健気さんの婚約者さがし
異世界にある架空の学園を舞台にしています。
「 えっ! 辞めていいんですか!? 」
とある王国の魔法学園にて、少女の喜びの声が響き渡った。
ストレートの美しい赤髪、意志の強そうな紫の瞳。品があり如何にも真面目そうな佇まいのその少女は、紛う事なき美人である。
「 そうだ。カリーナ・マトリカリア、君には今日で生徒会を辞めてもらう。荷物をまとめてすぐにこの部屋から出て行くんだ! 」
学園の生徒会室で、隣の儚げな美少女の肩を守るように抱きながら、一人の青年が言い放った。
青年の容姿は大変整っており、肩にかかるくらいの輝く金髪と、澄んだ海のような蒼い瞳は、彼の美しさを一層際立てている。
だが、今はその美しい顔を厳しげに歪め、目の前のカリーナを睨みつけていた。
「 はいっ、喜んでっ!! 」
そんな青年の厳しい態度にも狼狽える事もなく、先ほどから嬉しそうにしているカリーナは明るく返事をする。
そうしてカリーナは素直に荷物をまとめ始めた。
彼女の様子は、つい鼻歌を口ずさんでしまうほど嬉しそうである。
この国の第一王子である青年レイ・ペレカリーナルは、自分が思っていたカリーナの反応と実際の彼女の反応が違い過ぎて、内心混乱していた。
本当なら自分の言葉を聞いたカリーナは取り乱し、マリアナに事前に聞いていた“ 醜い本性 ”を曝け出してくると思っていたのである。
「 マリアナ、聞いていた話と違うようだが? 」
疑問に思ったレイは、隣の儚げな美少女に小声で問いかけた。
その言葉に、マリアナと呼ばれたその美少女は涙目になり、首を横に振る。
「 レイ様に引き止めて欲しくて演技をしているんです。⋯⋯それに、他の生徒の証言も聞いたでしょう? 彼女が陰でどれだけ卑怯で、卑劣で、陰湿で、非情な数々の嫌がらせを私にしてきたのかを⋯⋯うぅ、ぐすっ⋯⋯ 」
「 す、すまない。そうだったな、多数の生徒の証言もある。カリーナはここにいるべきではない 」
とうとう泣き出してしまったマリアナを落ち着かせるように、また、自分に言い聞かせるように、レイはそう言った。
事前の調査で、多数の生徒からカリーナがどれだけ非道かという証言を得ている。それに加え、彼女の筆跡と一致するマリアナ宛の“ 呪いの手紙 ”という物的証拠もあるのだ。
レイがそのように心の中で自分に言い聞かせている間に、カリーナは荷物をまとめ終わった。荷物はあまり多くなく、小さめの鞄に詰められる程度しかない。
カリーナはその鞄を肩にかけると、レイとマリアナに深くお辞儀をした。
「 一年半、大変お世話になりました 」
そのまま顔を上げ、清々しい顔で生徒会室を出て行こうとするカリーナを、レイは慌てて呼び止める。
「 カリーナっ! 出て行く前に、マリアナに言うべきことがあるのではないか? 」
レイは遠回しに、今までの嫌がらせについて謝るようにカリーナに促した。
だが、カリーナは不思議そうに首を傾げしばらく考え込んだ後、ようやく気づいたように話し出す。
「 そうですね。マリアナさん、紅茶の入れ方は分かりますか? 会長様の好みの茶葉は青い箱、副会長様の好みの茶葉は緑の箱、それから⋯⋯ 」
「 そ、そんな当たり前の事分かってます!! 」
カリーナの細かい説明を遮るように、マリアナの焦った声が部屋に響く。
「 そうですか。それなら安心です⋯⋯ 」
心からホッとしたように、カリーナは微笑みながらそう言った。その顔は悪意が一ミリも感じられないほどの、穏やかな表情をしている。
「 そうやって誤魔化そうなんて許しません! カリーナさん、今まで私にしてきたことをちゃんとこの場で謝ってください 」
「 ⋯⋯そうだ、心あたりがあるのではないか? 」
マリアナとレイの二人にそう詰め寄られたカリーナは、必死に考える。
その結果、具体的なことは何一つは思い出せなかった。たが、人というものはどこで、誰を、どの様に傷つけてしまっているのか分からないものである。
カリーナ自身に心当たりはなかったが、自分が知らない内にマリアナを傷つけている可能性もあるのだ。しかも、この二人のカリーナに対して憤りを露わにする様子を見るに、只事ではない理由がありそうである。
カリーナは家で両親や兄妹に「 カリーナは、少し抜けている 」と良く言われていた。今回も自分が抜けていて、この様に涙を流すまでマリアナを傷つけた原因が思い出せないのだろうと彼女は考える。
そんな重大な事を忘れてしまい、思い出せない自分をカリーナは責めた。自分はなんと非情な人間なのだろうと、深く反省もする。
