一つ目の願い:願いの数をいちまんかいにして! 魔神:は?
こうして、ランチソス大陸各地に現れる、神出鬼没、正体不明の魔法少女、マジカルリリーが誕生したのだった!
ギュルギュルギュルギュル、ジャポン!
ランチソス大陸の端っこの片田舎ウスター。そのさらに端っこのすれすれの所にある小さな一軒家、やたらとカラフルな部屋。そこに突然、タキシード姿の好青年が現れた。
俺だ。
「我はランプの魔神なり!汝の願いを3つ叶えてしんぜよう!」
記念すべき初召喚。俺の前にいたのは、若干8つくらいの金髪の小さい女の子だった。いやいや。
「まじん?………」
「そうとも幼きマスターよ。何でも願うがよい。大抵のことは叶えてやれるぞ。」
「世界めつぼう!」
………………最近の子供の情操教育は、どうなっているのだろうか。
「…………………………少々力不足である。」
「……?」
「だいたい、世界が滅亡したら、お主もパパもママも死んでしまうぞ。」
「……お母さんもお父さんも、いないもん…………。」
「……。」
「………でも、ターニャちゃん達と遊べなくなるのは嫌…。」
そんな悪の大魔王を見るような目で見ないでほしい。
「……では、願わなければいい。」
「ハ!さすがまじん!」
なんで世界めつぼうとか言ったのだろうこいつは。
…少女の部屋であろう室内を見回すと、『大魔王タルタルソスvs魔法少女ケチョップ』という題の絵本が見えた。いや、普通魔王退治とか願うだろ。というか今代の魔王はディアボロスだったはずだ。
「うーん……じゃあ、悪いやつ倒して!」
「……世界中に悪人はごまんといる。願い三つでは到底たりんな。」
「えー、………」
少女は真面目にうんうん考えはじめた。、いや、たぶん前までのも大真面目だっただろうが。
……とりあえず、大魔王タルタルソス以下略は隠しておこう。
「いいこと思いついた!」
しばらく考えた後、彼女はパアッと顔を耀かせた。
「ほう、何なりと申してみよ。」
「ねがいごとの数、いちまんかいにして!」
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
「はい?」
素が出た。
いやいやいやそんなことできるわけ……先にそこは断ったはず…あれ、いや忘れてたっけでもまさかいやそんなバカな…
「んー、ーーー………まじか。」
「ほんきとかいてまじとよむ!」
本気って書けないだろ。
一時間後。
「ねーまじん!ジュースちょうだい!」
「………仰せの通りに。」
指パッチン。
「マンガ。」
「こちらに。」
指パッチン。
「ソファー!」
「……。」
パッチン。
「ポテ…」
「。」
パチンッ。
指痛くなってきた。最近の子供は恐ろしいな…適応が早すぎる。いまだかつて魔神の願いをここまで乱用した輩が存在しただろうか。
「ねーまじん!」
「こんどはなんじぁい!」
「そういえば今日じゅくあるんだあった!悪い奴退治はあとでね!」
「………。」
塾にはテレポートで送ってやった。
**********
名前を聞かれたが、そんなものなかった。
「じゃあ『まじん』でいいか!」
と。願いを使われたらかなわないので、まともな呼び方で助かった。
ちなみに、彼女の名前は、リリエラ-マーヨだそうだ。
それで今俺が何をしているかといえば、『悪いやつ』を探している。お、…こいつなんかちょうどいいな。
「ああ、悪いやつ見つけましたぜ。」
とりあえず索敵魔術で禁術や邪術の痕跡をさぐっていたのだが、あっさりと見つかった。
なかなかえぐい奴だ。強い邪気を感じる。邪神の復活でもたくらんでいるんじゃないか。
今は王都の地下倉庫みたいなとこでなんか薬品とか混ぜ合わせてニヤニヤしている。少し気になるが、錬金術アルケミは専門外だ。
「まじー。じゃあ…」
「ちゃちゃっと殺るか。」
いくら何でもこれくらいの小さな少女に人死にを見せるのは教育上よろしくない。これくらいのやつなら、遠距離でもどうにかなる。
「まった!」
は?
