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居候と裸ワイシャツ

「……んっ……」

眩しい朝の光が差し込んでいる。

規則的で微かな吐息が顔にかかる。

そしてその朝日を浴びた赤い髪は綺麗に輝き、胸は艶やかに光っていた。

あれ?

「えええええ⁉︎」

目の前には、下着も着けずにワイシャツだけを羽織った姿(いわゆる裸ワイシャツ)の葵さんが寝ていた。

さすがに無防備すぎるだろ……

つーか下も履いてないから目のやり場に困るんだが……

とりあえず胸より下を見ないようにしながらベットから出……

ガシッ

えっ?ちょ、待て待て。なんで足掴まれたの?まさか葵さん……起きてる?

「あのー、葵さん?起きてます?」

「……あおいさんじゃなくて〜あおいでしょ〜……」

寝ぼけてる……のか?

それより、俺の足を掴んだ衝撃でワイシャツがはだけて、胸を隠すものがなくなってるんだけど……

早めに放してもらわないとめんどくさいことに……


「海斗ちゃ〜ん、今日は学校行く日よ〜」


ドアをノックする音と共に恒例の目覚ましが響いた。



いやいやいやいや、この状況はとてもマズイ。母さんに見られたら絶対引かれる……

あれ?でもこれ詰んでね?母さんをどうにかしてドアの前からどかさなきゃ


「起きてるよー、今下行くから待っててー」

「いや、制服渡しとかなきゃいけないから入るよ〜」

「え、いや、下で貰うから今じゃなくてもい……」

ガチャ

あ……

真顔の母さんと目が合う。

「い、いや違うんだよこれは……」

「……海斗ちゃん、そんなことするなんて……すごいじゃない!」

「本当に違うんだって!……って、へ?」

「だってすごいじゃない。あんなに人と喋るのが苦手だったのに、まさか昨日会ったばかりの女の子ともうそんな関係だなんて!」

「そんな関係って……それは本当に誤解だから!やめてくれって」

「またまた〜照れちゃって〜」

「ちょっと母さん!」

「私がここにいたら邪魔だろうし、私は先に下降りてるわね。ごゆっくり〜」

「ちょちょ、ちょ……」

ガチャ

はあ〜完全に誤解されたよ……

そもそもなんで葵さんはここにいるんだよ。この家広いんだから部屋なんていくらでもあるだろうに。しかも、思春期の男子高校生の目の前で裸ワイシャツで寝るとか……頭大丈夫なんだろうか。

まあもう起きてしまったことは仕方ない。とりあえず葵さんを起こして下に降りよう。


「あの、葵さん」

「……だからあおいさんじゃなくてあおい〜」

「あ、あおい、学校行かなきゃだから早く起きて……」

「やだーまだねるー」

「そんなこと言ってないで、早くしなきゃ。転校初日から遅刻はかっこ悪いよ」

「はっ、そうだった」

「やっと起きたか……ってなに脱いでんの⁉︎」

「だって〜学校行くなら着替えなきゃじゃん」

「着替えはここには無いから!下行って母さんから貰ってきて!」

「うるさいな〜そもそも海斗は17歳でしょ。女の子の裸くらい見慣れてるもんじゃ無いの?」

「うぐっ」


ふっ、どうせ俺はコミュ障で引きこもりの童貞ですよーだ。…………はぁ……。

心が痛い……。


「まあそんなに言うなら私は下で着替えてくるよ。また後でね〜」


そう言って葵さんは部屋から出て行った。


しっかし普通初対面の異性の前で、ああも簡単に裸になれるもんなのかな……

まさか俺に気があるとか?

ははっ……まさかな……

というか俺も着替えないと遅れちゃうじゃん。着替えよっと。




「じゃあ行こっか!」

俺が学校に行く準備を済ませ、家を出た時だった。

「い、一緒に行くの?」

「そりゃあ同じ学校なんだし一緒に行くのは当たり前でしょ」

「いや、じゃあそれはいいとしてさ、せめて手繋ぐのやめない?」

「なんで〜?あ、まさか女の子と手繋いだことなくて恥ずかしいとか?」

「そそ、そんなことないよ。そうじゃなくて、わざわざ繋ぐ必要もないじゃん」

「なんでよ〜私たち恋人同士でしょ」

「なっ……」

「ふふっ、赤くなっちゃってか〜わいい」

「う、うるさいな。いいから手を離して!」

「やだよ〜だ。学校着くまで離さないもんね〜」

「いやもう既に学校目の前だから!」


マジでやめてくれよ……同じ学校の生徒っぽい奴らにめっちゃ変な目で見られてるんだが……

転校初日からこんなんで印象悪くなんないかな……

はあ……


「じゃあ一旦ここでお別れだね。私の教室3階だから、いつでも遊びに来てね〜」


そう言って階段を登る葵の後ろ姿を見ながら、絶対に3階だけには行かないと心に誓い、自分の教室のドアを開けた。

その音に反応し、こっちを見た男子と目が合う。

俺がぎこちなく会釈をすると、

「もしかして、君が転校生?」

と話しかけられた。

ああ……こいつもコミュ力たけーな……

初対面の相手にタメか……はあ……

今もなんて返せばいいかよくわかんなくて適当にうなづいといたけど、失敗したな……

「そうなんだ。珍しいね、どっから来たの?」

やっぱきたかこの質問。絶対聞かれると思ってたけど、実際何も考えてなかったんだよな……どうしよ……

「た、多分知らないと思うよ。結構遠いから」

「遠いからって……」

さ、さすがに無理がありすぎたか?そりゃあそうだよな。遠いから知らないと思うなんて言い訳になってないしな……

「まさかとは思うんだけど君、『壁』の向こうから来たの?」

「へ……?壁?その向こうには巨人がいるとか?」

「……?何言ってるのかちょっとわかんないけど、『壁』っていうのはこの街を囲ってる山々のことだよ」

「なんで山が『壁』?」

「この街に住んでるのにそんなことも知らないの?その山々は全て高さが5000m以上あるから、登って越えるのは難しいからそう呼ばれてるんだよ」

「へ〜、そうなんだ」

「で、君はどうやって『壁』を越えてきたの?」

「……空を飛んで山を越えた……とか?」

だ、ダメか?この世界には魔法はあるみたいだし、空くらい飛べそうだけど……

いや、でもさっきのこいつの言い方からして魔法でも空は飛べないのか……?

やばい、これは初日からキチガイ認定されるパターンかも……

「マジで……?お前究極魔法使えんの……?」

あれ……?なんか勘違いされてね?究極魔法って絶対すごいやつだよな……

どうしよ……まさかの嘘つきのレッテル貼られるルートか?

とりあえず否定しとかないととりかえしつかなくなr……

「みんな〜!聞いてくれよ!この転校生、究極魔法使えるらしいぜ!」

それを聞いて教室がざわつき始め、俺の近くに人が群がってくる。

やべぇ……どうしよ……




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