そして真っ直ぐにマリアナを見つめ、誠心誠意謝る事にしたのだった。
「 今まで本当にごめんなさい。もう絶対にひどい事をしないと誓います。マリアナさん、本当に本当にごめんなさい⋯⋯ 」
「 ⋯⋯わ、分かれば良いんです 」
カリーナのあまりの腰の低さに、マリアナは少し引きながらも許しの言葉を返した。
再び二人に丁寧にお辞儀をしたカリーナは、今度こそ生徒会室を後にする。
部屋を出て行くカリーナの後ろ姿を見ながら、生徒会長であるレイは言い表せない違和感を感じていたのだった。
────────────⋯⋯⋯⋯
生徒会を追い出され、ひとまず学園の庭に置いてあるベンチに座ったカリーナは、深くため息をついた。
「 これでやっと婚約者探しができます 」
カリーナの家には他の貴族の家と違う特殊な決まりが多くあった。
その一つが婚約者を自分で探すこと。
元々恋愛結婚をしたご先祖様が、子孫達にも自由に結婚相手を決めて欲しいという気持ちで決まりを作ったらしいが、奥手のカリーナにとっては良い迷惑であった。
この国は女性の方から男性に自分をアピールすることをはしたないとする文化があり、ただでさえ女性は奥手な人が多い。カリーナはその中でも飛び抜けて奥手なのだ。
カリーナの兄は、早い段階で( 本人曰く )運命の相手に出会い、既に結婚をして子供もいる。そして最近、3歳年下の妹にも両想いの相手がいると知った。
「 はぁ⋯⋯ 」
カリーナは深いため息を吐いた。
彼女は、現在17歳。この国の貴族の令嬢なら婚約者がいて当たり前の年齢である。
学園に入学した年齢が15歳、奥手で真面目すぎる彼女はその時点で恋すらしたことがなかった。
学園は若い男女が出会う絶好の場所である。
この絶好の機会に相手を見つけなければいけなかったのだが、一年生の時に親戚である先輩から生徒会の手伝いをしてほしいと懇願され、断りきれず入ってしまった。
真面目な彼女は生徒会の仕事を頑張った。周りが嫌がるような面倒な作業も、文句ひとつ言わずに頑張った。
そして一年後。感動したその先輩は、真剣な顔でカリーナにこう言った。
「 カリーナさん、来年は王子であるレイ様が入学されるわ。とても勇敢で勉学も優秀な方で、きっと入学一年目から生徒会長になられるでしょう。⋯⋯レイ様が会長になられても、貴女が頑張って生徒会を支えていってくださいね 」
そうして涙を流しながら先輩は卒業していった。
もちろん、真面目で誠実なカリーナがその先輩のお願いを無下にできるはずがない。
第一王子であるレイが生徒会長に選ばれ、生徒会が新しくなった後も彼女は頑張る。取り立て目立つようなことはしなかったが、陰で生徒会を支え続けた。
美少女マリアナをめぐって、生徒会の有力貴族の子弟達が争ったりしている間も、生徒の意見を聞き、出来る限り期待に応え、行事の計画を組み立て、必要な備品を管理し、書類をまとめ整理した上、雑用などの教師の手伝いもしていた。
時にはマリアナの突然の思いつきを実現するために、代わりに各所に細かい手配をしたり、彼らが巻き起こす数々の問題の後処理も行なった。
何故その様なことをカリーナがやっていたかというと、問題に巻き込まれた他の一般生徒達が泣きながら彼女に相談してくるからである。
困っている彼らを、真面目で誠実な彼女が放っておけるわけがない。自然と面倒な役回りはカリーナがすることになってしまっていた。
そんな中、優秀な王子レイは何をやっていたかというと、彼もまた真面目に仕事をしていた。生徒会長として表に立つことも、普段の書類仕事もそつなくこなしていたのだ。
彼がやらかしてしまった事と言えば、今回マリアナの策略にはまりカリーナを生徒会から追い出してしまった事くらいである。
話は戻るが、そんな一年生の時より忙しい状況でカリーナが恋愛などできるはずもなく、三年生半ばの今なお婚約者は決まっていない。
ベンチに座りながら、カリーナは何気なく周りを見た。
仲が良さそうな恋人達が、手を繋ぎ歩いている。笑い合い、頬を染める姿はカリーナの目には毒であった。
それを羨ましげに眺めながら、カリーナは決意する。私も恋人を絶対に見つけるぞと、あわよくば婚約するぞと、彼女の瞳が燃えている。
「 まずは出会いの場に自分から行かないと、待っているだけでは相手は見つかりませんよね 」
やる気に満ちたカリーナは、ベンチから立ち上がった。
────────────⋯⋯⋯⋯
それから数週間後。カリーナが出会いを求めて奔走している一方で、生徒会は悲惨な事になっていた。
