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みんなで遊ぼう!

 学校終わりの放課後。

 いつも通り今日も部活動がある。何をする部活かと聞かれたら、みんなで集まってしゃべるだけの部活だ、とでも答えておこう。部名は談話部。意味はそのまんまだ。


 部室のドアを開けて中に入る。空を除いたほかの部員三人はすでに中にいた。


「お、葵ちゃん!待ってたぜ!」

「先輩。お疲れ様です」

「先輩、こんにちは!」


「うん、こんにちは」


 中に入って、いつもの席に座る。


「あれ?今日は空先輩は一緒じゃないんですか?」


 神山さんは首をかしげる。


「空なら、売店寄ってからくるって言ってた」


 すると今度は、宮野さんが不思議そうな顔をする。


「あれ、先輩ってそんなしゃべり方でしたっけ?前はもっと、おどおどした感じだったと思うんですけど」


「え、そうかな?」


 気づかなかった。喋り方変わってたのかな、俺。


「まあ、ちょっとくらいしゃべり方が変わったっていいじゃん。むしろ話しやすくて俺的にはプラス1だぜ。」


「私はあんたの顔を見るたびにマイナス10ずつ下がってるんだけど?」


「えぇ!?そりゃ流石にひでぇよ。なんか、評価を上げる方法とかないのか?」


 それを聞いて宮野さんは少し思案顔をする。


「そうね。なら、自販機に行ってコーヒー買ってきてくれる?微糖のやつで」


「それだけで評価が上がるのか?」


 長谷川は目をキラキラとさせながら宮野さんを見つめている。


「そうね。もちろんおごりじゃなきゃ意味ないけど」


「わかった!いってくるぜ!」


 そういって長谷川は部室から飛び出していった。


「もう、廊下は走っちゃだめだぞ?」


「そうですね。とりあえず評価マイナス20点けときましょう」


 長谷川……なんか、ホントお前って大変だな………。



「トランプ、ですか?」


「はい。たまにはカードゲームも悪くないと思いますよ?」


「そうですね。私もすごく久しぶりです」


 長谷川が出て行った後、ちょうど入れ替わりで空が部室に入ってきた。その後話の流れから、トランプをすることになった。


「で、トランプって言っても色々ルールあるし、何から始める?」


 俺がそう言うと、空はうーん、とつぶやいた後、トランプを箱から取り出してシャッフルする。


「とりあえず、神経衰弱から始めましょうか」


 そして、シャッフルされたカードを手際よく並べていく。するとそこで長谷川が息を切らして帰ってきた。


「よし、みんなの分まで買ってきたぞ!」


 長谷川は手に抱えていた缶ジュースを机に置く。


「何種類か買ってきたから、みんな好きなの飲んでくれ!」


 さわやかな笑顔だ。


「じゃ、私はコーヒー無糖で」


 そう言って俺は黒い缶を手に取る。


「私はリンゴジュースで!」


「あ、じゃあ午後ティーもらいますね」


 みんなそれぞれ缶ジュースを取っていく。


「私は微糖っと……あんたも、ほら」


 宮野さんは長谷川に黒い炭酸飲料を渡す。


「おお!ありがとう!」


「ま、全部あんたが買ってきてくれたんだし、ありがたく飲ませてもらうわ」


「じゃあ、評価アップしたってことでいいのか?」


「そうね、とりあえずプラス1」


 やったぁぁー!!と喜ぶ長谷川。しかし部室を出る際、マイナス20の評価をもらっていることを、彼は知らない。


「これでみんな揃いましたね。長谷川さんも座ってください」


 机の上には裏返されたカードが並べてある。


「お、トランプか?」


「はい。みんなで神経衰弱をやるんです!とりあえず順番を決めるので、じゃんけんに勝った人から引いてください」


 順番

 一番目 松風葵

 二番目 宮野鈴奈

 三番目 長谷川大輝

 四番目 吉永空

 五番目 神山美咲


 まず俺が一番手だ。初めはどこにカードが置いてあるかわからないので、適当に引く。ハートのクイーンとスペードの三。まあ外れるよね。


「次は私ですね。……うーん、はずれみたいです」

 宮野さんもそろわなかったみたいだ。


「なら次は俺のターン!ドロー!……そんなばかな」

