。

平和で静かな時間を紡いでいたようだ…


俺は真夜中、そのまま親切に宿に泊めてくれて。

眠っていたが、ふとトイレに行きたくなったんだ…で、何気なくジャガイモとか。

ニンジン等の食材を置いてある小さな倉庫の扉が少しだけ開いていたから、開けてみると。


ノエルの親父さんは、あのゲーム画面と同じように、真っ赤に爛れ。

椅子に括り付けられて死にそうになっているのを見かけてしまったんだ…


俺は親父さんの微かな息遣いに気が付いて、無我夢中で金貨を錬金術で溶かして。

細い糸に変換させ、大きく開いた傷口を医療手術をするように縫いまくった。


頭が真っ白な状態で「助けたい」一心だったのだろう。


その時に足を運んできていた勇者が背後にいることに気づくこともなく、親父さんを助けていたのだから…




 勇者は俺…シックル・クローの身長の半分程度の大きさで。

真っ赤なスカーフを棚引かせた漆黒の鎧の相手だ。


全身を隠すほどの大きな盾を動かしては、短剣を振りかざしエフェクトを光らせ、俺の身体を引き裂いていく。


痛みに眉間のしわが寄り、切り傷からか。

もしくは頭からなのか。


耐え難い苦痛が全身を支配しては、筋肉を硬直されそうになっている本能を無理矢理動かし、頭で思い浮かぶやり方…

地面を針のように変形をかけたり。

落とし穴や地雷を精製し動きを鈍らせたり、木を使って矢が飛び交うトラップを錬金術で反撃をするしかなかった。


俺の動きが…ゲームの時に、シックル・クローが行っていた時と類似していたと()()()()()()()()()()から気がついた。


シックル・クロー「()()()()()()()()()()()()()!」


 身体が震え、声も震えている。

シックル・クローの武器である杖を強く握りすぎて、手のひらに汗が滲んでいるのがわかるほどだ。目線があっちこっちと泳ぎに泳いで、悪い思考しか考えることが出来ない。


まるで設定通りに生きる生き物…プログラムになった感覚で、口が思ってもない言葉が滑る。


勇者が無言で、距離を詰めていくたびに「逃げるな」「逃げるな!」と…まるでどこかの主人公みたいな有名な言葉が、頭の中で渦巻いて、足を下げさせてはくれない。


逃げてしまえば、ここで()()()

そんな強迫観念がゆう事を聞いてくれない…!

頭が真っ白のまま、神に立ち向かう中。ふと…



()()()()が目に入った。








勇者「世界の終焉ファンファーレ・エデン!」」








 一瞬だけ目をそらしてしまった事で、勇者は悪びる様子なく。

盾から龍の頭を3匹…4匹…それ以上に多くの細長い生き物を生み出し、全て黒い色で統一されていた龍…いや、蛇…だろうか。


蛇なのか?


舌をチロチロと動かし、真っ赤に光る目その蛇を動かし。

天へ天へと伸びていっていた!


それらは体をうねらせて一つの束となって黒い炎を丸く、丸く作っていく。

まるで星を作るかのように作っていく姿が「勇者」とは思えない。

創造主である()を目の前にしているような、絶大な力を前にして…


―――勇者が持つ大きな盾に興味を持つようになってきていたのだ。




これでもRe:MIX100をやりこんだ男だ。

登場キャラはあえて!確認はしてないが!アイテムやイベントに関してはかなり自信がある!


なのにこの俺ですら知らない、レアアイテム。

俺は、こいつに命を狩られそうになっているというのに、どこで手に入れ・どんな効果を持っているのか…そして、こいつの冒険履歴などが急に気になりだし。

命狩られる側になりながら、余計な事に気をとられているなんてな…


俺(つくづくどうしようもない馬鹿だよ、俺は―――)


 勇者が持っている大盾から出ていた蛇が作った球がシャボン玉のように弾け、すんっ…!と音が耳に響く。分解されたかに思われたが、破裂した中心から空間が歪み出し、視界が暗闇へと飲まれる…


一番似たものと言えばブラックホールだろう。

まるでパスタの麺になったようにその穴からしゅるりと吸い込まれて空気も感覚も異常はなかったが、視界だけが真っ暗闇に落ちて。

自然に身を任せたように体が浮遊して存在している―――





 すすすすす…ズズズッ… ザザザザザ…!