「 マリアナ、前に頼んでいた資料は見つかったか? 」
「 え、あっ、忘れていました。何の資料でしたっけ? 」
生徒会室では、本や資料が机に広がり、各役員が忙しそうに手元を動かしている。
そんな中、人一倍机に紙を積み上げているレイは頭を抱えた。
「 次の生徒会主催の魔法芸術大会の資料だ。これを聞くのはもう3回目だぞ。君が自分から任せて欲しいと言ったのではなかったか? 」
「 レイ様⋯⋯そんな、酷い言い方しなくても 」
厳しい目をレイに向けられ、マリアナは涙目になり怯えている。
それを見た他の役員である周りの有力貴族の子弟達が、レイの方に非難の目を向けた。明らかにレイを責める視線だが、流石に王子に物申す事はしない。
そもそも、ここまで忙しくなっている原因は彼らがマリアナに夢中になり生徒会の仕事を疎かにしていたせいであった。今まではその分をカリーナが捌いていたが、彼女はもうここにはいない。
「 はぁ、悪かった。資料は自分で探す。君は他の役員の補助を頼むよ 」
「 レイ様、すごく顔色が悪いですよ。私に出来る事があれば何でも言ってください 」
疲れきった様子のレイに、マリアナが上目遣いで近寄っていく。
だが、レイはそんな彼女を無視して立ち上がり生徒会室を出た。
レイが扉を閉めると、中からは他の役員達が彼を非難する声と、マリアナを励ます声が聞こえてくる。レイはそんな声などどうでもいいといった態度で、廊下を進んでいく。
そんな彼に、一つの足音が近づいてくる。
「 レイ、前回と前々回の資料と、今回協力してくれそうな団体の資料、用意しといたぜ 」
「 フィン、ありがとう。正直助かった 」
「 やつれてるなぁ。せっかくの端正な顔が台無しだ。⋯⋯少し休んだ方が良い 」
副会長であるフィンは真剣な表情で親友であるレイを見た。
二人は幼い頃から名前で呼び合う仲であり、お互いに認め合う親友同士である。
王子という身分を気にしないで接する事が出来るフィンは、レイにとって数少ない心の支えでもあった。
「 ただでさえ仕事が溜まっているんだ。休んでいる暇はない 」
力のない声でレイは呟く。
そんな親友を見て、フィンはため息をついた。
「 そろそろカリーナ嬢に謝って、戻ってきてもらったらどうだ。彼女がいれば、レイも楽になるだろう 」
「 ⋯⋯そ、それは 」
レイの顔が苦しげに歪む。カリーナの話は彼にとって、今一番心に痛いものであった。
「 まさか俺が隣国の学校に行っている時に、レイがカリーナ嬢を追い出しているとはな。初め聞いた時、かなり驚いたぞ 」
「 ⋯⋯くっ、今更どう謝ったら良いか分からない。私が彼女にした事は、決して許されない事だ。嘘に騙されて無実の罪を着せ、生徒会から無理矢理追い出した。私は最低だ⋯⋯ 」
レイがカリーナを追い出した時、フィンは隣国の学校にいた。短期間の交流のための留学で、その歴史も深い。同盟国である隣国と友好関係を示す行事でもあるため、ある程度家の位が高い者が行かねばならず、今回は公爵家のフィンが行く事になった。
カリーナを追い出す時、もしフィンがいれば必ずそれを止めていたが、運悪くその時彼はいなかったのである。
幼い頃からレイは他人に対しての関心が薄かった。フィンはそんな彼の足りない部分を今まで親友として補ってきたのだ。
今回マリアナの嘘に簡単に騙されてしまったのも、普段からレイが他人への関心が薄かったのが原因であった。
カリーナも自分から頑張りを主張するような性格ではなかったので、彼女が普段どのようにしていたかをレイは把握していなかったのだ。
そんな状態でマリアナにカリーナに嫌がらせを受けていると泣きつかれ、周りの生徒も口裏を合わせてそう証言したので、レイはそのまま信じてしまった。
一週間ほど経ち、レイが増え続ける仕事を疑問に思い始めた頃、フィンが帰国した。そこで普段からカリーナの頑張りを知っていたフィンに諭され、マリアナが言っていた事が嘘だと気づいた時には遅かった。
嘘をついたマリアナを責め、生徒会を追い出す事は簡単だ。だが、それをすれば彼女に夢中の他の役員達も生徒会を出て行ってしまう。普段はさぼっている彼らだが、カリーナが抜けた今、少しでも仕事が出来る人員が必要であったため、ただでさえ忙しい現状それは無理であった。
それと同時に、レイは自分にマリアナを責める権利はないと感じていた。あの時、騙されていたとはいえ一緒になってカリーナを責めた事実は変わらない。
レイは自分を強く責めていた。
