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仮題 死神は愚者が見る完全世界の夢を静かに刈り取る  作者: 浦井朝時
1章「新夢遊病患者(ドリーマー)」
6/11

1章②

二〇六四年、最初にこの次世代のテクノロジーを市場に出せる形にデザイン化したのは、アメリカ大手のゲーム企業であるEVORES社であった。

「革新(evolution)と安息(rest)」をスローガンに抱えた世界的知名度の高いこの会社は、

無数に細分化された各ジャンルにおける担当課が存在し、何を隠そうこのVR空間生成技術も、当企業のVR担当課の科学者やエンジニアが中心となって組まれたチームによるものであり、公式な使用許可が出される以前から構想が練られていた、史上初のフルダイブインシステムを実現したVRMMOゲーム「Elysion(エリシュオン)」の発売が公式発表、そして翌年二〇六五年、多くの期待や渇望に迎えられ、全世界同時発売となる。

 

ゲーム発売発表からすぐに世界を驚かせたのは、EVORES社が提言したその慈善的とも思える彼らのVRゲームに対する経営方針であった。

一つ目は、二一世紀入って以来の革新的発明であったこの商品が、一般家庭用ゲーム機の実に1.5倍程度という超低価格設定で発売されたということである。

また、その価格で案内人とElysionのセット価格となっており、VR空間でのアバター生成に必要な身体データの測定も無料で実施、購入後すぐにプレイが可能となっているという事実は、VRMMOを小説やライトノベルの中でしか味わえなかった多くのファンを熱狂させた。

二つ目は、Elysion発売後に案内人及びElysionと互換性のあるソフトの制作方法の情報を、全世界共通のインターネットブラウザにアップロードし、技術の無償提供をおこなったことである。

それは事実上のVR空間生成技術の共有化を意味し、Elysionの世界を土台としたさまざまなゲーム空間、MOD、果ては個人用のプライベートVR空間までもが各ゲーム会社から続々と発売されることになった。


こうして、発売一週間で1200万本を突破したこの大人気商品は、その後も他社による互換ソフト発売も相まって、その発売台数は衰えることなく、全世界累計発売台数4億台越えを記録し、もはやElysion(エリシュオン)の世界における地位は揺るがなきものとなった・・・


「かに、思えたんですけどねぇ。」

と、少女は今日付けの朝刊を両手で開き、口で彼女のお気に入りの菓子である「まるぼーキャンデー~コーヒー味~」を器用にくわえながら、病院の313号室前のベンチに腰かけていた。



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