 見事に空振りをかます長谷川。


「うーんと、これと……これ」

 ここで空が一ペアカードをそろえた。


「おお!じゃあ次は……ありゃ、はずれです」

 二度目は揃えられなかったみたいだ。最後に神山さんの番。


「じゃあ私はこれとこれ!」

 一ペアそろう。


「おお、すげえ!引いてないところなのに、一発で当てやがった」

 そしてまた次を引く。これもそろう。


「これ……さっちゃん、また?」

 次も引いてそろう。


「うわぁ……すごい強運を持ってるんですね!」

 空は凄い凄いといった表情をしてはしゃぐ。いや、お前は子供かよ。


「これと、これ!」

 そしてまたそろう。次も、その次もまたそろう。


「いや、いくら何でもそろいすぎな気がする……」

 俺は次々とペアをそろえていく神山さんに、驚きを隠せない。


「ありゃ、これじゃなかったかー」


 神山さんの番だけで、机の上にあるカードはもう半分も残っていない状態になった。


「いや、流石運だけはいいね、さっちゃんは」


「えへへ~、そんなことないよ~」


 あきれ顔をする宮野さんに対し、神山さんはとてもうれしそうな表情をする。


 そのまま神経衰弱は続いたが、次の神山さんの番で、場のカードがすべてなくなってしまった。結果は言わずとも、神山さんの圧勝である。


「すげぇ……。どうやったらそんな強運を手に入れられるんだ?」


 長谷川が神山さんのほうを見て戦慄している。

 でも神山さんのほうは、なんでだろ~?といって首をかしげる。


「昔からさっちゃんは運がいいんですよ。それも奇跡が起こせそうなレベルで」


 宮野さんは両手を後ろに組んでそう言う。


「なんか、ホントに奇跡を見ている感じで凄かったです」


 ホントそうだ。あんなに連続で見ていないカードの札を当てるとか、どんな魔法使ってるんだよって思ったわ。



 そして次はトランプの定番であるババ抜きをすることになる。


 それぞれが出せるカードを場に捨てて、残ったカードをお互いに取っていく。

 俺のところにはジョーカーは入っていなかった。さて、だれが持ってるのかな。


「それじゃ、順番はさっき勝った神山さんから時計回りで」


 一番目 神山美咲

 二番目 宮野鈴奈

 三番目 長谷川大輝

 四番目 松風葵

 五番目 吉永空


「じゃあ、これ!」

「フフッ、やりますね」


 そして神山さんはカードを引いた。


「えええーー!ジョーカーだったよー!」


 見事にあたりを引き当てた。


「確かに、運がいいな!まさか一発目にあたりを引くとは、びっくりだぜ」


「私もびっくりしました。さすが美咲さんですね、侮れません」


「ふえぇーん!」

 そして次々とカードを引いていく。


「はい、あがり!」

 空が一番に抜ける!


「あ、俺も上がりだぜ!」

「私も上がりました」


 そして最後は俺と神山さんだけが残った。ちなみにジョーカーは神山さんが持ったままだ。


「うーん、これ?」

 残り二枚のカードのうち、右側のほうを指さす。


「それとも、これ?」

 今度は左側を指す。うーん、神山さんってこういうの苦手なのかな?


「右とりますね」

「あうー、そんなー!」

 これで上がり。


「さっちゃんは昔から隠し事が下手なんですよね」


 宮野さんがそう言ってクスッと笑う。


「まあ、思いっきり顔に出てましたね。見てて面白かったです」


「可愛かったから、俺的にプラス3だな!」


 神山さんって、思ってることが結構表情に出る人なんだな。



「じゃあ次は……スピードとかどうでしょう?」


 そういって空はカードをシャッフルする。


「でもスピードって一対一だし、どうやってやる?」


「あ、それもそうですね」


「じゃあ、葵ちゃんと宮野さん、長谷川さんと神山さんのペアでやってください。私は見てますので」


「わかりました」


 そういって宮野さんは、俺の正面の席に座る。神山さんと長谷川はその横の席に座った。


「じゃあまずは葵ちゃんと宮野さんペアの対決です!」


 空の手によってカードがセッティングされる。


「いちについて、よーい、ドン!」


 そして勝負が幕を開ける。えーと今が八だから……って速!?