「 もしかして、罪の意識から自分を追い込んでいるのか? そんな事をしても何の意味もないぞ。今レイに出来る事は、すぐにでもカリーナ嬢に謝って生徒会に戻ってきてもらい、溜まっている仕事を片付ける事だ。それから役立たず達を追い出すか入れ替えるか、根性を叩き直すかすれば良い 」
「 だが、カリーナは私に会うのも苦痛だろう 」
あの時のカリーナを思い出し、レイは苦しげに呟いた。
権力のある者に高圧的に責められ、カリーナの心は傷ついただろう。今も夢に見て魘されているかもしれない。その加害者である自分が目の前に現れたら、きっと負担に違いない。
レイはそう思い、一人項垂れた。
だが、そんな彼を親友であるフィンは一喝する。
「 うじうじうじうじ、鬱陶しい! いいか、カリーナ嬢に謝るまで生徒会室には入るな。会長としての仕事も禁止だ! 」
「 そんな、それではまた仕事が遅れてしまう 」
「 だったら今すぐ謝ってこいっ!! 」
悩むばかりで決心をしないレイの背中をフィンは無理矢理押した。悩める彼を想ってこその強硬手段である。
「 わ、分かった 」
親友に喝を入れられたレイは、カリーナに謝るべく歩を進めた。途中、レイが心細げに後ろを振り返ると、鬼の形相をしたフィンが目に入る。観念した彼は、とうとうカリーナのもとに向かうのだった。
────────────⋯⋯⋯⋯
そして、レイ達がそんなやり取りをしている事など露ほども知らないカリーナは現在、出会いを求めて若い男女限定のお茶会に参加していた。
「 このケーキおいしいね 」
「 うん、こっちのクッキーもおいしいよ 」
だが、カリーナは失念していた。
ただ今、カリーナがお茶を楽しむ横で、甥っ子とその友達の令嬢がお菓子を食べている。仲が良いようで、下手をしたらカリーナより早く恋人同士になりそうである。
そう、兄に参加者は若い男女と聞いていたが、まさかここまで若い男女だとはカリーナは予想していなかったのだ。
兄の子である甥っ子は、元気な5歳。周りで楽しげにお喋りしているのも、付き添いの従者以外みな幼い子供ばかりである。
つまり、カリーナは兄夫婦に都合の良い子守をさせられてしまっているのだ。
「 まあ、最近は気が張っていたので、落ち着いて休憩するには丁度良いかもしれません 」
学園で開かれるお茶会や行事に積極的に参加して、出会いを求めて奔走したが、いい結果はまだ得られていない。
たまに『 素敵な方だなぁ 』 と思う人は、もう既に婚約者がいる人達ばかりであった。そもそも大抵の家は若いうちに親が婚約者を選ぶのだから、それは当たり前である。
自分で恋愛をして相手を選ぶカリーナの家の方が、この国の貴族では珍しいのだ。もういっそのこと、貴族に拘らずに相手を選ぶべきかもしれないと、彼女は考え始めている。
生まれた時から貴族のカリーナがやっていけるか不安だが、今から平民の暮らしを学べば大丈夫かもしれない。
「 あっ、おむかえがきたわ。きょうはありがとう。またしょうたいしてね 」
「 うん、みおくりするよ 」
心の中でカリーナが葛藤していると、いつの間にかお茶会が終わる時間になっていた。
招待されていた子供達が、迎えに来た家の人と一緒に帰って行く。カリーナは一人ひとりに挨拶をしていった。
「 またね 」
「 うん、またね 」
甥っ子と一緒にいた令嬢( 6歳 )が帰ろうとした時、彼女は不意に振り向いた。そして、甥っ子のほっぺにチュッと軽いキスをする。
甥っ子は照れながらも、満更でもない様子だ。
「 やくそくのしるしだよ 」
「 えへへ 」
その現場を見たカリーナは、卒倒しかけていた。女性からアピールする事がはしたないとされるこの国でも、子供の無邪気なキスは許されるのだ。しかし、彼女は今までの人生でこんな甘酸っぱい経験などした事がなく、免疫が全くないのである。
そして、こんな幼い二人ですら恋の経験があるというのに、全くない自分に絶望をする。
カリーナは心にかなりの傷を負い、打ちひしがれたのだった。
お茶会の片付けを手伝った後、カリーナは特に用事もないのに学園に来ていた。
学園では必須の科目以外は好きな授業を選んで受けられる。今日カリーナは午前中の2科目で終わりだったので、再び学園に来る理由はなかったのだ。
だが、心が弱くなっているカリーナの足は自然とあのベンチに向かっていた。婚約者を見つけると決意をした学園のあのベンチである。
弱気になった時、このベンチに座って決意を新たにする。近頃それがカリーナの癖になっていた。
ゆっくりとベンチに腰を落とし、静かに休憩をする。周りには午後の授業が終わって家に帰る生徒がちらほらいるが、他の場所と比べると人通りは少ない。
