本田姉弟の朝
本田奏太の朝はいつも騒がしい。その原因は姉の姫香にある。
「そ・う・た・くんっ!!そろそろ起きよっかー」
「うわっ姉ちゃんやめろよ!もう起きるから!」
奏太は姫香に覆い被さられキスをされそうになる。
これは日課だ。奏太はもう慣れている。嫌がる素振りは演技で、姫香が本当はキスをしてこないことを知っている。姫香は奏太の演技に気付いているのかは不明だが、しつこくキスをしようとはしなかった。
「おはよう奏太くん!今日も可愛いね、大好きだよ」
うっとりとした表情で姫香は覆い被さったまま言う。
「はいはい、わかったから退いて」
この類の発言も慣れた。いちいち構っていられないのだ。
「んもぉ素っ気ないなー まぁいいや朝ご飯の準備してくるね、着替えておいでよー?あ、着替え手伝おうか」
「出てって!」
姫香を自分の部屋から追い出し、はぁ。とため息をつく。奏太の朝はいつも騒がしい。
奏太は布団から出て、目についた服を着て、洗面台に向かう。顔を洗って歯を磨くなど、日常の作業を行い、姫香の待つリビングへ向かう。
「奏太くん、ご飯できたよ。食べさせてあげるね」
奏太の席の隣の席で姫香は待っていた。そして、当たり前のようにそう告げる。
「いいよ姉ちゃん!自分で食べるから!」
「遠慮しないで、もっとお姉ちゃんに甘えていいのよ」
「遠慮じゃないよ!普通に食べれるから!ていうか自分で食べたい!」
「でも、」
「でもじゃなくて!」
姫香は渋々諦める。姫香の表情は寂しそうなものであった。姫香の表情を見た奏太は胸が痛んだが、目を背けた。
朝食を食べ終えると時間は登校する時間になっていた。奏太は食器を片付け、ランドセルを背負う。
「じゃあ、いってきまーす」
「待って奏太くん!いってらっしゃいのキスは?」
「しないよ!」
奏太は逃げるように玄関を出た。