「私がやりたいの!」
大事そうにさっき返した大魔王以下略をかかえこんでいる。あ、はい。魔女っ娘活動がしたいと。…めんどくさー。願いだから逆らえないし。
もう燃やしたろか、その本。
「あー、分かったよ。ほれ。」
指パッチン。
「うお!すごい」
俺にドレスアップされたリリエラ改めマジカルリリーが感嘆の声をあげる。ちなみにしっかりとケチョップに似せたデザインにしてある。具体的に言うと、これでもかとフリルのついたピンクのドレスだ。
「ではさっさと行きますか。」
「れっつまじかる!」
いえーい!
テレポートしますは例の倉庫の前の通り。それではチャチャっとマジカルしますか。何もない行き止まりに偽装された路地に入り、隠蔽魔術を相殺する。
「この階段の下ですマスター。」
「私の事はマジカルリリーと呼んで!」
「……了解しました。」
リリーは無警戒にずんずんと進んでいく。ちなみに俺はランプの中から見守っている。
あ、今探知魔術にかかった。まあ、大丈夫か。あっちは、小さな子供がどうやって人除けの魔術を破ってきたのかと混乱しているんじゃないか。しかも意味の分からない格好をしているし。
俺だったら絶対悪い夢だと思うね。あ、こっちのトラップはまずいやつだ。無効化しておこう。
階段を降りると、白衣を着たイケメンが、ぽかんと口を開けて立っていた。急いでこちらへやってきたのだろう。薬品を少し服にこぼしている。
「な、な…一体、どうして…。」
「私の名前はマジカルリリー!あなたの悪事もここまでよ!」
「…?」
「マジカルパンチ!」
「うあー!…あれ?」
痛いわけないだろう。膂力は一般的な少女レベルだ。
「…くっくっく。ここまで無傷でたどり着くから何者かと思えば。どうやら魔道具が故障し…」
「マジカルキーック!」
「うびゃ!」
リリーに軽く身体強化をかけてあげたら白衣君は吹っ飛んでいった。
雑魚くね?今時の魔術師…いや、錬金術師かな?は、ろくに体も鍛えてないようだ。というか、最近の魔法少女ってめっちゃ武闘派じゃん。
…まあ、魔法使えないしそうなるか。あれ、白衣君起き上がってこなくね?
慌てて確認にいったが、どうやら気絶しているだけのようだ。よかった。
「せいぎはかつのだ!」
倉庫っぽい部屋の中をあさったら、たくさんの魔道具がでてきた。その中の多くは、やはり邪神関連だ。
だがその辺に落ちていた研究資料を読むかぎり、結構行き詰っていたっぽいな。…それでも危険なものは危険なので、憲兵に引き渡す前に、ヤバそうなのだけは回収しておいた。
さて、どうやって憲兵に引き渡そう。マジカルリリーが言っても子供のいたずらにしか見えないだろうし…。
…俺がやんのか。めんどくさ。まったく、だから遠距離でチャチャっとけばよかったんだ。
リリーは先に帰らせて駐屯所へ行き、場所を教える。
証拠として白衣君の研究レポートを見せたら疑いの目で見られてご同行願われたけど、めんどいので意味ありげな笑みを残してテレポートした。
どうせこれだけしっかりした証拠があったら行かざるを得ない。情報源がどれだけおかしくても関係ないのだ。
テレポート先では、マジカルリリーが衣装を祖母であろう老人に見せびらかしてニマニマしていた。
願いはあと9989回。
……憂鬱だ。
お読みいただきありがとうございます。
連載版も書きたいと思っているので、ご意見などあったら感想などにばんばん書いてくださいお願いします。
初投稿なのでガクブルです。いいな、と思った方、ぜひぜひ評価をば↓。モチベに直結します。