「 ⋯⋯はぁ 」
力なくカリーナが溜め息をついた時、右の方からぎこちない足音が近づいて来ている事に気がついた。
ゆっくりと彼女がそちらを見ると、一年半の期間目にしていた、別の生き物かと思うほど美しい青年がそこに立っていた。
この国の第一王子であり、生徒会長のレイである。
「 御機嫌よう、殿下 」
カリーナはすぐに立ち上がり、レイに対して挨拶をした。とても丁寧で洗練された動きである。
「 ⋯⋯⋯⋯ 」
だが、レイは黙って表情を歪めている。
カリーナに謝ろうと学園を歩き回っていたレイは、なかなか彼女が見つからず今日は諦めかけていた。そんな時、偶然にもこのベンチに座っている彼女と遭遇したのだ。
いざ彼女を目の前にすると、頭で考えていた謝罪の言葉が出てこない。
遠目からベンチに座っているカリーナを見ていたが、かなり弱った様子であった。彼女をそんな状態にしてしまった自分を、レイは責めていた。
実際は甥っ子の甘酸っぱい場面を目撃した事でカリーナは落ち込んでいたのだが、レイはその事を知らないのである。
そして、カリーナもレイがそんな事を考えているとは全く知らない。
嫌そうに顔を歪めるレイを見て、カリーナは申し訳なく思った。自分のせいで彼の気分を害してしまったと勘違いしたのである。
「 申し訳ございません。あの、すぐに立ち去ります! 」
荷物を掴むと、カリーナはその場を後にしようとした。
そんな彼女にレイが焦ったように話しかける。
「 せっ、生徒会室の花瓶の花! 」
「 ⋯⋯へ? 」
「 生徒会室の花瓶の花を、定期的に変えてくれていたのは君だろう⋯⋯ 」
レイはとても焦っていた。そのため、謝罪の言葉を用意してきたはずであるのに、彼の口から出てきたのは花瓶の花の話であった。
「 はい、そうですが⋯⋯ 」
突然の花の話に、カリーナは不思議そうにしている。
「 最近は、私が変えているんだ 」
「 殿下がですか!? 」
「 ああ、花があると場が明るい雰囲気になるんだな。⋯⋯なくなって初めて気づいた 」
花瓶の花を変える王子の話など、カリーナは聞いたことがなかった。マリアナや他の生徒会役員達は一体何をしているのだろうと、カリーナは疑問に感じる。
「 ⋯⋯本当に大切なものは、なくしてからその大切さに気づくのかもしれないな 」
レイは真剣な表情でそう言った。額には汗が滲んでいる。現在彼は何とかカリーナに謝罪をしようと必死であった。
「 確かにそうかもしれませんね 」
いまいちレイの話の意図が掴めないカリーナは、彼の深刻そうな態度を疑問に思いながらも同意した。
「 ああ、そうだ。だから、その⋯⋯ 」
「 はい? 」
「 私もなくしてから気づいたんだ⋯⋯ 」
「 何か大切な物をなくされたんですか? 」
カリーナは親切心からそう言った。捜しものなら自分でも何か役に立てるかもしれないと考えたからである。
「 いや、違う。物ではなく⋯⋯ 」
そこまで言うと、レイは黙ってしまった。これではまるで愛の告白のようになってしまいそうだ。
レイは自分が本当にやるべき事を思い出した。自分のやるべき事は彼女に謝り、出来れば生徒会に戻ってきてもらう事である。
「 ⋯⋯すまない。君には悪い事をした 」
「 何がですか? 」
急に謝り出したレイをカリーナは不思議そうに見ている。彼女の頭を今悩ませているのは婚約者探しだけであり、生徒会を追い出された事に関してはもう既に気にしていないのである。
「 生徒会を追い出した事だ。あの後親友に叱られ、君は少しも悪くないと分かった。私は嘘に騙され、君に無実の罪を着せたのだ。生徒会長としても、この国の王子としても⋯⋯一人の人間としても、実に愚かな事をした。⋯⋯本当にすまない 」
カリーナの目をまっすぐ見て言えた事に、レイはひとまずホッとした。後は彼女の反応を待つだけだ。
罵倒され、許してもらえなくても仕方がない。それ相応の事をしてしまったのだ。レイはそう思いながらカリーナの反応を待った。
だが、彼女の反応は予想していたものとは違っていた。
「 いえ、大丈夫ですよ。むしろ生徒会を辞めた事で婚約者探しをする時間が出来て嬉しいくらいです。⋯⋯それより、殿下を騙した人がいるなんて驚きました。許されない事です 」
カリーナは深刻な表情で頷いている。次期国王候補である第一王子を騙すような人間が学園にいるなど、カリーナには信じられない事であったのだ。
「 それは騙された私が悪い。今まで他人に対して無関心が過ぎたのだ。今回のことで、もっとこれからは周りの人に関心を持とうと心を改めた 」