 気づけば宮野さんがものすごい速さでカードを場に出していく。


「終わりました」

「はい、宮野さんの勝ちです」


 ……何もできずに終わってしまった。


「すごいです宮野さん!どうしたらあんなに早くカードを出せるんですか?」


 どこぞのテレビ局のアナウンサーのように尋ねる空。


「まあ、慣れればそのうち早くなりますよ」

「おお、流石です!」


 俺の隣に座っている長谷川は、あぜんとした顔をしていた。


「俺も結構得意だと思ってけど、格が違った……」


 そういってがっくりとうなだれる。


「鈴ちゃんはとても反射神経がいいんだよ~!びっくりするくらい速いし、かっこいい!」


 神山さんはにこやかな表情で宮野さんの頭をなでる。


「ちょっ、子供じゃないんだから……!」


 しかし、宮野さんもまんざらではなさそうだ。


「じゃあ次は、神山さんと長谷川さんです!頑張ってください!」


 そしてまた勝負が始まる。



「負けた~!これ難しいよ~」


 結果は長谷川の勝ち。確かに長谷川もカードを出すスピードはそれなりに早かった。宮野さんほどではないとしても、十分強いと思う。しかし……。


「まさか、カードを一枚も出せないで終わるとは思いませんでした……」


 空も驚きを隠せない表情で神山さんの手札を見る。


「だって難しいんだもん~!カードを出そうとしたらすでに違うカードになってるし!」

 神山さんは目に涙を浮かべながら話す。


「ま、まあ、とりあえず結果は長谷川さんの勝ちということで、おめでとうございます」


「お、おう、ありがと」

 そしてスピード対決は幕を閉じた。


 あれからいくつか別のルールでトランプを楽しんだが、気づいたら外はもう真っ暗だった。今日はこれで解散ということになり、その帰り道。


「いやー、トランプ楽しかったな!久しぶりにカードで熱くなったぜ」


「気持ち悪いから私たちの横に立たないでください」


「えぇー……」


 そして長谷川はそのまま、とぼとぼと歩く。


「相変わらず宮野さんは長谷川さんに厳しいですね?」


 不思議そうに空は言う。


「なんか雰囲気がやばいんですよ。本能が、こいつは危険だ!って告げてくるから仕方ないです」


 そういってすました顔をして歩いていく。


「鈴ちゃんは照屋さんだからね~。きっとうまく話せないだけだよ!」


「いや何言ってんのさっちゃん!?」


 顔を真っ赤にする宮野さん。


「まあ、お年頃ですし、そういうのも気にしますよね。その気持ちよくわかります!」


「いや、別に気にしてないから……」


 ふと、気が付いたように空が俺のほうを見てくる。


「葵ちゃんは楽しかったですか?」


「え?」


 いきなりなんでそんなこと聞くんだ?


「うん、楽しかった」


「そうですか。ならよかったです」


 そしてにっこりとほほ笑む。


「葵ちゃんって、人が多い時はあんまりしゃべらないから心配しちゃいました」


 ……そういえば、あんまりしゃべってなかったかも。


「まあ、先輩もかわいいんですし、もっと笑ったほうがいいですよ」


 そう言って宮野さんは俺のほうを見る。


「そうだよ!みんなで楽しも~!」


「ちょっ、神山さん!?」


 いきなり抱き着いてくる。って胸が当たってるって!

 そのままみんなとワイワイやりながら、それぞれ家に帰っていく。


 そして今日もまた、一日が過ぎていった……。

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