何かが蠢く音。


真っ暗で、無重力空間だった世界からチラチラと、星の光が生まれ、流れ星の如く流れていく。


幻想的なものだ…






見惚れてしまうほどの美しさと不気味な音に、杖を握りしめた…!


俺「これは…一撃必殺。というところだろうか。


………なろう世界を。意識して作り上げたゲームだ…

敵はザコでもラスボスだろうと。プレイヤーの()()()()()()()として作られた、死ぬ為のキャラクター。


元々。勝てる煮込みなんてない人生(キャラ)だ…


シックル・クロー(ラスボス)は…プレイヤーに負けてこそ、ゲームとして成り立つ」


誰のために口にしているのか。


いや、これは今度こそ俺が思っている考えで、俺に語り掛ける話なんだ。


星の流れる数は前よりも多くなり、早送りのように俺の周りにわんわんと流れていく。

音は次第にファンファーレのように音が大きく、派手になり、一気に責め立てるように鳴った。


死ぬ。


死ぬ。


もしかしたら。



()()()()()()()()()


死んだら目が覚めて、また何もない一日が始まるかもしれない。




夢オチなんて、漫画のオチにしたら最悪だろうし、受けないだろうけど…

とても現実的で、リアルだ。

現実なんてそんなものだ…結局オチは決まってる。


そういえば…夢占いの結果だと、死ぬ夢は()()()()()()事を暗示しているとか。


生まれ変わるなんて、どう生まれ変わるのだろうか?


シックル・クローに転生…まあ夢だから転生なんかじゃないんだが。

せっかくこいつに生まれ変わったというのに、目が覚めたらまた俺に戻ってしまうなんてな。

何もない。

俺に。


それって生まれ変わったと言えるのか?


積んだ俺のまま、どう生まれ変わる?


あの体でまた頑張れというのか?














俺「―――はあ?」












俺「この俺が…!この俺がっ、こんな形で死ななきゃいけねえんだよ…!!大学休みがちの(ボッチ)がっ!

 一からコツコツと貰えるかわからない年金貯金を政府に返して!

 食費をギリギリケチって、生活と水道料金と電気代込みの家賃を払うために生きる為だけに必死になって生きてっ!!

人生…良い事なんて無かった!

なんにも無かったっ!!


勉強だけの人生だったのに!やっと好きになってくれた人がいて!喜んだのにいなくなって!!あんな糞みたいな人生に戻りたくないっ!!絶対に死んでたまるか!クソがっ!!


こっちはタダのなろう主人公共よりもどん底に生きてたんだぞっ!生きてやるっ!!生きてやるっ!!絶対にっ!!!!」


 額の血管がキレそうになる。ビキビキなんて、漫画的な分かりやすい怒りが。俺のこの空間に使用できる素材があるかと、がむしゃらにかけてみる!

しかし、一向に素材らしい素材は見つからず、光が正しくミキサーをかけられた速さで飛び回り、責め立てる。


俺「一発逆転して!!奴を!!勇者を!!奴隷にして!!こき使ってやるよっ!!ハハハハハッ!!プレイヤーがぁゲームから卒業する時間だぁ!!

終わったら勉強してもらうぞっ!!糞勇者ぁ!!」




俺はスマフォから持ち物に入れている金をすべて取り出した!


▲「持ち物リスト」から「金×9999」を取り出した!