反省を述べながらも、レイはある事にハッと気がついた。
「 ⋯⋯婚約者探し? 」
「 はい、私の家は貴族の中では変わっていて、婚約者を自分で見つけないといけないんです 」
真剣な顔で頷くカリーナを、レイは複雑な表情で見つめた。
そして、悲しげに視線を落とす。
「 ⋯⋯では、生徒会に戻るつもりはないのだな 」
「 はい、相手を見つけたいので 」
「 ⋯⋯そうか 」
力なくそう呟いたレイは、とぼとぼと生徒会室に向かって歩き出した。その背中からは哀愁が漂っており、足取りはかなり重い。
「 仕事、忙しいのでしょうか⋯⋯ 」
レイの後ろ姿を見送りながら、カリーナは心配気にそう呟いた。
自分が生徒会を抜けた事でレイは仕事に追われ疲れ果てているのかもしれない。それなら申し訳ないと、カリーナは心から思った。
だが、カリーナも婚約者探しで忙しいのだ。今から生徒会に戻るつもりはない。
とは思ったものの、カリーナは根っからの真面目人間である。
卒業した先輩に生徒会を支えるように言われているため、自分が抜けてしまった事で仕事が溜まっている現状に罪悪感を感じてしまった。
そして我慢が出来なくなり、とうとう三日後には生徒会室に来てしまう。
机に向かって書類仕事をしていたレイは、生徒会室に入ってきたカリーナを見て固まってしまった。予想もしていなかった状況に、言葉が出ない。
「 放課後三時間くらいなら、お手伝いをさせていただこうと思いまして⋯⋯ 」
「 ⋯⋯⋯⋯ 」
固まって黙ったままのレイを見て、カリーナは失敗したと思った。役に立てるかとやって来たが、レイにとっては迷惑だったのだろうと踵を返そうとする。
だが、その行く手を副会長のフィンが阻んだ。
「 助かるよ、カリーナ嬢。君がいればだいぶ楽になる。なっ、レイ 」
「 ⋯⋯あっ、ああ、助かる 」
現在生徒会室にいる人間はレイとフィン、カリーナの三人だけである。
他の役員達はマリアナと一緒に魔法芸術大会会場の事前調査と言う名の遊びに出かけていた。
だが、彼らが全員いたとしてもカリーナ一人に敵わない。彼女はそれだけの能力を持っていた。それを自分から主張する事がないので、今までレイには気づいてもらえなかっただけなのである。
「 なら喜んで手伝わせていただきます 」
カリーナはそう言うと、各机に積まれている資料を仕分け始めた。いくつかの山に分け、その一つを応接机に並べて順番に目を通していく。
一時間後、生徒会長の判子が必要なものだけレイに渡し、カリーナは次の山に手を出した。そしてまた目を通し、時には資料を広げ、時には教員室まで走り、積まれている山を捌いていく。
三時間後にはほとんどの紙の山が片付いていた。
「 それではまた明日来ます 」
三時間の間に自分に出来る仕事をやり遂げたカリーナは、お辞儀を一つして部屋を出て行こうとした。
「 ま、待ってくれ! 」
レイは出て行こうとするカリーナをすぐさま呼び止めた。
彼は三時間の間、手を動かしつつもカリーナの仕事振りをその目で見ていたのだ。そして、今まで自分が順調に会長としてやっていけていたのは、彼女の支えがあったからこそである事に改めて気付いた。
もちろんレイも努力はしていた。副会長であるフィンもきっちりと仕事をこなし、レイを支えてくれている。だが、やはりそれはカリーナの影の支えがあってこそのものだったのだ。
彼はまた反省した。こんな重要な事に今まで気づけなかった自分を恥ずかしく思い、カリーナにまた謝りたくなった。
だが、緊張からか恥ずかしさからか、呼び止められきょとんと佇む彼女にかける言葉がすぐには出てこない。
「 もしかして、何か問題がありましたか? 」
「 いや、問題はない。その、⋯⋯ご苦労だった 」
「 いえ、大した事はしていません。では、失礼します 」
「 私が家まで送って行こう 」
「 え? 大丈夫ですよ。いつも一人で帰っていますから 」
「 そ、そうか⋯⋯ 」
今度こそカリーナは生徒会室を出て行った。
彼女が出て行った後、机に項垂れるレイにフィンは呆れた目を向ける。
「 てっきりお礼を言うのかと思って黙ってたが、何がしたいんだお前は? 」
親友にそう言われ、レイはため息を吐いた。
「 私にも分からない。ただ、謝りたいと思う一方で彼女をもっと知りたいとも思う。こんな気持ちは初めてかもしれない⋯⋯ 」
「 ほーん⋯⋯ 」
「 ⋯⋯何だ、その反応は? 」
「 別に、ただ、ほーん⋯⋯ 」
にやにやと見つめてくるフィンに、レイは訝しげな表情を向ける。
