本田姉弟の夕食
自室に籠もってしばらく経った。奏太は宿題を済ませ、漫画を読んだり、ゲームで遊んだりと自分の時間を満喫していた。
「そろそろか…」
姫香が一通りの料理を終えた頃だ。奏太は姫香にまだ呼ばれていないが、リビングに向かうことにした。
姉弟の両親は基本家にいない。父は単身赴任で地方を転々としている。母は身体を悪くした祖父母の介護のため、二年前に田舎に帰った。母が田舎に帰るとき、姉弟もついて行く予定だったが、姉弟共に転校を嫌がったため、この家に残ることになった。姉弟は仕送りと姫香の短期のアルバイト代で生活している。
「姉ちゃん、手伝うよ」
「奏太くん!ありがとう。じゃあ、配膳してもらっていいかな?」
「うん」
奏太はアルバイトが出来ない分、多少の家事を手伝っていた。奏太は手先が不器用で、家事を手伝ったら逆に邪魔になってしまったことがある。そのため、邪魔にならずに手伝える家事に限りあった。
「出来たよ姉ちゃん」
「ありがとう、奏太くんのおかげではやく終わったよ。奏太くんは優しいねぇ大好き!」
「はやく食べよ、お腹すいた」
奏太はこの程度の手伝いしか出来ない自分が嫌になる。
「奏太くん、あーん」
「…姉ちゃん、わかってるよね」
「なにが?ほら、はやく口開けて」
「いやだよ!!」
「えー、また?」
「またじゃなくて!」
毎回の食事で姫香が「あーん」をしてくる。奏太は一応反抗するが、たまに負ける。
「…あ!」
「!奏太くん!あーん」
奏太はなんだかんだで姫香が好きなのだ。奏太はまだ自分の気持ちに気付いていない。