リコの悩み その1
トールヒューマンズは一見するとフィクションなどに登場する巨人みたいに思うかも知れないが、実は違う。
以前も言っていたが、トールヒューマンズは本来は一生涯病気にならない薬を投与されて超健康体な人間になるはずが、失敗して異常なほど大きくなってしまった病気になってしまった人の事をトールヒューマンズと呼ぶ。
だから、トールヒューマンズは巨人ではなく、立派な人間の1人なので、普通の人間みたいに生活を送る。
ですが、トールヒューマンズはけして楽な生活を送れているわけじゃなく、何をするにしても不自由ばかりである。
何がどう不自由なのかというと、
「慎太郎さん。この服ダサくて嫌です」
「わがまま言うな。この服は怪我防止のためのもんなんだぞ。怪我をしたらもとも子もないぞ」
「はい、わかりました」
俺がリコが着ている服にダメ出しをしたら、リコはしょんぼりとした。
リコが来ていた服は自衛隊が着ている迷彩柄の服で、腕や足の部分にはアニメに登場するロボットみたいな固い部品みたいな物が付いており、さらには白いヘルメットも被っており、顔にはフェイスシールドも付けている。
まぁ俺から見てもダサいと思うし、リコも年頃の女の子だからオシャレしたい気持ちもわからなくはないが、外出する時は絶対この服装にしないといけない。
何故なら、怪我を負わないようにするためだ。以前も言ったが、トールヒューマンズは怪我を負いやすい。理由は歩いている最中に建築物に当たったり、転んで怪我を負ってしまうかもという懸念から完全防備じゃないと外出してはいけない決まりになっている。
「今日もバイト行くからな」
「はーい」
リコは服の事を引きずりながらも、俺を自身の肩に乗せてバイトに行く事にした。
「うわっ危ない」
リコは走行中の車を踏みそうになり、慌てて足を避ける。
「リコさっきぼーとしとたな。ダメだぞ、足元には気を付けないと」
「はい、わかりました」
またしてもリコはしょんぼりとしてしまった。
そう、こうして外を歩くにも細心の注意を払わなくてはならない。なんせリコのしたには人間が歩いていたり、車が走っていたりするから常に気をつけなくてはならない。
「あれー、リコの下にこんなに人が歩いていたら誰かがリコのパンツ見てんじゃねーの?」
と、俺はリコにそんな冗談を言うと、
「きゃあ、恥ずかしいです」
「あっ、バカ暴れるな」
リコの顔が真っ赤になり、恥ずかしさのあまりその場で地団駄してしまう。
実際はリコはズボンを穿いているわけで、下から下着を覗ける訳がない。なのにリコは俺の冗談を鵜呑みしにして恥ずかしがってんだぜ。
そんなんで暴れられたら先が思いやられる。
その後リコが我に帰るまで30分以上時間を要したのでした。