「 何か言いたい事があるのなら、はっきりと言ってくれ 」
「 レイもそろそろ婚約者選びをする時期だな 」
「 ⋯⋯そうだな 」
「 カリーナ嬢なら良い妃になってくれるんじゃないか? 」
「 ああ、⋯⋯そうかもしれないな。だが、彼女の家は自分で婚約相手を決めるらしい。私は既に彼女に嫌われているしな。例え私が彼女を婚約者に望んだとしても⋯⋯彼女は私を選ばないだろう 」
そう言ってからレイは気づいた。彼は自分で思っていたよりもその事実に傷ついているという事実に、である。
ついこの間まで気に留めていなかった女性に対してこの様な気持ちを抱く事は不思議であったが、レイは嫌な気はしなかった。むしろ今まで感じた事のない胸の奥が軋むような、燻るような、それでいて滾るような感覚を好ましいと思う。
「 ⋯⋯諦めるのは早いんじゃないか? 」
いつの間にか近くに来ていたフィンが微笑みながらレイに問いかける。
その時レイの胸の中で、確かな火がついたのだった。
────────────⋯⋯⋯⋯
最近殿下の様子がおかしい。放課後に生徒会室に通いながら、カリーナは首を傾げていた。
まず、良く目が合う。カリーナが何気なく机から顔を上げると、ばっちりとレイと視線が合うのだ。その後レイはすぐに机の上の資料に視線を落とすが、こんな出来事が頻繁に続いている。
他にはカリーナの婚約者探しについて良く質問をしてくるようになった。主に進展状況について。
最初カリーナは、恋人が出来る事によって自分がまた生徒会の手伝いを辞めるのではないかと心配しているのかと思ったがそうでもない。レイの質問の内容が相手についてばかりなのである。
茶会や夜会でどんな男に話しかけたのか、どんな内容を話したのか、また婚約相手にはどういった事を求めているのか、そしてどのような男を好むのか。
かなり詳しく聞かれるので、話の途中でカリーナは恥ずかしくなってしまう。彼女はとにかく初心なのである。自分の男性の好みを語るなど、顔を赤らめずにはいられない。
そして、そんなカリーナを見つめるレイもまた、顔を赤らめているという事実に彼女は気づいていなかった。
レイはこの様にカリーナから聞き出した情報をもとに、彼女と良い感じになりそうな男性に嫉妬しつつも努力していた。例えば彼女が困っていそうな時は積極的に話しかけ助けたり、彼女の好みの花を花瓶に挿してみたり、時には授業合間の短い休憩時間に会いにいく事もあった。
レイはカリーナに恋愛対象として認識してもらえるように、彼女が嫌がらない程度に男として日々アピールしているのである。
────────────⋯⋯⋯⋯
「 きゃっ、痛い! 」
ある日、生徒会室でマリアナがカリーナとすれ違った瞬間床に倒れた。
カリーナはすぐに助け起こそうとするが、マリアナにはその手を華麗に避けられる。
そして何人かの生徒会役員達がマリアナを守るために立ち上がろうとした時、それより先にレイがカリーナのもとに駆け寄った。
「 カリーナ、怪我はないか? 」
「 え、あ、はい。私は大丈夫です。でもマリアナさんが⋯⋯ 」
そう言ってカリーナは心配気に倒れているマリアナを見た。彼女はものすごい形相でカリーナを睨みつけている。カリーナはそのあまりの迫力に悲鳴をあげそうになったが、何とか口を押さえて我慢した。
カリーナの無事を確認したレイはマリアナに向かって告げる。
「 マリアナ、そのカリーナに対しての陰湿な嫌がらせを止めないのなら、今すぐに生徒会から出て行ってくれ 」
「 そんな、嫌がらせなんてしていません! 」
「 既に調べはついている。⋯⋯前の事もあるのでな、今回は入念に調べさせてもらった。行事や部活動での優遇を餌に複数の生徒に嘘の証言を依頼した事。又、一部の生徒には男女関係の弱みを握り脅していたようだな。カリーナの筆跡を真似させて呪いの手紙を書かせただろう。⋯⋯それに、君の両親が夜会などで君と私があたかも深い関係であるような噂を流している事も知っている。それを君が両親に頼んでいる事もだ 」
「 ⋯⋯っ!? 」
マリアナが驚いたようにレイを見た。
生徒会室の雰囲気が一気に重くなる。副会長であるフィンは平然としているが、マリアナを庇おうとしていた役員達は驚きを隠せないようすだ。
「 ひ、ひどいっ!! そんな事していません。私、レイ様がそんな嘘に騙される人だとは知りませんでした。こんなひどい生徒会長のもとではやっていけません。私は生徒会を辞めます! 」
涙目になったマリアナが生徒会室から出ていった。彼女の中で瞬時に計算された結果、レイの事はこのまま諦めた方が良策だと判断したのである。
