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冒頭
強い雨が降っている。
風も強い。
遠くの空で雷が光る。
数秒遅れて轟音が響く。
ぬかるんだ泥の道をしっかりと踏みしめて歩く。
いよいよこの時が来た。
俺は今日、竜と戦う。
黒い巨体が遠目にも見える。
目は赤黒く、鈍い輝きを放っていた。
その竜は、まだ動かない。
こちらに気づいていないのだろうか?
いや、そんなはずはない。神聖なる怪物-文字通りこの世界に生きるいくつかの民族は、それを神と崇めるのだ-であるところの竜が敵意に気づかぬはずがない。
待ち構えているのだ。俺を。
俺は今日、この化け物を殺さなければならない。
何としてもだ。
俺は、そのために生きてきたのだから。