部活動初日
いつもの平日。
授業も終わり、放課後になった。
軽く伸びをする。
今日も一日終わった〜!
そして鞄を持って帰ろうと席を立つ。
「葵ちゃん、まだ帰っちゃダメですよ?」
すると、目の前の席にいる空に呼び止められる。
「今日は部活動があるんですよ?帰っちゃダメです」
「あ、そうだった」
そういえば昨日、部活動の話があったようななかったような……。
「と、いうことで!早速部室に行きましょう!」
そして二人は教室を後にした。
廊下を歩いていく。
「部活ねぇ……、中学の時以来だな。まあ、ほとんど幽霊部員みたいな感じだったんだけど」
ため息混じりに呟く。
「そうなんですか。葵ちゃんは何の部活に入ってたんですか?」
「バスケ部」
「……意外ですね」
「そうか?」
今ではこんな性格だが、中学の途中までは普通に話せていた。
どちらかというと、俺は体を動かすのが好きだったし、なんとなく見学してみてかっこいいと思ったので、バスケ部に入ろうと思った。
「ちなみに私はテニス部でした」
「へぇ。もしかして、空って運動できる系?」
「えーっと、人並みには動けますね。そこまで得意ってわけじゃないです」
そういって照れた笑みを浮かべる。
「そういえば、部室ってどこらへんにあるんだ?」
「えっとですね……校舎の隅の、空き部屋ですね」
ほら、と彼女は指をさした。恐らく、目の前に見えるドアがそうなのだろう。
そしてドアの前に着く。彼女は持っていた鍵を使って、ドアを開けた。中に入って周りを見渡してみる。
「へぇ……なかなかいい部屋じゃん」
正面にテレビ、右側にソファーがあり、左側には簡単なテーブルが置いてある。
「って、なんでテレビなんて豪華なものが部室に置いてあるんだ?」
「ああ、それはここが元会議室だったからですよ」
会議室?何かの映像を見ながら会議してたとか?
彼女は床に鞄を置いて、椅子に座った。
俺も同じように、反対側の空いている席に座る。
「えぇー、せっかくなら隣に来てくださいよ。今なら二人だけしかいませんし♪」
「いや、遠慮しとくよ」
俺は周りを見渡す。
それにしても、よく整頓されている。
パッとみ埃かぶってるものとかはなさそうだし、きちんと片付けはしてあるみたいだ。
「というかこの部屋、俺たちが使っても大丈夫なのか?」
「はい。ちゃんと許可は取ってますし、後2箇所くらい別の所に会議室があるので問題ないです!ここは小さめの会議室でしたので、ここでよければと先生に勧められました」
「ふーん?」
まあとりあえず、ちゃんと許可は取ってるみたいだし、問題ないかな。
「部屋もしっかり掃除されてるみたいだし、今のところ文句のつけようがないな」
「そうですね。みなさんが昨日ここの掃除を手伝ってくれたおかげで、かなり綺麗になりましたし」
彼女は笑顔でそう言った。
「ん?昨日掃除したのか?」
「はい。クラスの皆さんに協力をお願いしたら、喜んで協力してくださいました♪」
「あ、そうなんだ……」
なんというか……みんなお疲れ様です。
ガチャっと音がしてドアが開く。
「失礼しまーす!」
そういって俺らのクラスメイトである長谷川が入って来た。
「おお、ようこそ長谷川さん!ささ、席に座ってください」
そしてそいつは俺の横に座る。
「よろしくな、葵ちゃん?」
俺に笑顔で話しかけてくる。
「……よろしく」
長谷川は悪いやつではないのだが、女の子を前にするとちょっと気持ち悪い奴になる。いわゆる変態である。
それがなければそれなりにモテるんだろうけどなぁ……容姿はそんなに悪くないと思うし。
「失礼しまーす♪」
すると、今度は明るい女の子が部室に入ってくる。水色のツインテールが特徴的な女の子だ。
「……失礼します」
その後ろには、赤色の髪をサイドポニーにしている女の子がいる。
「へ?誰?めっちゃ可愛いじゃん……!」
長谷川は驚いた顔をして二人を見る。
「えっと、空?この二人は?」
「はい。この二人は、昨日勧誘しておいた新入部員です。二人とも、こっちに座ってください」
そして二人は空いている席に座る。
椅子は六つあるので、席は足りるみたいだ。
「……なに?」
「へ?いや、何でもないです」
すると、赤髪の子が長谷川の方を睨みつける。
「なんかあんた、雰囲気が気持ち悪いんだけど?」
「えぇっ!!?」
ガーン、といった表情で長谷川は頭を下に落とす。
「こら、初対面の人に気持ち悪いとかいっちゃダメだよ?」
水色の髪の子が注意をする。
「だって、明らかに目の色がやばかったんだもん。それに何で吉永先輩と松風先輩の近くにこんな男がいるわけ?意味わかんない」
どうやら、俺たち二人のことは知っているみたいだ。……二人は後輩なのかな?