そんなマリアナの本性を既に知っているレイは、彼女を追いかけはしなかった。
「 彼女について生徒会を出て行きたい者は今すぐに出ていってくれ。私はそれを止めないし、恨んだりもしない 」
それを聞いた何人かの役員が部屋から出て行くが、半分はそのまま残った。緊張した様子でレイを見つめている。
「 残ってくれた者に感謝する。⋯⋯私も今まで愚かだった部分は多々ある。何の目標もなく、生徒会長という役割をただ淡々とこなしていただけだった。だが、私は心を入れ替えた。本来の生徒会の役割を良く考え、これからはこの学園の生徒達のためにもっと努力して、この学園を良い方向に盛り立てていこうと深く決意した。⋯⋯その決意のために君達にも協力して欲しい。一人では決して出来ない。私には君達の支えが必要なのだ 」
心から訴えるレイのその言葉に、残った者達は聴き入った。そして感動した様子で口々に肯定の返事をする。その内、生徒会室は拍手の音に包まれた。
一部始終を見ていたカリーナもまた、いつになく凛々しいレイの姿を見ている。
今までカリーナはレイの事を、感情の起伏の少ないどこか他人に対して冷めた人だと認識していた。
だが、最近の彼は人が変わったように何事にも積極的になっている。他の生徒達と頻繁に挨拶や会話をしている姿を良く見かける上に、カリーナの前で頻繁に笑うようになった。彼女はそんな彼を好ましく感じている。
彼女にとって手の届かないような世界の違う人であるのに、胸がときめいてしまう事も少なくない。
カリーナはレイに熱い視線を送った。
そして、レイがそんな彼女に顔を向けた事で二人の視線が混じり合う。
いつもとは逆の状況に、カリーナは恥ずかしくなり目を逸らしてしまった。
だが、すかさずレイはカリーナの手を取って両手を優しく握る。
そして今までにカリーナが見た事がない甘い表情で、レイは彼女に微笑みかけた。
「 カリーナ、これからも私を支えて欲しい。そして⋯⋯これから先ずっと、私も君の一番の支えになりたい 」
「 ⋯⋯そ、それは、私が卒業するまでの話ですか? 」
「 いや、もっと先だ 」
「 ⋯⋯それでは、私が城で働かせてもらえるという事ですか? 」
「 ある意味そうだが、君が思っているような意味ではない 」
「 ある意味? 」
周りの役員達は突然始まった甘い雰囲気に戸惑っていたが、そんな中繰り広げられる何とももどかしい会話に呆れ始めていた。
特にここ最近の噛み合いそうで噛み合わない二人のやり取りを側で観察していたフィンは、我慢が出来ずつい口を出してしまう。
「 おいレイ。口を挟んで悪いが、カリーナ嬢にはもっと直接的な言葉で言わないと伝わらないと思うぞ 」
フィンの助言を聞いて、レイは一度深呼吸をして呼吸を整え直した。そして、カリーナの両肩に手を添えて真っ直ぐに彼女を見つめる。
彼の綺麗で真剣な瞳で見つめられ、カリーナの胸の鼓動は早くなっていた。体中の血が熱く巡り、心身共に溶けてしまいそうな感覚に彼女は陥る。
ゆっくりとレイの顔がカリーナに近づいていく。
「 君の事が好きだ。⋯⋯私と結婚して欲しい、カリーナ 」
「 ひゃわうん!! 」
全身に響き渡る甘い声に、カリーナはとうとう耐えきれずに気を失ってしまった。
それから目を覚ましたカリーナに、先ほどの事は夢ではないと言い聞かせるのにレイは奮闘する事になる。
なんとか彼の言葉により状況を理解したカリーナは、それからレイを恋愛対象としてきちんと意識するようになった。
そこで彼女の苦しい婚約者探しは終わり、それに費やしていた時間の分はレイと一緒に過ごすようになったのである。
そうして二人の仲は少しずつ進展していく。
それはフィンなどの周りの人間からしたらとても遅い足取りで、もどかしい速さではあったが、初々しい二人の間に首を突っ込むような野暮な事をする者はいなかった。
そのままカリーナの学園卒業まで順調に仲が進展した二人は、その時正式に婚約者同士となる。
さらに一年後、レイが学園を卒業すると同時に二人は周りから祝福されめでたく結婚をした。
この二人はのちに、国一番の仲良し夫婦として後世まで語り継がれる事になる。
だがそんな事を知らないこの時の二人は、ただただ幸せを感じて互いを見つめるのであった⋯⋯。
二人の血を受け継ぎ生まれてきた美しい息子や娘達が、またそれぞれ婚約者探しに悩み奮闘するのはまだ先の事である。
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