 スマホには見覚えのないアプリ、袋のようなアイコンデザインが付いている。


それ以外はいつもスマホに入っている「アプリストア」と

「ギャラリー」「電話」「カメラ」「メール」「ブラウザ」

「時計」「MyTube」そして「Re:MIX100」。

(後は別のゲーム「デスゲーム×パニックホラーハウス」が入っていた。)


今でもどう攻撃してくるか解らない!

解らないなりに俺は5cm以上の厚みを持った金の壁を作り、自分の身を護る事に専念した!


丸い筒に俺が入る形でしか思いついてなかったから。

出来なんて余り期待は出来ないが、一通りいけると言い聞かせた。

出来上がった途端に、金をやすりか何かが猛スピードで削っていく音が響いてきた!ガリガリという一旦止まって削っていくような音ではなく、止まることなく削る音。


厚みに作った金の壁ですらすぐに削れ落ち、俺の全身にヤスリのような痛みが四方八方に降り注ぐ!




俺の肉体が削れて、全てなくなるまで続くのかどうかと気にする余裕がない。


周りは金の粉と火花と血飛沫だけで、俺は死を覚悟せず。


必死に精神を固める。






*   *   *





 


 ▲勇者はシックス・クローを倒した!

自分が起こした必殺技が嵐のように起きて、全てを飲み込んだ。

その姿を見て、勇者は大きなため息を漏らし。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()


【カレン】。

Re:MIX100ではプレイヤーの頭部に、水色でプレイヤーの名前が表示され、真っ白の文字で打たれたNPCキャラの名前と見極めやすくなっている。

(今ココでは名前の表記に【】をつけて見極めるとする)


すぐに勇者は、自分の世界とは違う別の世界の存在。

NPCが近づいて来たとわかった。


ノエル「勇者様っ!お救いください…!父がっ!父がっ!!」


勇者はポニーテールをしているただのキャラになんの感情も抱かず、彼女が必死にかけてくる姿を何処か他人行儀で流すのだった。


【カノン】「あれ?もしかして君。NPC?

 えへへ、よくわからないけど、よろしくねノエルちゃん!

 確か倒したらのあちゃんと、ひなちゃんが仲間になって…

 あ!あのコーヒーイベントクリアしないと!

 ノエルちゃん仲間にならない!?


 え~…、じゃあ…無理かなぁ。


 このイベントではお父さん、シックル・クローに殺されている

 だろうし…」


本人を前に、堂々と口にし悪びれる様子もなく自分で納得していった。勇者は消えたシックル・クローの場所を遠目で見て、重そうな鎧を()()


青い光となって消えた鎧の中は、あどけない10歳くらいの女の子がいた。

髪の毛は黒く、ベージュ肌。

ショートカットにセットしてある髪型に2っつ。長さの違うアホ毛が風で揺らめいている。


風に当てられた少女は「これで…シックル・クローとのイベントは、終わり…かな。強すぎるのも問題だなぁ…」と、何処か祭りを惜しむような。

ゲームに対して興味が失せたような顔と声質で、ため息をつく。


―――バチバチバチバチっ!


少女やノエルは、有りもしない場所から電流の流れる音に驚き、頭を上げた。






自分が出した技でシックル・クローが消えたあの場所に。

小さな歪が渦巻く!


すると、その歪が一瞬にしてガラスが割れたように空間が壊れ、そこから血だらけで、ボロボロの姿の人物が徐々に姿を現したのだ!




プラチナブレンドが血で赤く塗り変わってしまって、立っているだけでやっとな人物が誰なのか…


ここにいる全員はすぐに理解する!




ノエル「クロー…!クロー!」 

のあ「パパぁ!」

()()()()「ご主人様!」

ひな「ママーーー!」


【カノン】「凄い…シックル・クローが…戻ってきた…!」





 息絶え絶えに。

シックル・クローはヨロヨロとプレイヤーである【カノン】に。

屍のようにゆっくりだが、真っ直ぐに近づいていく。


【カノン】はファンファーレ・エデンという技で瞬殺し、消えていった魔物たちをこの目で見てきた。


戦うのに苦労をしないと、MPがあれば気にせず使ってきていた。

そんな無敵に誓いその技を食らって、シックル・クローが重症ながら戻って来た事に驚いたと同時に()()()()()()


その顔はまるで、自分の期待を応えてくれたと安堵したような嬉しそうなものであった!