「もう、そんなこと言わないの!」
そして水色髪の子がまた注意をする。
なんか、凄い子が入ってきたな……。
「とりあえず初めに、自己紹介から始めますね。葵ちゃんから、どうぞ」
「えぇ……?」
初っ端から俺かよ。
そしてそのまま反時計回りで自己紹介は進む。
「あ……松風、葵です……よろしくお願いします……」
そういって席に座る。
「俺は長谷川大輝だ。絶賛彼女募集中だぜ!」
「いや、ありえないから」
赤髪の子に即両断される。
ドンマイ……長谷川。
またもや長谷川はどんよりとした雰囲気になる。
続いてツインテールの子が席を立つ。
「私は神山美咲です。よろしくね♪」
そして最後にサイドポニーの子が席を立つ。
「宮野鈴菜です。そこのキモ男以外、よろしくお願いします」
そして最後に彼女が席を立つ。
「私は吉永空です。一応この部活の部長ということになりますが、気軽に空って呼んでください♪」
そして全員の自己紹介が終わる。
「……で、なんで一人だけ男がいるわけ?」
そして宮野さんはまた長谷川を強く睨みつける。
「だ〜か〜ら〜!そんなこと言っちゃ、メッ!」
神山さんはそう言って宮野さんに抱きつく。
「ちょっ、みっちゃん!?」
宮野さんはとても慌てている。
「もう!いきなり抱きつかないでっていつも言ってるでしょ!?」
「えー?だってそうでもしないと、鈴ちゃんいうこと聞いてくれないし?」
「あーもうわかったから!だからくっつくな!」
そして神山さんを手で遠ざける。
ちなみに長谷川は笑顔のままぶっ倒れていた。
「お二人とも、仲がいいんですね」
改めて四人は椅子に座る。長谷川はソファーで気を失ったままだ。
「はい。小さい時からいつも一緒にいたので」
神山さんは宮野さんの頬っぺたをツンとつついた。宮野さんは少し恥ずかしそうだ。
「そうなんですか。でも、私たちも仲良しなんですけどね〜♪」
「ちょっ!空!?」
いつのまにか後ろにいた空から抱きつかれる。
ちょっと待て、胸の感触がやばい!って何考えてんだ俺!?
「えへへ〜」
彼女は幸せそうな表情をする。
「わー!すっごく仲良しなんですね!なら私たちも……」
「ちょっ、私たちはいいから!」
近付こうとする神山さんを、宮野さんは手をブンブンと振って遠ざける。
「……あれ?ここはどこだ?」
そして変態がソファーから目を覚ました。
「なんか、今日はすごい騒がしかったな……」
部活終わりの帰り道。あれから数十分経って、今日は解散ということになった。
「そうですか?とても楽しかったですよ」
今日もご機嫌に彼女は俺の横で笑っている。
……まあ、退屈はしないだろうな。
けっこう個性的なメンバーだなとは思う。
長谷川は変態。神山さんはまあ、天然っぽいかな?宮野さんは……あれはツンデレかな。
そんなことを考えながら、俺も彼女と一緒に帰り道を歩く。
おまけ
「ところで葵ちゃん」
「ん?」
「トイレってどうしてるんですか?ほら、元々男の子だったわけですし」
「ああ、普通にしてるけど?」
「え、そうなんですか?てっきり、そういうのには抵抗あるのかなって思ってたんですけど」
「別に。自分の身体だしまあいっかって思ってた」
「へ、へぇ……そうなんですか。それはそれですごいですね……」
「なんかおかしなこと言った?俺」
「い、いえ、確かにその通りですね(汗)」