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現実はそんなに甘くない

うわぁ……すげぇな……


店の内装は、まさに魔法学校の生徒が魔導具を買いに来ていそうな感じだった。

実際日本にこんな店は無いし、映画でしか見たことないからそうとしか言えないんだけど。

そんなことを考えていると、先に店に入っていたシェザルがおもむろに口を開いた。


「今ここの店のマスターと話してたんだけど、やっぱりここは魔導具屋さんみたいだよ。」


そう話すシェザルの横には20代くらいのイケメンが立っていた。

多分あの人がこの店の店主なんだろう。いや、カウンターに立っている時点で分かりきってることではあるんだけど……


「ところで、海斗はここで魔導具買って行く?多分学校で魔法は習うことになるから、杖とか買わなきゃいけなくなるし、せっかくだし今でいいんじゃない?」


なんかシェザルの発言ってやたらメタいんだよなぁ。この世界のことを知りすぎてるっていうか……


「じゃあそうするわ」


そう答えると、待ってましたとばかりに店主がこっちに来て、


「では、最初に魔力量を調べさせていただきます。こちらの機械に手をかざしていただけますか?」


そう言って店主は四角い機械を差し出す。見た目は完全にICカードを読み込むあの機械だ。


「……」

「どうかしましたか?」

「……いや、こういうのって普通水晶とかでやるもんじゃないんですか?」

「数十年前まではそうだったらしいですけど、水晶で正確な魔力量を測るのは難しいですからね。最近は全部機械でやるようになったんですよ」


えっ……マジで?俺が妄想してた異世界はもう古かったの?バリバリ水晶で魔力量測ってるんだけど……


「えっと……手をかざしてもらってもいいでしょうか?」

「あっすいません、ぼーっとしてて」


手をかざすと、店主が機械の横についているボタンを押す。多分電源入れたんだろうけど、なんかすげー複雑な気持ちだよ……異世界がこんなにも文明化してるなんて……


「え……これは……ちょっとすいません、お兄さん来てもらえますか?」


シェザルを見ながら店主は言うが、鼻歌を歌いながら杖を見ているシェザルは気づく様子がない。

「おーいシェザル、呼ばれてるぞ」

「おっと失礼」


呼ばれたシェザルがこっちに来る。


「で、私はなんで呼ばれたんですか?」

「あの……これを見ていただけますか?」


そう言ってシェザルに俺の魔力量検査の結果を見せる。

まさか、魔力量が多すぎて注目されてるとか⁉︎

あれか?魔法を駆使してこの世界を救っちゃうのか?


「あの……とても申し上げにくいのですが、お客様の魔力量はとても少なくてですね、基礎魔法を使うことはできても、高等魔法を使うことはできないだろうと思われまして……」


へ……?

「い、いやでも魔力を上げるポーションとかもあるし、魔導書買えば魔力の底上げもできるから、そんなに気にすることないと思うよ」


シェザル……俺を気遣ってくれてるのはわかるけど、正直逆効果だよ……

はぁ……夢みてた俺がバカみたいだ……

よく考えたら引きこもりだった俺にそんな魔力があるわけない。


「お客様!顔色悪いですけど大丈夫ですか⁉︎」


なんかさっきシェザルともそんなやりとりしたような気が……


「ちょっと落ち込んでるだけなので大丈夫ですよ。それより、魔力ポーションと魔力量を上げる魔導書をいただけますか?」


シェザルがナイスなフォローをしてくれたおかげで、納得した様子の店主が魔導書と思われし本と、黒い液体が入った500mlのペットボトルを持って来た。


「ではこちらでよろしいでしょうか?」

「はい」

「750円になります」


あ、金の単位は円なのね……ホントこの世界中途半端な異世界だな。

もうツッコミどころ多くてどうでもよくなって来たけど……


「またお越しください」




店の外に出ると、外はもう暗くなり始めていた。


「今日はもう帰ろうか。遅くなったらお母さんも心配するだろうしね」

「そうだな。……結局今日俺は魔法に向いてないってことが分かっただけだったけど」

「そんな卑屈な考え方しないで……まあ僕もできるだけサポートするから」


そんなこんなで、シェザルと話していると家の前についた。

俺らが街をうろついてた間、母さんは何してたんだろ?


ドアを開けると…………

見知らぬ同い年くらいの下着姿の女の子が立っていた。

赤みかかった髪のショートカットで、俺が思う普通の大きさの胸よりはちょっと小さいくらいの胸。スレンダーと言うのにふさわしい美少女だ。


始めて見るリアルな女の子の下着に興奮して俺が呆然としていると、母さんが台所から顔を出した。

「あら、二人とも帰って来てたのね。お帰りなさい。少しは仲良くなれた?あと、この人が一緒に住むことになったの。よろしくね」

「……母さん?説明雑すぎない?」

「あらそう?じゃあ自己紹介してもらおうかしら。葵ちゃん、よろしくね」


そう言って母さんは葵と呼ばれた女の子に目を向け、また台所へ消えた。


「あ、私は葵って言います〜よろしくです〜」

「葵さん……何してるんですか?」


俺の横でずっと黙りこくっていたシェザルがいきなり口を開いた。

ん?っていうか知り合いなの⁉︎


「いや、アルス様がこの世界に行けって……」

「それは……そうでしたか、ならいいです。でも、とりあえず服は着てくれませんか?」

「脱いでた方が気持ちいいんですよ。シェザルさんもやったらどうですか?」

「やりませんよ……」


目の前で繰り広げられる茶番について行けていない俺に気づいたのか葵さんが話しかけてきた。


「海斗……でしたっけ?脱いでみませんか?気持ちいいですよ」

「あ、いや遠慮しときます……」

「別に気にしなくていいよ。葵さんは半露出狂だから」

「ひどい言い草ですね……家の中なんだから別にいいでしょう」

「葵ちゃーん、喋ってるところ悪いんだけど、ちょっとこっちきて手伝ってくれないかしら。」

「はーい、今行きますー」


どうやら母さんは台所で料理をしているようだ。

葵さんの姿が消えたのを確認して、俺は口を開いた。


「……あの人、なんかすごいな」

「昔はあんなんじゃなかったんだけどね……まあ機会があったら話すよ」

「昔って、そんな長い付き合いなのか。そういや、さっきアルス様に行けって言われたみたいなこと言ってたけど、アルス様って誰?」


俺がそう聞くと、シェザルが困ったような顔をして


「まあ僕たちの上司みたいな人かな。実際にはそんな簡単な話でもないんだけど……まあこれも機会があったら話すよ」

「海斗ちゃんとお手伝いさーん、ご飯できたわよー」


奥の部屋から母さんの声が聞こえてくる。


「おっと、じゃあ行こうぜ」

「そうだね」


俺たちは夕飯を食べにリビングに向かった。







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