【カノン】は徐々に近づいてくるシックル・クローを瞬きひとつせず、ジッとシックル・クローの次の行動を熱い眼差しで見ている。




【カノン】とシックル・クロー以外はどう反応し、動いたらいいのか決めかねている。が、シックル・クローが【カノン】の頭を腕を伸ばさなくても触れる程の近距離まで近づけ、【カノン】に顔を近づけた。


【カノン】「へぇえ!?あっ…えっ…!!!」


シックル・クローが抱きしめる程の近距離になった事に動揺を隠せない。

顔をこれでもかと林檎のように赤く染め上げ、慌てふためくも。



ゴッ!! 【カノン】「ぐはぁ!?」



シックル・クローは右腕を大きく振りかざし、派手で重たい音が【カノン】の頭を地面へと叩き付けた!

満身創痍の中、げんこつ1発。

加えさせたら、【カノン】はバランスを崩し倒れた!


【カノン】からは突然の事でなんだか良く分からなかった。

しかし、HPの残高は999999もあり。殴られても999854程しか減ら無かった。


【カノン】「いててぇ〜…キスされるかと思った…わわっ!?」


シックル・クローが倒れる【カノン】を殴った腕とは反対の腕でで乱暴に服を掴み。

猫の首を持つように自分の目線の高さまで持ってきては「にこり」と作られた笑みを向ける。


俺「…………」


バキッ!


【カノン】「ふぎゃ!?」

バシッ!

【カノン】「あ゛っ!」

バシッ!

【カノン】「あっ!」

バシッ…!

【カノン】「あ…?」


金色に輝く作られた右腕は、ゆっくりと昇る太陽の光に照らされ。

光出す。


だが、見た目の変化だけで特になんてことも無く。


シックル・クローの殴る力が次第に弱くなっていた。


現実であれば痛いはずの【カノン】の顔は一向に綺麗なまま。

それとは対象的にボロボロのシックル・クロー()に、力尽きてしまった。勝てない…


999854のHPから、一向に下がる気配がないと気が付き。

殴る事をやめてしまう。


シックル・クローの怒りはまだ、腹の中…


いや、全身に渦巻き。

どうしようもないくらいだ。



だがしかし…




だが…………。


【カノン】「ふぁ、ぇ?」




俺「俺が お前の 仲間に なって、やるって 言っているんですよ」


しかし、折れないといけない。


戦いに勝つだけが勝者ではない事を。

嫌っと言うほど前世の人生経験で味わいつくし、泥水だって啜ったものだ。


それがこの間抜けなプレイヤーに媚びを売る。


殴った後だが、コイツの足元に入れば。

コイツが将来仲間にしていく仲間たち(NPC)を洗脳なりなんなりして、叛逆する。


なんて事だって出来るだろう。



それに。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()を倒さないといけなかった。


 かなりドスの効いた「仲間にしてほしい」という声が。

【カノン】にはどう捉えているのかは、シックル・クローには知る由もない。


【カノン】は水の乾きを潤したように、目を輝かせた。




【カノン】「はい!」




▶シックル・クローを仲間になりました!




ピロン!っと軽快は音がした後。

【カノン】の画面にはパーティーにシックル・クローが入っていた。



2022年2月18日


誤字漢字間違いを修正するため。そして、文章を短めにして提出したいと思います。

多分大幅文章が変更するかな?よろしくお願いいたします。


2022/8/23

修正しました!遅くなり申し訳ない。

言い訳がましいけれども、コロナの影響で体調崩したり。やる気がそがれたりしてw

進みが遅くなりましたことをここでお詫びいたします。


後からお話の内容が変わるよ!

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